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Interview

緻密な体制とプロセスで、組織の総合健康リスクを改善。
JTのストレスチェック活用戦略

ENGAGEMENT

Published on 2023/05/19

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Profile

岡田 貢Mitsugu Okada

日本たばこ産業株式会社
人事部

1993年に日本たばこ産業株式会社へ入社。たばこの販売促進業務に従事。2002年から15年間、労組専従として労働組合活動に従事。2017年から現職。現在メンタルヘルス対策をはじめ、全社の安全衛生業務に携わる。

日本たばこ産業株式会社(以下、JT)はグループで約5万5000人の従業員を擁し、たばこ事業、医薬事業、加工食品事業を展開しています。同社では全社をあげて健康経営に取り組んでおり、経済産業省と日本健康会議が共同で実施する「健康経営優良法人 ホワイト500」に7年連続で認定されるなど、その活動は高く評価されています。同社が注力する施策の一つが、ストレスチェックを活用した職場改善。ストレスチェックの実施から課題抽出、打ち手の検討、展開に至るまで、緻密な戦略を遂行しているといいます。人事部の岡田貢様に、直近の事例をもとに職場改善の取り組みについてご紹介いただきました。

ストレスチェックを起点に、従業員の心の健康を守る

まずは貴社の従業員の健康に対する考え方や産業保健体制についてご紹介いただけますか。

当社は従業員の健康を重要な経営課題と位置づけており、その実現に向けて充実した産業保健体制を確立しています。具体的には、全国11カ所の主要エリアに専門の産業保健スタッフ(産業医11名、保健師33名)を配置し、全国60の事業場で働く従業員約6000名に対応しています。全社の産業保健活動を統括しているのが、私の所属する人事部安全衛生チームです。

貴社の取り組みは、「健康経営優良法人 ホワイト500」に7年連続で認定されるなど、高い評価を得ていますね。

例年、経済産業省の健康経営度調査では、ありがたいことに組織体制の項目について高い評価をいただけていますね。この推進体制のひとつに、経営トップの指導のもと健康経営推進委員会を設置しています。委員会は、責任者であるPeople & Culture 担当執行役員をはじめ、人事部長、健康保険組合、産業医代表、保健師代表という、健康にかかわるさまざまなメンバーによって構成されており、連携をとりながら取り組みを進めています。

具体的にどのような指標を用いて施策を行っているのですか。

モニタリング指標として、①身体の健康②心の健康③エンゲージメント④労働生産性の4つの観点で設定し、健康経営の取り組みを推進しています。このうち、心の健康はストレスチェックによって計測される「総合健康リスク」をモニタリング指標として設定しています。ちなみに当社の総合健康リスクは、例年全国平均を大きく下回る結果が出ており、心の健康に対する取り組みが一定の成果を上げているものと思われます。

総合健康リスク改善に向けた課題抽出と重点ターゲットの設定

具体的には、ストレスチェックをどのように活用し、従業員の総合健康リスクを軽減しているのでしょうか。

従業員の総合健康リスク軽減に向けた取り組みは、ストレスチェック、課題抽出、打ち手の検討・展開という順に行われます。今日は直近の取り組みである、2022年度の取り組みをモデルに当社の施策をご紹介したいと思います。なお、当社では毎年11月に、ストレスチェック『Co-Labo』を実施しています。まず、2021年度のストレスチェックの結果をご覧ください。

2021年度 ストレスチェック結果(2021年11月実施)

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ご覧の通り、2021年度の総合健康リスクは、前年と比較して1ポイント悪化していました。また、構成要素別にみると、「仕事の負担・量」は前年度と比較して改善していましたが、「仕事のコントロール度」、「上司からのサポート」については前年度よりわずかに悪化していました。

まずはストレスチェックを通じて、従業員の心の健康状態をさまざまな要素別に可視化したわけですね。

はい。次に、総合健康リスクの悪化をもたらした課題を抽出するため、データ分析を行いました。分析にあたっては、年代、性別、職位、労働時間、事業場別、働き方(テレワーク、フレックス等)など、さまざまな切り口で数値を精査。しかし、傾向は見えるものの、対策につながるような具体的な課題は見えてこなかったのです。

それでは、どのような手法を用いて課題抽出を行われたのですか?

さらに深掘りした分析方法を模索した結果、たどり着いたのが、厚生労働省のストレスチェック実施マニュアルに記載されている、高ストレス者判定項目でした。

この高ストレス者判定項目は、「ストレスの原因と考えられる因子(ストレス要因)」「ストレス反応に影響を与える他の因子(緩衝要因)」「ストレスによっておこる心身の反応」という3領域・全18項目において5段階で評価を行い、高ストレス者の判定を行うものです。今回はこのうちストレス要因と緩衝要因を、管理職と管理職以外とに分けて前年度からの変化を確認することで、高ストレス者の課題が抽出できるのではないかと仮説を立てました。

確かにこの項目を参照すれば、より詳しいストレスの原因が分析できそうですね。結果はいかがでしたか?

まず、管理職以外を対象に高ストレス者の因子別変化を確認したところ、ストレス要因についてはほとんどの項目で良化していました。一方、緩衝要因については、「上司からのサポート」「同僚からのサポート」「家族・友人からのサポート」が3項目とも悪化しており、特に「上司からのサポート」が大きく悪化していることが確認できました。つまり、管理職以外については上司からのサポートに課題があることが判明したのです。

管理職のストレス要因についてはどうでしたか?

管理職は、40代と50代を対象に高ストレス者の因子別変化を確認しました。その結果、40代の管理職のストレス要因では「仕事の量」「仕事のコントロール」が悪化している一方、50代の管理職はストレス要因のすべての項目で良化していることがわかりました。また、緩衝要因については、40代の管理職はすべての項目で悪化。50代の管理職は「家族・友人のサポート」のみ悪化していました。

管理職の中でも、年代によってストレスの状況が異なるのですね。

その通りです。この分析により、私たちは「管理職以外」と「40代の管理職」を重点ターゲットとして設定しました。とりわけ管理経験の年数が少ない40代管理職は、当時、社内で大きな組織体制変更を行う直前だったため、業務上多くの負荷や影響を受けることが想定されていました。管理職自身のメンタルの状況が悪ければ、それが部下へのサポートにも悪い影響を及ぼすことが想定されたので、しっかりサポートしていかなければなりません。40代管理職はストレス要因・緩衝要因のいずれにも課題があったので、セルフケア・ラインケア両方による対策が必要だと考えました。

 

参考:厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル

重点ターゲットに対する「打ち手」の検討と展開

ここまでで、課題抽出と重点ターゲットの設定が完了したことになります。重点ターゲットである「管理職以外」と「40代管理職」に対しては、それぞれどのようにして施策を立案されたのですか?

当社では毎年、年2回、全産業医が参加する保健部長会議を開催しています。5月に行われた保健部長会議において、重点ターゲットの内容について共有すると共にグループ討議を行い、打ち手について意見交換を実施しました。その後は各保健担当が事業場と連携して打ち手を検討し、実際に実施していったという流れです。

具体的にはどのような施策を実施されたのですか?

まず私たちが注力したのは管理職との連携強化です。一部のエリアではエリア内の全管理職と個別面談を実施するなど、重点ターゲットである40代の管理職に対するフォローを強化しました。また、ラインケアセミナーにおいても、事例を用いたグループ討議を取り入れるなど、より具体的な対応につながる工夫を行いました。それ以外にもさまざまな取り組みを実施することで、メンタルヘルス対策の充実に向けて積極的に取り組みました。

重点ターゲットを設定したことで、効果的な打ち手が展開されています。成果についてはいかがでしたか?

2022年度 ストレスチェック結果(2022年11月実施)

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ご覧の通り、モニタリング指標である総合健康リスクは前年度と比較して改善しました。また、表には掲載されていない構成要素別の指標としては、「上司からのサポート」「同僚からのサポート」は前年度と比較して改善しました。一方で、「仕事の負担・量」は悪化したため、引き続きの取り組みが必要と考えています。

データをもとに施策を講じることで、今後さらなる成果が期待できそうですね。これからの取り組みに向けて、岡田様の目標をお話しください。

総合健康リスクが改善し、引き続き平均値と比べて低いレベルを維持できていることは、重点ターゲットに対する取り組みの成果だと認識しています。しかしながら、仕事の負担・量が増加していることから、引き続き取り組みを行うことが必要と考えられます。そうしたなか、今年度初めて、ストレスチェック結果に関する医療職向けの報告会を開催しました。

どのような意図で医療職向け報告会を実施されたのですか?

コンサルタントの方から、データに基づく客観的な視点でのコメントをいただくことで、我々にとって新たな気づきや発見が得られる場になればと思い、開催しました。報告会の中で、当社の強みは「職場の支援」であるというコメントをいただき、さらに今後の取り組みに向けた明確なアドバイスを受けることができ、大変有意義な機会になったと感じています。今後は当社の強みである「職場支援」の充実に向けて、関係者と連携したラインケアの強化などを中心に取り組みを進めていきたいと考えています。


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