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Interview

「どうなるかじゃない、どうするかだ。」
"世界のHonda"が挑む、これからの採用

Published on 2020/11/20

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Profile

松井 翔太Shota Matsui

本田技研工業株式会社
人事部採用グループ

2006年新卒で入社。二輪生産拠点(熊本)、基礎研究開発拠点(埼玉)、本社(東京)の3拠点で人事労務領域の業務を計12年間経験後、2018年10月より現職に。新卒/キャリア採用グループのグループリーダーを務める。

本田技研工業の採用サイトを開くとまず目に飛び込んでくるのは、「どうなるかじゃない、どうするかだ。」という力強いメッセージ。世界に誇るモビリティメーカー・Hondaが、2014年から一貫して掲げる採用スローガンです。「あなたはHondaで何をやりたいのか?」を応募者に問い続ける同社がおこなうのは、職種別採用や技術系向けのリクルーター活動など、緻密で戦略的な施策の数々。その意図をひとつずつ紐解いていくと、主体性を重んじる採用スローガンとの共通点が見えてきました。コロナ禍というかつてない逆風のなかでも、自社の採用ととことん向き合い、学生のためになると思えることをひとつずつ実践していく——人事部採用グループの松井様が語るHondaの採用活動には、「どうなるかじゃない、どうするかだ。」を体現する、これからの時代の採用活動のヒントが詰まっています。

※本内容は2020年10月7日におこなわれた「HUMANAGE SEMINAR 2022 -VUCA時代、新卒採用の”これから”を考える」の内容を編集したものです。

学生の主体性を尊重した採用方針

本田技研工業新卒採用サイト 採用メッセージ

貴社の採用ポリシーについてお聞かせいただけますか。

2014年以降、新卒採用のスローガンとして「どうなるかじゃない、どうするかだ。」という言葉を掲げています。新卒の就職活動は人生の重要なターニングポイントですが、我々は学生の皆さんに未来を「誰かに与えてもらうもの」ではなく、「自らの意志で切り拓くもの」と捉えてほしいと考えています。主体性を大切にしながら就職活動を進めてほしい、というメッセージを込めて、今年もこのスローガンを採用しました。

2021年卒採用は事務系採用において、初めて「職種別採用」を実施されたそうですね。これはどのような意図によるものだったのでしょうか。

昨年まで事務系採用では「総合職採用」をおこなっていました。入社後の面談を経て、配属部署・職種や勤務地を決定するという流れです。しかし近年は学生の価値観が多様化し、希望とは違う部署・職種に配属されるリスクを意味する「配属リスク」という言葉が聞かれるようになりました。「どの会社に入るかだけでなく、どんな仕事ができ、どんなキャリアを歩めるか」を重視する学生が増えていると感じています。

実際にそうした学生の変化を感じる機会があったのですか?

昨年に総合職採用をおこなった際、ある学生が内定を辞退しました。理由を聞くと、「他社では職種別採用をおこなっているので、自分にやりたいことが確実にできるからです。Hondaにはその確約がありません」とのこと。かく言う私自身、実は初任地は希望通りではなく、身をもって「配属リスク」を感じた一人です。学生に「どうなるかじゃない、どうするかだ。」と主体性を求めるからには、企業としても学生の意志に応えなければならない。そう考えて、職種別採用を決断しました。事実、今年の採用で多くの学生とコミュニケーションを取ってみて、具体的な仕事やキャリアを選びたいという学生のニーズは強く感じました。

500名近い理系社員がリクルーターとして活躍

理系学生向けにはどのような取り組みをおこなわれているのでしょうか?

当社では500名近い現場の社員が採用チームの協力社員(リクルーター)として活動していますが、彼らの多くは技術系の社員です。理系学生の採用においては学校推薦の比重が大きく、大学との関係構築や、大学を訪問しておこなう学生との面談が重要となります。しかし、我々文系社員には、技術者がどんな想いで仕事に取り組んでいるかというリアルな話はできません。そこで当社では理系社員およそ5名から成るチームを100組ほど作り、50ほどの大学に訪問をしてもらい、さまざまな活動をしてもらっています。

すごい人数ですね。社員が総力を挙げて採用活動に取り組んでいる印象です。しかし、そこまで手厚く現場の社員の協力が得られる企業は少ないのではないでしょうか。

この取り組みを始めて10年弱になるのですが、最初のころは現場からの反発もあったそうです。仕事が忙しいのに、なぜ何のメリットもない採用活動を手伝わなければならないのか、と。しかし、現場の社員たちにとっても、学生に自分の仕事や自社のことを語るなかで改めて仕事に対する初心を取り戻し、仕事へのモチベーションが上がるというメリットがありました。そうして良いサイクルが回り出し、社員もどんどん協力的になっていったのだと思います。

リクルーターの訪問先での活動内容は、採用チームが企画しているのですか?

いえ、ある程度はリクルーターに任せており、チームごとにアイデアを発揮してくれています。たとえば九州のある大学では、社員たちが自主的に近所のHonda Cars(販売店)に交渉して自動車を借りて大学に持ち込み、「この自動車を私が担当したんです」と説明しました。

現物を見ながら説明することで、学生にも情熱が伝わりやすそうですね。

こうした取り組みは、学生に技術職の魅力を訴求すると同時に、現場の仕事をリアルに伝え、入社後のギャップを抑えることにつながると考えています。採用活動が始まる9月には、例年100名ほどのリクルーターを集めてミーティングを開き、その年の採用活動の方針を共有するとともに、過去のリクルーター活動の取り組みや成功事例を共有してもらっています。

「どうなるかじゃない、どうするかだ。」という主体性が、社員の皆さんからも感じられますね。取り組みの成果はいかがですか?

いわゆる若者のクルマ離れが叫ばれる昨今ですが、やはり現場社員の話を直接聞いたり、スポーツカーやバイクなどの実機を見たりすることで、魅力を感じる学生は多いようです。

理系の女子学生、いわゆる「リケジョ」の採用について、工夫されていることはありますか。

リケジョ採用にあたっては、仕事内容はもちろん、女性ならではのライフイベントとキャリアのバランスが、現実にどう実現されているかをしっかり伝えています。そのために、リクルーターチームには極力1名以上は女性社員が加わり、等身大の働き方を語ってもらっています。その他にも、たとえば、複数名の女性社員に参加してもらい、仕事やワークライフバランスについてざっくばらんにおしゃべりしてもらう「リケジョお茶会」もそのひとつ。リケジョ向け研究所見学会なども開いています。

成果はいかがでしょうか?

絶対数としてはまだまだ女性の採用人数は少ないですが、モビリティメーカーとしては頑張っているほうではないでしょうか。事実、理系女性の内定者のほとんどはリケジョ向けイベントに参加しているので、これらの施策は一定の成果を上げていると分析しています。

オンライン選考で学生を見極めるために

2021年卒採用は新型コロナウイルスの流行期と重なりました。貴社では特にどのような点において影響を受けたとお考えですか?

やはり面接を対面でできなかったことですね。当社では面接はすべてオンラインに切り替えましたが、「何とか学生に会えないか」という声は社内にも根強くありました。しかし、緊急事態宣言がいつ解除されるかわからない状況のなか、学生にリスクを負わせることはできないと判断し、オンラインならではの面接のやり方を考え、共有した上で選考に臨みました。

学生を見極めるための特定の質問などはあったのでしょうか。

面接を担当する社員によって違うのではないかなと思います。当社では面接の方針は定めているものの、質問事項は良くも悪くも固めすぎないようにしているためです。いわゆる「ガクチカ(学生時代に一番頑張ったこと)」は聞きますが、「そのプロセスの中にどんな想いがあったのか」を特に重視します。「なぜそう思ったのか」「なぜその行動を取ったのか」と理由を重ねて質問しながら、学生の経験を深掘りしていく。リアルでもオンラインでも、これに尽きると思います。

オンライン化にともない、選考プロセスにはどのような変更がありましたか?

例年、事務系の選考ではグループディスカッションを実施していたのですが、オンラインでの実施は難しいと判断し、今年は見送りました。しかし、学生同士のコミュニケーションや集団の中での振る舞い、何気ない所作などは、やはりグループディスカッションでこそ見えてくる。この点について今年の採用では苦労したと感じますし、来期は解決策を打ち出していきたいですね。

「三現主義」とオンラインの融合を模索

内定者とのコミュニケーションは、今後どのように取るご予定ですか?

Hondaで働くということの「リアル」を伝えるため、内定者懇親会などの接点はいつもより多めに作っていきたいと考えています。とはいえ、オンラインでできることの限界もあるでしょう。当社のような製造業においては、「三現主義(現場・現物・現実)」が重視されます。イメージと現実のギャップを解消するためにも、内定者教育では可能な限りリアルな仕事が伝えられる仕掛けを工夫したいと考えています。さらには入社後のフォローについても、例年以上の配慮が必要だと考えています。

逆に、オンライン化の利点と感じられたことはありますか?

遠方の学生とお互いにコストをかけずに会えることや、時間効率が良くなるというメリットは大きかったと思います。一日に実施できる面接数も増えました。また、学生側もオンライン化により効率的な就職活動ができたのではないでしょうか。昨年と比べてエントリーシートの質が高く、合格水準に達する人の割合が明らかに高かったのです。おそらく物理的な移動時間が省けた分、じっくり自己分析に向き合えたからではないか、と分析しています。

最後に2021年卒採用を振り返り、大変だったか楽しかったか、ご感想を教えていただけますか。

大変だったので楽しかった、といったところでしょうか。非常に先行きが不透明な状況だったからこそ、Hondaの採用活動がどうあるべきか、とことん向き合えた気がしますし、例年なら思いつかなかった新たな採用手法にも挑戦できました。私自身も、自社と自分に改めて向き合う良いきっかけになったと感じています。

本田技研工業に入るとは、「どうなるかじゃない、どうするかだ。」を、入社後も体現し続けていくということです。選考において、私は学生に「Hondaに入って何をしたいか」を問い続けていますが、入社後も「自分がどうしたいのか」という想いに再三向き合い、昇華させていくことが求められます。その入口となる採用活動が、学生の夢や主体性をより引き出していければとても嬉しく思います。

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