1995年、新卒でライオン株式会社に入社。日用品の国内営業、食品の商品企画を経て人事部へ。人材育成に携わったのち、2008年に国際事業本部に異動。進出国の事業管理等に携わり、韓国駐在を経験する。帰国後、人事のグローバル化推進に参画、シンガポールへ駐在。2017年より国内人事部に戻り、現在は労務・福利厚生、採用等の人事オペレーション全般を統括する。
Published on 2021/06/25
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岡田 好司Koji Okada
ライオン株式会社
人材開発センター
統括リーダー
1995年、新卒でライオン株式会社に入社。日用品の国内営業、食品の商品企画を経て人事部へ。人材育成に携わったのち、2008年に国際事業本部に異動。進出国の事業管理等に携わり、韓国駐在を経験する。帰国後、人事のグローバル化推進に参画、シンガポールへ駐在。2017年より国内人事部に戻り、現在は労務・福利厚生、採用等の人事オペレーション全般を統括する。
シェイ・エイミーAmy Hsieh
ライオン株式会社
人材開発センター
アメリカで生まれ育ち、大学進学と同時に来日。2020年、新卒でライオン株式会社に入社。同7月より人材開発センターにて採用を担当、採用企画・運営に幅広く携わる。
オーラルケア用品の分野で圧倒的なブランド力を誇るライオン株式会社。安定した大企業というイメージも強く、学生からの人気も根強い日用品メーカーですが、「実はここ数年で、人材採用・育成に関するポリシーを大きく変化させているところなんです」と人材開発センター・統括リーダーの岡田好司様は言います。“「未来の暮らし」を創る”という理念に基づく、従来のモノづくりから一歩進んだ新規事業立ち上げ。そしてさらなるグローバル展開。――そうした中長期的な事業戦略に合わせ、企業の求める人物像も大きく変化しつつあるのです。「挑戦するライオン」の人材戦略について、人材開発センターのお二人にお話を伺いました。
貴社の採用サイトのトップには、“「未来の暮らし」を創る”というキャッチコピーが使われていますね。ここにはどのような意図が込められているのでしょうか。
岡田:
単にプロダクトを作って売るのではなく、生活者の暮らしをより良くしていくサービスを提供するという当社の理念、そしてパーパス(存在意義)を表しています。もとより当社の経営理念の中には、“創業以来の伝統である「挑戦と創造の心」を大切にし、事業の永続的発展に努める。”という言葉があります。ここ数年は今まで以上に会社として「挑戦」を重んじた経営戦略をとっており、これに応じて人事・採用の方針も変化しています。
人材戦略はどのように変化したのですか?
岡田:
一言で言うと、これまで以上に「自分なりにチャレンジをしてきた人」を積極的に採用するということです。どんなことでも構いません。挫折や失敗に直面しても、あきらめずに工夫して乗り越えてきた人。そういう方々に、これからのライオンを託したいと考えています。
そのようにチャレンジングな人材が活躍できる環境が、貴社にはあるということでしょうか。
岡田:
はい、そのために今、社内の人事制度を大きく改革しています。一例を挙げると、2019年には従来の階層別研修を全廃しました。これに代わり、社員の階層や年次に関係なく、多彩な学習コンテンツの中から必要なものを自主的に選んで受けられる育成プラットフォームを導入したのです。これは「ライオン・キャリアビレッジ(LCV)」というものです。
大胆な教育改革ですね。どのような狙いがあるのでしょうか。
岡田:
時系列に沿って受動的に学ぶシステムよりも、希望者が主体的に学べる環境を用意した方が、意欲のある人材をサポートすることにつながると考えています。初年度は対象者の60%以上がWebコンテンツを受講し、うち約20%が討議形式プログラムにも参加しました。Webを有効活用することで、在住地やライフステージに関わらず誰でも学べる点も大きなメリットです。こうした点が評価され、一般社団法人e-Learning Initiative Japan と日本工業新聞社主催「第16回日本e-Learning 大賞 キャリアアップ教育特別部門賞」および、日本の人事部主催「HRアワード2019」をダブル受賞しました。さらに、改革は育成システムだけにとどまりません。2019年4月から、新しい価値を有する事業を生み出すプログラム「NOIL」をスタートしました。
NOILとはどのようなプログラムですか?
岡田:
一般的な言葉で言えば、新規事業提案イベントです。当社の既存事業領域だけではなく、例えば幅広いヘルスケア領域に関わる課題を解決するような新規事業を社内で公募します。アイデアを出した社員は、社長をはじめとする経営陣に直接プレゼンテーションを行い、専門家の評価・アドバイスも受けることができます。優れたアイデアがあれば、もちろん積極的に事業化を検討します。
面白い取り組みですね。社員からの反響はいかがですか?
岡田:
若手社員を含め、多くの社員からたくさんのアイデアが出ており、社内風土の活性化につながっていると感じます。ちなみに「NOIL」というのは「LION」という社名を逆から読んだもので、これまでのライオンの常識を打ち破るような事業をやろうという意気込みが込められています。
全社を挙げて人事制度を変革する中で、採用戦略はどのように変化していますか?
岡田:
これまでは「エントリーいただいた学生を選考する」という採用スタイルだったのですが、一昨年からは優秀な人材が多い大学に対して当社から積極的にアプローチすることを始めました。具体的には学内説明会の実施などです。
採用活動もチャレンジングに変化したわけですね。
岡田:
その通りです。「ゼロから一を生み出す資質を持った人」を採用するために、面接前の適性検査も積極的に活用するようになりました。検査を通じ、新しいタイプの社員の割合を増やしていこうという狙いがあります。
そうした採用ポリシーの変化は、採用の成果に影響していますか?
岡田:
まだ始めて2、3年の取り組みですが、明らかに従来とは違うタイプの新入社員が増えてきたと感じます。たとえば先ほどお話したNOILにチャレンジする若手も多いですし、提案内容、プレゼンテーションのレベルもかなり高いですね。
エイミー様は2020年入社ですから、新しい採用ポリシーに変わってから入社されたわけですね。ライオンの「挑戦する社風」は実感されていますか?
エイミー:
もちろんです。私の場合は高校までアメリカで育ちました。異国である日本企業に入ること自体が私にとって大きなチャレンジであると同時に、ライオンにとってもチャレンジングな採用だったと思います。入社してからも挑戦する社風は日々実感しています。たとえば入社1年目の私に採用担当者という「会社の顔」を任せることは、大企業であるライオンにとってはかなりリスクのある挑戦だと思います。しかし、責任ある仕事を早くから任せてもらえることに、大きなやりがいを感じます。
学生との接点づくりにおいては、選考だけではなくインターンシップも重要な場と言われます。貴社ではどのような取り組みを行われていますか?
岡田:
インターンシップは重視しています。例年、インターンシップを通じて学生と企業とが互いに深く知り合い、相思相愛で入社に至るケースは少なくありません。そうしたことからも、2022年卒の方向けにもインターンシップは行いました。
内容にはどのような工夫をされているのでしょうか。
岡田:
例年少しずつブラッシュアップしています。新しい取り組みとしては、オンラインでの実施でしょうか。各専門領域の現場社員に参加してもらい、グループワークなどを通じてより相互の理解を深める工夫をしています。
反響はいかがですか?
エイミー:
当社のインターンシップでは、ワーク内で行う中間発表や最終発表に対するフィードバックを、各分野の現場社員が丁寧に行います。現場社員の意見を聞くことでよりリアルに業務を疑似体験し、仕事で何が必要かを知ることができる。おかげで学生の満足度はかなり高いようです。
先ほど、貴社には若手が挑戦できる社風があるというお話がありました。エイミー様は仕事の中でどのようにそれを実感されていますか?
エイミー:
たとえばアプリを使ったリファラル採用は、私を含む若手社員の発案でスタートしました。すでに2021年卒の入社予定者から後輩、友人を紹介してもらっています。
岡田:
選考ステップが進んだ学生のフォローも、エイミーがメインで担当しています。私のような管理職よりも、学生と世代が近い社員の方が適していると考えているためです。これも学生の志望度向上において重要な活動です。
エイミー:
ライオンの選考に関する相談はもちろん、就職活動全般の相談に応じています。私もつい最近就職活動をしたばかりなので、その体験を活かして親身にアドバイスするよう心がけています。今はオンラインでのフォローがメインですが、温かい社風が伝わったという声をいただけています。
今後の採用活動における目標や、中長期的なビジョンについて教えていただけますか。
エイミー:
将来的には、アメリカ出身というバックグラウンドを活かして、グローバル人材の採用に貢献したいと考えています。国内拠点での採用だけではなく、海外のグループ会社での現地採用などにも挑戦してみたいです。
岡田:
今エイミーが申し上げたグローバルな人材戦略は、会社全体にとってのビジョンでもあり、実は私もその戦略立案に参画しています。ライオンという会社がよりグローバルな企業として成長するためには、国籍を問わずグローバルな経験を持つ人材を積極的に採用することが欠かせません。エイミーを人材開発センターに配属したのも、一つにはそのためです。そしてグローバル採用と並んで今後の重要な課題と考えているのが、職種別・コース別採用の導入です。近年の学生や新入社員の中には入社後のファーストキャリアで経験する仕事を重視する傾向が強く、採用市場においてもそうしたニーズに応える企業が増えつつあります。「総合職採用」では採用するのが難しい優秀な人材を確保するため、新たな採用の入り口を用意したいです。
最後に、人事という仕事への想いをお聞かせください。
エイミー:
毎年たくさんの学生と会う採用担当者にとって、その一瞬一瞬が「多くの業務の中の一場面」であることは事実です。しかし、個々の学生にとっての就職活動は、今後の人生を大きく左右する重大なイベント。その重みを感じながら、すべての応募者と丁寧に向き合い、入社後も引き続きフォローしていきたいと思います。
岡田:採用を含め、「人事」という仕事には社員の人生はもちろん、その家族にも影響を及ぼす重みがあります。さらに突き詰めれば、社員の仕事の先には無数のお客様がいらっしゃるわけで、「人」に関わることによって波及する影響は想像以上に大きいものです。そうした影響力を自覚しながら、優秀な人材を採用し、そして彼らがやりがいを持って長く働ける環境を作らなければならない。たとえ途中で退職することがあっても、ライオンに入社して良かったと思ってもらいたい。難しいことですが、それが人事の使命だと心に刻んでいます。
Special Feature 01
人材データを蓄積し、その後の採用可能性につなげていく「タレントプール」。
新たな採用手法の実現方法を紐解きます。
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