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Interview

「やりたいことを描く」採用活動の真意。
三菱UFJ銀行のインターンシップ戦略に迫る

Published on 2022/10/07

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Profile

牛牧 博志Hiroshi Ushimaki

株式会社三菱UFJ銀行
人事部 採用・キャリアグループ
上席調査役

2007年入行。国内支店で計11年間、法人営業に従事。中小企業から大企業、企業再生支援に至るまで幅広い経験を持つ。2018年より人事部で新卒採用を担当。

椎名 優也Yuya Shina

株式会社三菱UFJ銀行
人事部 採用・キャリアグループ
調査役

2010年入行。国内外の支店で計10年間、法人営業に従事。直近では豪州で日系法人営業を経験。2020年より人事部で新卒採用を担当。

預金・貸出残高の両方において国内トップを誇る、三菱UFJ銀行(以下、MUFG)。三菱UFJフィナンシャル・グループ各社と連携し、多様な金融ソリューションを通じて顧客の課題を解決し続けている、日本を代表する金融機関の一つです。そんなMUFGの採用活動の特長は、「学生にインターンシップから選考までのフローを明示することで、業務理解からキャリアイメージの醸成まで一連の流れを作っている」点。ワークショップ型のインターンシップから個別社員訪問型のイベントを組み合わせることで、学生との関係構築を目指しています。採用キャッチコピー「やりたいことがあります。」に象徴される採用理念や具体的な施策について、人事部の牛牧様、椎名様のお二人に語っていただきました。

「MUFGのリアルを知ってもらう一連のプロセス」としてのインターンシップ戦略

近年の新卒採用市場においては、採用の長期化に伴ってシーズン全体の戦略設計が重視されています。とりわけ学生との最初の接点であるインターンシップは各社注力している状況ですが、貴行のインターンシップは採用活動においてどのような位置づけにあるのでしょうか。

牛牧:
学生に対しては、まずMUFGに対して興味を持っていただき、業務や企業風土を理解していただくためのきっかけを作るイベントと位置づけています。加えて当行としても、業務や企業風土に対する理解が進んだ学生は大切な母集団であると考えており、インターンシップ参加者をその後の各種イベントや選考プロセスに参加いただき、内定率を高めていくことも、重要なポイントと考えています。

インターンシップでの母集団形成を行う際には、どのような工夫をされているのでしょうか。

牛牧:
近年のインターンシップはセミナー的な要素が強く、1dayで完結するものもあるようですが、当行では基本的に3daysのインターンシップを実施しています。時間をかけて学生と真剣に向き合うことで、仕事や職場の雰囲気、キャリアの幅広さといったものをしっかり理解いただくためです。

貴行では複数のインターンシッププログラムを実施されているとのことですが、具体的にはどのようなコースがあるのですか?

椎名:
当行の総合職採用は採用人数が最も多いオープンコース以外にも、システム・デジタルコースやウェルスマネジメントコース、戦略財務会計コースなど、専門職採用のコースが複数あり、インターンシップも採用コース毎に設定をしております。

総合職オープンコース向けインターンシップはどのような内容ですか?

椎名:
夏と冬のインターンシップでは、オープンコースで入行した新入行員の多くが経験する、「法人営業」の業務内容を学べるワークショップが主なプログラムです。また1月以降には、学生と人事部以外の行員(メンター・アドバイザー)が一対一で面談をする、One to Oneインターンシップと題したフォローイベントを実施しており、ワークショップに参加した方が全員自動的に参加することができます。

ワークショップ型インターンシップに続きOne to Oneインターンシップを実施しているのは、どのような意図によるのでしょうか。

牛牧:
幅広い銀行業務や個人に合わせた多彩なキャリア形成を理解するには、通常のインターンシップだけではなく、行員と直接対話をし、自分の働く姿をイメージしてもらうことが重要だと考えています。そこで、One to One インターンシップによる個別の接点を通じて、ワークショップ型インターンシップの参加学生をフォローする仕組みを2020卒シーズンからスタートしています。現在は母集団を拡大するため、ワークショップに参加していない方でも、面接通過を条件にOne to Oneインターンシップに参加できるようにし、多くの学生に当社を知っていただく機会としています。

接点を組み合わせ、「メガバンク」のイメージギャップを解消

ワークショップは具体的にどのような内容なのですか?

椎名:
「架空企業を題材に事業戦略を提案する」というグループワークを通じ、答えのない課題をチームでどう解決するか、という銀行業務の面白さを体感いただく内容です。

そうしたワークプログラムは、すべて採用チームで作られるのですか?

椎名:
はい、採用チームには法人営業の経験が豊富なメンバーが複数おりますので、大枠は採用チームで設計しています。ただ、細かい設定をよりリアルなものに仕上げるために、ワークで題材とする架空企業の業界を実際に担当している行員のアドバイスも受けるようにしています。またリアリティを高めるため、行員がお客さまに提案する際に実際に使用している業界動向の分析資料などを学生にお渡しし、これをベースに疑似提案を体験いただいています。

学生がリアルな銀行業務を体感できるよう、工夫を尽くされているのですね。そこまで「リアル」にこだわるのはなぜなのでしょうか。

牛牧:
学生の皆さんが銀行業に対して抱いているイメージと現実の銀行業とでは、かなり大きなギャップがあるからです。また、メガバンクと地方銀行、ネットバンクの違いについても理解度は低い。例えば過去のインターンシップで、「私が入行後に初めて貸し出した金額はいくらだと思いますか?」と私が質問したのに対し、東京大学に在籍しているある学生から返ってきた回答は「800万円」。正解は5000万円で、これでも当行としては少ない金額です。金融業界を志望する東大生でさえ、メガバンクの法人営業に対する理解はこれほど実態と乖離しているわけです。

そのギャップを埋めるために、インターンシップでは銀行の具体的な業務についても伝えるのですか?

牛牧:
いいえ、当行の具体的な仕事内容については、あえて最初に伝えないようにしています。さまざまなワークに取り組む中で、銀行がお客さまのためにできることは何か、学生自らがアイデアを出し、ディスカッションする。そうして徐々に銀行業の本質を学んでいけるようなプログラムを設計しています。

まさに「やりたいことがあります。」という採用キャッチフレーズに重なる、学生の主体性を尊重したワークなのですね。1月以降に実施するOne to Oneインターンシップについては、どのような点を重視していますか?

椎名:
One to Oneインターンシップでは、若手の行員にメンターとして学生の伴走役になってもらっていますが、学生に対して何を話すかといった細かい指示はあえて出していません。各メンターが入行後に経験した多様な業務や、感じたことを率直に語ってもらうことで、MUFGのリアルな姿や行員の個性を学生に伝えたいと考えているからです。

ワークショップとは違った角度から、貴行の魅力が伝わると同時に、選考に向けたフォローとしても大きな効果がありそうです。

牛牧:
そうですね。先ほども申し上げたように、夏と冬のワークショップ型インターンシップに参加いただいた方は、1月以降のOne to Oneインターンシップに自動的に参加いただく、というような流れをつくっています。学生と接点を持つ都度、次のステップやイベントを明確に示すことで、インターンシップへの参加から選考まで一連の流れとして意識していただけるようにしています。

人事制度のリアルな部分も伝えている

インターンシップを含め、採用活動全般を通じて貴行が学生に最も伝えたいこととは、どのようなことなのでしょうか。

牛牧:
重ね重ねになりますが、多くの学生は銀行に対して、かなり実態と違うイメージを持っています。インターンシップでは毎回、「銀行員に対して抱いているイメージ」を尋ねるのですが、「七三分けで堅苦しい」「仕事がきつい」「失敗したら外部に出向させられる」といった、テレビドラマなどに影響された答えが返ってきます(笑)。しかし実際のMUFGには柔らかい雰囲気の行員が多いですし、ワークライフバランスを充実させる制度などが整っている環境です。学生のイメージギャップや不安をひとつずつ払拭し、正しい情報を伝えるために、インターンシップでは行員と直接話せる場を意識的に増やしています。そしてメガバンクのビジネスモデルの奥深さも、ぜひ伝えたいポイントですね。当行の法人営業の仕事は、既存の商品を提供することではなく、顧客のニーズに応えるためにクリエイティビティを発揮し、どんなサービスを提供できるかを考えること。そして社会と金融は一体であり、メガバンクの仕事には世の中を動かすインパクトがあることを学生には伝えています。

椎名:
入行後のキャリアの多彩さについても、もっと知ってほしいですね。銀行員のキャリアは人事が決めると思い込んでいる学生が多いのですが、MUFGでは逆に、行員一人ひとりが自分のキャリアを自律的に考えることが求められています。一人ひとりのやりたいこを実現するために、Job Challenge(社内公募制度)やPosition Maker(行員の発想を起点とした職務創出の制度)などの各種制度も整っており、年々利用する行員の数も増えています。最近の学生は、「就職後に何ができるか」といったキャリアイメージを重視する方が多く、そのニーズに応えるためにもワークショップ型のインターンシップでは各種人事制度の紹介も行っています。

これだけインターンシップが充実していると、参加者が入行につながるケースもかなり多いのではないでしょうか。

牛牧:
多いですね。さらに、インターンシップに参加した内々定者が、内々定承諾後に辞退することはほぼありません。

近年の売り手市場や採用のオンライン化に伴い、内々定後辞退者は増加傾向にあると言われています。それがないということは、インターンシップによる動機形成に成功していることの表われですね。最後に、今後の採用に向けた展望や抱負についてお聞かせください。

椎名:
近年、「手に職をつけたい」「就職後にどんなスキルが身につくか知りたい」と考える学生が増えていると言われています。このような変化を捉え、MUFGでキャリアを積むことで、どのようなプロに成長できるのかを、より明確に伝える広報戦略を展開していきたいと考えています。加えて、総合職オープン採用は引き続き継続しつつ、職種別採用を更に強化を行う必要があると考えています。

牛牧:
採用マーケットのトレンドとして選考の早期化が続いていますが、私はそろそろ考え直すべき時期に来ていると考えています。我々採用担当者も自社のアピールをするだけでなく、学生に対してどのようなタイミングで就職活動を進めるのがよいか、啓蒙活動をする必要があるのではないでしょうか。もちろん、採用広報のさらなる強化も求められています。「MUFGはどんな魅力を持った組織なのか」を一言で学生に伝えられるよう言語化し、採用ブランドとして浸透させること。それが、今後の採用における長期的な課題だと考えています。


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