HR INFORMATION
多くの企業で、採用活動の選考過程に設けられている「適性検査」。特に最近は、社員や組織に関するデータを活用して人材マネジメントをおこなうピープルアナリティクスの手法が注目されるにともない、適性検査の種類や活用シーンも多様化しています。今回は、選考~内定者フォローにおける活用方法を紹介します。
<このシリーズの記事を読む>
・人材戦略における「適性検査」を改めて考える
・自社にとって「必要な人材」を見極める。科学的な理論に基づいた適性検査の選び方
書類選考、面接での活用方法
書類選考や面接は、適性検査の活用場面として最もポピュラーなものです。書類選考の段階では、応募者の中から自社の人物要件に近い人材を確認し、極端に検査結果に注意が必要な人物についてスクリーニングすることが可能になります。書類選考でどこまで応募者を絞り込むかは、企業によって考え方や判断基準が異なりますが、自社の採用方針や課題に合わせ、上手く使い分けることが重要といえるでしょう。
以前は、多すぎる応募人数を選考可能な人数に絞り込む、いわゆる“足切り”のためだけを目的に結果を活用されていたケースもありましたが、最近では、選考活動をより戦略的に進めるための指標として活用されるケースが増えています。
・面接呼び込み順の参考として活用する
ある企業では、内定者および現有社員の適性検査結果から、「自社にマッチする人材かどうか」をあらわす独自の指数を算出しています。適性検査は面接の前に実施し、その指数を参考にして、高群→中群→低群の順に面接の呼び込みをおこなっています。面接枠にどうしても限りがありこの方法を採用したそうですが、興味深いことに、低群よりも高群のほうが選考辞退が少ないとのことでした。
・適性検査で、グループディスカッションを代替
会社説明会→適性検査→グループディスカッション→面接(複数回)…という選考をおこなっていたある企業。特にグループディスカッションについては、会場設営、当日運営、選考官のアサイン等、負担を感じていらっしゃいました。適性検査会社の分析にて、グループディスカッションの合否データと適性検査の結果に強い相関性がみられたことから、ある年、グループディスカッションを止め、選考期間を大幅に短縮。担当者の方いわく、かなり思い切った決断だったそうですが、選考スピードがアップしたことで、選考辞退率が低下。グループディスカッションにかかっていたマンパワーを、面接合格者へのフォローにあてることができ、内定者の質も担保されたとのことです。
・“仮説”を立て、限られた時間で、深い面接をおこなう
多くの企業では、20~30分など、限られた時間で面接をおこなっています。事前に適性検査を活用して準備をすることで、限られた時間でより深い面接を実施できます。具体的には、適性検査の結果から、応募者について“仮説”を立てます。適性検査から見えるその人材の強み・弱み、価値観などを事前に確認し、立てた“仮説”について面接で確認していきます。面接の際の第一印象などに引っ張られず、科学的な視点を加えた判断ができること、また確認すべき点が絞られているので、中身の濃い面接をおこなえる点がポイントです。なかには、分析結果に「面接のときの確認ポイント」などが記載されている適性検査もあり、評価のばらつきや強みをうまく引き出せないといった、面接官のスキルの差による選考のブレを防ぐこともできます。
惹きつけ~内定者フォローのための活用方法
さらに、適性検査を選考中~内定フォローのリテンション(惹きつけ)で活用されるケースも増えています。
・本人へのフィードバックを実施
ある企業では、内定者フォローに適性検査を活用しています。自身の強み・弱みがわかる適性検査結果をフィードバックし、さらに強みをのばす研修をセットにして実施しています。
また、別の企業では、内定後の面談で、適性検査結果からその学生の強み・弱みをフィードバックしたうえで、自社でどう活躍できるのかを伝えています。ご担当者様いわく、適性検査という科学的なデータをもとに伝えることで、内定に対する納得感や入社後への期待が高まり、入社意思決定を後押しする効果があるとのこと。同様の面談を選考中におこない、企業理解・仕事理解・自己理解を並行することで“その企業で働いている自分”のイメージを醸成し、次の選考につなげている企業もあります。さらにインターンシップなどのイベントで、プログラムに適性検査を組み込み、フィードバックをおこなうことで、イベント申込者の増加および参加者満足度向上につなげているケースもあります。
・リクルーターとの組み合わせに活用する
ある企業では、適性検査を活用して、似た資質をもつ社員をリクルーターとしてアサインしています。自分と似たタイプの先輩を通じて企業理解・仕事理解を深めることで、入社後の活躍を具体的にイメージしやすくなり、選考を通じたリテンションが図られているとのことです。
まとめ
冒頭に述べた通り、適性検査は、以前は多すぎる応募人数を選考可能な人数に絞り込む目的のためだけに、結果を活用されていたケースもありましたが、現在では、スクリーニングは最小限の基準のみとし、「自社にマッチする人材かどうか」というポジティブチェック、さらに自社への入社意向を高めるためのリテンションに活用されています。
適性検査の一番の価値は、「一度の適性検査で、科学的・客観的なデータを入手できる」ことです。根拠のある効果的な採用戦略を実践するために、適性検査をどう活用するか?は、重要なカギのひとつといえそうです。
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