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Interview

「推しを、お仕事に。」
「好き」と「個性」を引き出す毎日放送のマッチング戦略

Published on 2022/11/11

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Profile

笹山 大生Daiki Sasayama

株式会社毎日放送
人事部

2014年、新卒入社。制作局でテレビ制作、営業局で東京テレビ営業を経験後、2021年より現職。現在は新卒採用のチーフとして採用企画の立案・運営、新人研修などを担当する。「推し」は野球。

「情熱大陸」や「プレバト!!」などの全国ネット番組から、関西ローカルの「せやねん!」「よんチャンTV」まで、多彩な番組を生み出すことでテレビ文化を支えてきた株式会社毎日放送。近年はアニメ「呪術廻戦」のように、地上波のみならずインターネットを介したヒット作も手がけています。そんな同社が2024新卒採用で掲げたキャッチコピーは「推しを、お仕事に。」というもの。いわゆる「ガクチカ」のみにこだわらず、学生の「推し=好きなこと・もの」にフォーカスを当てることで、「幅広いものごとに対する興味を、テレビ局業務に活かせる人材」とのマッチングを図りました。エントリーシート、インターンシップ、面談という各フェーズを通じ、同社が貫いた想いとは? 人事部の笹山様にお話しいただきました。

コロナ禍から生まれたコピー「推しを、お仕事に。」

まずは貴社の事業について、簡単にご紹介いただけますか。

我々の事業を一言でいうと、「コンテンツメーカー」だと考えています。しかし、テレビ局は一般的なメーカーのように、仕様が決められた製品を作るわけではありません。プロデューサーやディレクターをはじめとする作り手によって、どのようなコンテンツが生まれるかは変わります。作り手が自分の個性を活かし、自分が面白いと思うものを作り上げていく。それがテレビ番組というものです。私自身も入社後3年間ほど番組制作に携わりましたが、VTRに自分の好きなBGMをつけたり、テロップで番組のイメージを左右する面白さを体験しましたし、多くの人たちに作ったものを見てもらえるやりがいを感じることができました。

毎日放送は大阪に本社を置き、ローカル番組から全国ネットまで多様な番組を制作しています。テレビ業界における貴社の特長とはどのようなものでしょうか。

当社は社員数が600名程度と、テレビ局の中では比較的規模の小さな組織です。その分、若手のうちから責任ある仕事を任せられる社風があると思います。例えば、半年ほど前に入社した今年の新入社員たちも、すでに報道記者として現場リポートをするなど、それぞれの部署で活躍しています。

2024新卒採用において、貴社は「推しを、お仕事に。」というユニークなキャッチコピーを打ち出しています。採用サイトにはこのコピーと共に、「MBSは、好きな人やこと・ものを持っている人が活躍できる場所です!」というメッセージも掲載されていますね。この採用コピーに込めた意図や想いについて教えていただけますか?

この採用コピーに込めた意図は二つあります。一つは「テレビ局に適した人材像」に関する固定観念を取り除くこと。「テレビ局員は、お笑いやエンタメ情報にすごく詳しい人や、スポーツに精通した人でなければなれない」という、ハードルが高いイメージを持っている方が多いのですが、実際にはそんなことはありません。どんな小さなことであっても「好きなこと」を活かせるのが番組制作の仕事です。例えば「サウナ好き」や「読書好き」であることを活かして番組を作ることもできますし、大学で細胞学を研究したといったアカデミックな興味・知識を活かして輝ける場もあります。人それぞれの「推し」を、自信を持って活かしてほしいという想いを採用コピーに込めました。

採用サイトではたくさんの社員の「推し」が紹介されていて、このメッセージを伝える上で効果的なコンテンツになっていると感じました。もう一つの意図とは何ですか?

二つ目の意図は、「入社してからも、新しい“推し”を見つけられる環境」を伝えることです。放送局の仕事では、芸能人やスポーツ選手といった普段はなかなか会えない人と接する機会もたくさんありますし、普通は行けない、入れないような場所を取材で訪れるチャンスもあります。学生時代と比べると一気に世界が広がり、そこで新しい「推し」を見つけて成長できる。そんなテレビ局ならではの魅力を伝えたいと考えました。

この採用コピーは2024シーズン向けに新たに設定されたと伺いましたが、なぜ今、このメッセージを届けたいと考えたのでしょうか。

2024年4月に入社することになる大学生は、入学時から新型コロナウイルスの影響を受けています。移動が制限され、授業がオンライン化される中で、例年のように学業やサークル活動、海外での課外活動などに打ち込めなかった方が多い。いわゆる典型的な「ガクチカ(大学時代に力を入れたこと)」が制限されてしまっているわけです。しかし、この年代だからこそ、定番のガクチカとは違う、それぞれの多様な「推し」を語ってもらえるのではないか、これまでにない個性と出会えるのではないか。そのような期待を込め、この採用テーマを掲げました。

「ガクチカ」にとらわれず、好きなことを引き出す面談

時代をポジティブに捉えたこの採用テーマを、具体的にどのように各種採用フェーズへ落とし込んでいるのでしょうか。

まず、エントリーシートでは「あなたが取り組んできたことを10個書いてください」という設問を設けました。大学時代に限定せず、幼少期から現在に至るまで、二十年間を振り返って自由に書いてもらうというものです。

10個というのはかなり多い数ですね。どのような意図があるのですか?

確かに少ない数ではないと思いますし、なかには書けない人もいます。でも、例えば「野球」しか好きなことがない人だと、入社後、スポーツ番組以外の仕事ができないかもしれませんよね。「推し」がたくさんある人ほど、入社後に活躍できる場も広がるのが毎日放送という職場です。大学での活動についてあまり書けなければ、幼い頃に熱中したアニメの話や、中学時代にのめり込んだミュージシャンの話でもいい。そうしたさまざまな情報をもとに話し、いちばん盛り上がる話題を見つける。それが当社の面談なんです。ちなみに当社では面接のことを「面談」と呼んでいます。

「推し」に関する質問をベースとした面談の手応えはいかがでしたか?

狙い通り、従来の「応募動機」や「ガクチカ」を中心とした面談と比べて、応募者の多彩な個性を引き出せました。応募動機というのはどうしても事前に準備した文章を暗記するような回答になりがちですし、大学時代のエピソードというのは限定的です。それに対して、幼少時代から現在までに好きだったことに関する話には制限がなく、「嘘」もありません。また、学生自身が自分の好きだったことを振り返ることによって、それが自己分析につながるというメリットもあります。実際、本当に好きなものについて語るときの学生は、みんな自然に声が大きくなり、目も輝いていました。魅力的・個性的な学生と出会うという目的は、達成することができたと考えています。

仕事を通じて、新しい「推し」を見つけてほしい

採用テーマの一つに、「入社してからも新しい“推し”を見つけられる環境」を伝えること、というものがありました。こちらについては、どのようなかたちで施策に落とし込まれたのですか?

説明会とインターンシップでは、放送局の幅広い仕事内容とその魅力について、しっかりお伝えしています。特にインターンシップは、制作・報道・エンジニア・アナウンサーという4コースを設け、それぞれの仕事を擬似的に体験できる内容にしました。ちなみに昨年は全プログラムをオンラインで実施しましたが、今年は3日間のうち最終日は本社にお越しいただき、スタジオや楽屋など、普段は見られない場所もご案内しました。

インターンシップのプログラムで特に注力されたのはどのような点ですか?

制作および報道コースでは学生に3分間の動画を作ってもらうという課題を設定しました。報道コースでは「新」、制作コースでは「大」というそれぞれ漢字一文字をテーマとし、これに関係がある動画であれば何でもよいという自由度の高いルールです。

応募者によって個性が出そうなお題ですね。

まさに学生の「推し」が反映された動画ばかりで、非常に面白かったです。お笑いが好きな学生はお笑いを、音楽好きな学生は音楽をテーマにといった風に本当に多彩な内容で、参加者の個性を存分に感じることができました。一方、参加者からは「もともとはドキュメンタリー制作に興味があったが、インターンで経験した調査報道をやってみたくなった」などという感想が寄せられており、仕事を通じて新しい「推し」を発見していただく良い機会になったようです。

「推しを、お仕事に。」というキャッチコピーを軸に、学生と企業とが双方向に個性を理解し合う採用活動を体現されていることが、よくわかりました。最後に、今後の採用活動に向けての抱負や、中長期的な戦略についてお聞かせください。

直近では、事業の今後に基づき、ITエンジニア採用を強化する必要があると考えています。インターネットを介したコンテンツ配信がますます増えていくのに伴い、ITエンジニアの増員は急務です。IT系の学生に対し、毎日放送の魅力をどう伝えるのか、もっと考えなければならないでしょう。一方、今後も採用キャッチコピーにかかわらず、「毎日放送に入れば、いろんな仕事にチャレンジできる」という面白さを伝え続けたいと思います。

当社には、入社10年目ぐらいまでに3つの部署を経験するジョブローテーション制度があります。多くの学生は「お笑い番組のディレクターがやりたい」「スポーツ番組を作りたい」などの希望があるものですが、若手のうちにその仕事だけをすることはできません。でも、当初の希望と違う仕事もやってみると案外面白く、自分に向いていると気づいたりする。私自身、学生時代に思っていた志望部署と入社後の初期配属は異なりましたが、気付いていなかった自分に向いている仕事を見つけられる機会にもなりました。そうして新しい「推し」を発見し続けられる当社の魅力を、これからも発信していきたいです。

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