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Interview

従業員の生産性とエンゲージメント向上を実現
多様性を尊重した前田建設の健康経営施策

HEALTHCARE

Published on 2024/05/17

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Profile

渡辺 千尋Chihiro Watanabe

前田建設工業株式会社
人事部 ヘルスマネジメント・D&I推進グループ長

1996年入社。2007年に一般職から総合職に転換。建築営業、CSR等の業務を経て、2020年より現職。グループ新設と同時にコロナ禍に突入。社会が大きく変化するなか、社員の健康と働き方やコミュニケーション、モチベーションとの関連に興味を寄せている。
※所属・役職は取材当時のものです

小川 瑠里子Ruriko Ogawa

前田建設工業株式会社
人事部 ヘルスマネジメント・D&I推進グループ

2017年入社。2022年に一般職から総合職に転換し現職に。社員、特に女性特有の健康課題に関する取り組みに加え、ダイバーシティの推進も担当。健康、ダイバーシティとも社員の現状にむきあい、課題の抽出、改善・向上の施策検討に打ち込んでいる。
※所属・役職は取材当時のものです

総合建設会社として100年以上の歴史を誇る前田建設工業株式会社は、2021年10月にグループ3社による共同株式移転により持株会社を設立し、グループ全体で総合インフラサービス企業への転換を図っています。「健康は一人ひとり異なるもの」との考えから、健康経営とダイバーシティを関連づけてとらえ、ストレスチェックの活用や健康情報の一元管理システムの導入など各種施策を推進しています。一方、全国に拠点があり、有期事業を展開している同社には「短期間で職場環境が変化する」という特徴があり、こうした変化を踏まえた施策も求められています。ヘルスマネジメント・D&I推進グループの渡辺様と小川様に、同社の健康経営の在り方についてお聞きしました。

法令を上回る施策を推進し、従業員の自発的な参加を促す

はじめに、貴社の事業内容についてご紹介いただけますか。

渡辺:
当社は、1919年創業の総合建設会社です。2021年10月1日、当社と前田道路、前田製作所の3社による共同株式移転により、持株会社のインフロニア・ホールディングス株式会社を設立致しました。近年、既存インフラの老朽化が進む一方で、労働人口の減少に伴う財源不足や建設業の担い手不足等により設備更新や維持管理が困難になりつつあります。このような状況において、グループ全体で、事業企画、企画・設計、建設、維持管理、補修、運営までをワンストップでマネジメントする総合インフラサービス企業への転換を図っています。

貴社が健康経営を推進する上での「考え方」について教えていただけますか。

渡辺:
「健康は従業員一人ひとりの生活基盤であるだけでなく、会社にとっても大切な財産であり、会社発展の源泉、つまり事業基盤である」との考えのもと、2020年に新設した「ヘルスマネジメント・D&I推進グループ」が中心となって、健康経営とダイバーシティを推進しています。健康経営とダイバーシティを同じ部署で行っている理由は、健康はその状況、意識ともに一人ひとりによって全く異なる、“多様性”とも表現できるものです。よってこの両方を関連させながら施策を推進していくということを常に意識しています。

健康経営に対する考えをベースに、どのような施策を展開されているのですか?

渡辺:
従業員の健康管理と維持増進を図ることを目的に、「法令遵守を目的とした施策か、それを上回る施策か」という基準で施策を分類しています。法令を遵守すべき施策と法令上の努力義務レベルの取り組みを「健康経営Basic」、それを上回るものを「健康経営Advance」と位置づけており、健康経営Advanceでは従業員の興味やそれぞれが抱えている健康課題を取り上げ、施策への自発的な参加を促しています。

ストレスチェックを活用した各種施策で、高ストレス者を低減

法令を上回る施策を「健康経営Advance」と位置づけていらっしゃるとのことですが、具体的にどのような施策を検討・実施してこられたのですか?

渡辺:
2023年及び2024年は、健診結果に基づく対策、メンタルヘルス、女性の健康、口腔ケアなどをテーマに施策を検討・実施しているほか、リテラシーの向上を目的とした情報提供にも努めています。さらに、プラスαとして、「治療と仕事の両立支援」についても検討しています。「健康は一人ひとり異なるもの」という考えに基づいたもので、個人が置かれている状況を重視して、必要な人に必要な配慮が届く仕組みを構築していきたいと考えています。

「健康経営Advance」の施策にメンタルヘルスが含まれていますが、貴社はストレスチェックの結果が良好で、高ストレス者率も全国平均と比較して低いと聞いています。

小川:
ありがとうございます。当社は早い時期からストレスチェックを導入しており、毎年、さまざまな施策を展開しています。具体的には、ストレスチェック受検後に、管理職を対象としたラインケア研修と集団分析報告会を実施しています。ラインケア研修では、管理職が興味・関心を持っている内容に沿ったテーマを実施しており、今年度は「心理的安全性を高めるコミュニケーションの取り方」をメインテーマとしました。受検後のアンケートで「今後の参考になった」という声が多数届いています。また、研修の様子をアーカイブで残し、管理職全員が研修を受講できるような体制を整えています。一方、集団分析報告会は、各事業本部の本部長・副本部長、関連する役員に分析結果を報告。受検当時、各部門の実態がどのような状況であったかを振り返ってもらい、どの部門で具体的な対応が必要なのか、また、どのような対処を行うべきかを考えてもらう場として活用してもらっています。

今年度は、新たに若年層を対象とした施策を実施されたと聞いています。

小川:
若手層でメンタル不調者が増えつつある状況を鑑みて、入社6年次までの若手社員に特化した施策を実施しました。具体的には入社6年次以下の社員で、高ストレス者に該当し、医師との面談を申し出なかった者を対象に、社内の保健師が面談を行っています。現在も実施中ですが、今後は面談結果や傾向について、関係者へフィードバックする予定です。

また、若手社員への取り組みとして、年次研修のテーマにメンタルヘルスを盛り込んでいます。年次研修では、セルフケアの必要性を伝えるとともに、社内の産業医や保健師、事業場外支援などに関する情報を発信し、必要に応じて活用するように呼びかけています。

健康管理システムを導入し、健康経営のさらなる推進を

貴社は全国に拠点があり、約半数の従業員が拠点に勤務されているとのことですが、各拠点に勤務する従業員を対象に健康管理を進めていくうえで、工夫されていることはありますか。

小川:
当社の従業員は約3,200名。全国に事業所が点在しており、半数の従業員が本社以外の事業所に勤務しています。全国に拠点や作業現場があることに加えて、期間が決められた有期事業を展開していることから、「短期間で職場環境が変化する」という特徴もあります。物理的な環境だけでなく、関わる人も変化するため、そのような環境の変化にうまく適応できず、メンタル不調に陥るケースもあります。また、職場環境の変化が頻繁にあることで「通院先が定まらないという煩わしさ」や、作業現場が遠隔地(時に山間部など)にあることで「病院までの距離や時間といった障壁」に悩まされている従業員もいるようです。

このような状況にどのように対処していくべきかが、当社の大きな課題であり、その解決策の一つとして、今年度、オンライン診療のサービスを導入しました。現在は、女性特有の健康課題に特化した診療サービスのみを実施していますが、引き続き、従業員が抱えている課題感に合わせて、対処できる施策を適宜、検討していく方針です。

オンライン診療の導入により、環境の変化に左右されることなく、気軽に診療が受けられる体制を整えたのですね。

小川:
これまで、当社は従業員の健康診断の結果をイントラネットに保管し、その結果を産業保健スタッフが1件ずつ確認する体制を採っていました。しかし、確認作業に膨大な時間がかかっていたほか、ストレスチェックや各種面談の結果なども含めた社員の健康に関するマスデータを取得できず、健康情報を適切に管理できていないという課題がありました。そこで、すべての健康情報を一元管理できるシステムの導入を決定しました。現在は、そうしたマスデータの取得方法に関する改善作業を進めている段階ではありますが、今後健康情報を適切に管理できる体制が整った際には、集まった健康情報を活用し、健康経営のさらなる推進に向けた施策検討につなげていきたいと考えています。

渡辺:
「従業員の健康に関する行動と意識にギャップがある」「コロナ禍で働き方やコミュニケーションの在り方が変化した」といった課題もありました。そこで2020年以降、健康経営に関する基盤を整備すると同時に、従業員にアンケートを採って、どこに興味・関心があるかを把握したうえで健康に関する情報を発信し続けました。特に「健康経営Basic」に関しては、各拠点の健康管理担当者が動きやすくなるよう、就業規則を変更するなどして、若干の強制力をもたせました。このような取り組みを重ねていった結果、各拠点の健康管理担当者が健康経営の重要性を理解し、従業員に積極的に働きかけてくれるようになりました。保健師や産業医など産業保健スタッフが健康診断の結果から再検査や精密検査の受診を積極的に促してくれたこともあり、従業員の意識が徐々に高まってきたと感じています。

関係者を巻き込みながら健康経営の施策を一つひとつ実施していった結果、「健康経営優良法人」の認定に至ったのですね。

小川:
先にお話しした「女性特有の健康課題に特化したオンライン診療サービス」は、まさにコロナ禍で新しいコミュニケーションの在り方を模索した結果、導入したものです。変化に対して地道に粘り強く対応してきたことで健康経営優良法人の認定に至りましたが、まだまだ道半ばだと感じています。

最後に、今後の展望についてお聞かせいただけますか。

渡辺:グループ全体で健康とダイバーシティの両方を関連付けながら、より良い施策につなげていきたいと考えています。健康は最も基本的で、かつ一人ひとり状況が異なる「多様性」の最たるものです。さらに同じ仲間が不調で苦しんでいる事を見るのは辛く、何とかしたい、手を差し伸べたいと考えていますし、近くにいる上司や同僚もそのように感じるだろうと思っています。我々人事部はもちろん従業員一人ひとりが、健康に何らかの課題を抱えている従業員のために「何ができるか」を自問自答し、そこから届く意見やアイデアを新たな施策につなげていくことで「多様性を尊重する職場」が実現すると考えています。ストレスチェックのデータなども積極的に活用していくことで、健康経営の取り組みが生産性や社員のエンゲージメントの向上につながればと願っています。

もちろん、「これをやれば絶対にうまくいく」といった魔法の打ち出の小槌はありません。だからこそ、今後も一つ一つの施策を地道に行い、その結果をフィードバックしながら検証を重ね、施策のブラッシュアップを図っていきたいですね。


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