MENU

TOP  >  インタビュー  >  就職みらい研究所によるコロナ禍の採用トレンド分析。いま、企業...

Interview

就職みらい研究所によるコロナ禍の採用トレンド分析。
いま、企業に求められる採用・雇用の考え方とは?

Published on 2023/03/10

VIEW 1933

Profile

栗田 貴祥Takayoshi Kurita

株式会社リクルート
就職みらい研究所 所長

1992年(株)リクルート入社。以来、30年にわたりHR事業領域に従事。新卒採用・中途採用・教育研修等の提案営業を経験の後、新卒メディア・中途メディア事業の営業部門、人事・組織開発、広報などのスタッフ部門の部門長を経て、2021年4月より、リクナビ編集長に就任。2022年4月より現職。

慢性的な人材不足や、働く人と組織の関係性が変化する中、就職活動/採用活動のトレンドは大きく変化しつつあります。特にここ数年は新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、採用活動の在り方を見直さざるを得ない状況となりました。今後、景気の変化は求人倍率にどのような影響を与えるのか。そして従来の一律的な採用手法はどのように変わるべきなのか。人事にとって気になる質問にお答えいただいたのは、株式会社リクルート 就職みらい研究所 所長の栗田貴祥様。就職と採用の”いま”と”みらい”を語っていただきました。

コロナ禍を受けた、採用の早期化やオンライン化・ハイブリッド化がトレンドに

まずは近年の就職活動・採用活動のトレンドについて、大局的なポイントを教えていただけますか。

2023年卒の就職活動・採用活動を特徴づけるトレンドは、大きく3つ挙げられます。まず一つめは、採用スケジュールの早期化・長期化・過密化です。これは2022年卒にもすでに見られた特徴でしたが、2023年卒でいっそう色濃くなり、2024年卒の就職活動・採用活動はさらにこの傾向が加速すると見てよいでしょう。そしてもう一つのトレンドは、オンライン化です。これはいうまでもなく新型コロナウイルス感染症の流行を要因とする現象ですが、コロナ禍1年目・2年目では各企業が手探りでオンライン施策を導入していたのに対し、3年目となった2023年卒ではオンライン採用がおおむね確立されました。そしてこのオンライン化が採用スケジュールの早期化・長期化・過密化の一因ともなっています。

近年はオンラインとリアルのハイブリッド型採用に取り組まれている企業も増えている印象です。

おっしゃる通りです。2023年卒の採用活動にはコロナの感染対策もある程度確立され、対面選考の回帰の流れが生まれてきました。例えば二次面接まではオンラインで行い、最終面接だけは対面で実施するという企業も多いですね。とはいえ、仮にコロナ禍が収束したとしても、完全にオンラインから対面に戻るということはあり得ないのではないかと思います。リアルと対面、それぞれの良さをうまく使い分けながら、自社の強みを発揮できる企業が今後は採用に成功するでしょうし、学生側も同じことが言えると思います。

景況感と求人倍率の関連性は年々弱まっている

続いて、景況感と求人倍率の関連性についてお伺いしたいと思います。一般的に景気の悪化は求人倍率の低下につながると言われていますが、栗田様は近年、この傾向が弱くなっていると考えているそうですね。コロナ禍では多くの企業が打撃を受けましたが、求人倍率に与えたインパクトはどのようなものだったのでしょうか。

その点については実際のデータをみながらご説明します。

日銀短観・景況判断指数DI(大企業製造業業況判断指数 最新/先行)
画像1

求人総数および民間企業就職希望者数・求人倍率の推移
画像2

 

上記の日銀短観・景況判断指数DIを示したグラフと、求人倍率を示したグラフを見比べてみてください。ある程度の相関があることがみて取れると思います。例えばリーマンショックがあった2009年は景気動向指数、求人倍率ともに顕著に低下しています。しかし、コロナ禍にあったこの数年は、景気動向指数が低下したものの、リーマンショック時ほどではありません。バブル崩壊後の不況時のように求人倍率が1.0を切るようなこともなく、まずまずの数値にとどまっています。こうしたデータを見る限り、景況が求人倍率に与える影響はこの10年ほどで徐々に小さくなっていると言えると思います。

なぜ、景気が悪くなっても求人倍率が下がらなくなったのでしょうか。

中長期的な労働人口の減少に伴い、構造的な人手不足が起こることが明らかであるため、企業も人員採用をストップせずに続けるようになったのだと考えられます。バブル崩壊後やリーマンショック後には、不動産業界や金融業界を中心に採用を一斉にストップする企業も多かったのですが、景気回復の局面で人材不足に悩まされ、出遅れてしまいました。そうした教訓もあって、景気後退の局面でも採用を続ける企業が増えたのではないでしょうか。事実、新型コロナウイルス感染症の流行による景気後退もかなり深刻なものでしたが、求人倍率は危惧されたほど下がらず、今は回復の局面にあります。おそらく今後も、景況感と求人倍率の相関はさほど強くない状況が続くと思われます。

採用をストップすることで企業の血流が止まるリスクを学び、コロナ禍においても採用を止めなかったということですね。コロナ禍ではむしろ、オンライン採用という新たな手法を有効に取り入れ、採用を成功させた企業も多く見られました。

今回のコロナ禍の場合は特に、人手不足に対する意識が以前の不況時以上に高まっていました。ただし、今後の状況を見据えると、回復局面で出遅れたくないという企業が多かったのでしょう。特に中堅規模以上の企業では、中長期的な展開を踏まえた継続的な人員確保の考え方が確立されたといって良いでしょう。

ジョブ型雇用の要素を取り入れ、多様化を目指す

近年では、入社前に業務内容や勤務地などを明示し、初任配属確約型の採用を行うなど、いわゆる「ジョブ型雇用」の要素を取り入れた採用が行われるようになってきました。この潮流についてもお話を伺えればと思います。

これまでの日本ではメンバーシップ型雇用が圧倒的に主流でした。新卒の人材を4月入社に向けて一括で採用し、初任給は全員一律。そして配属先は企業側が決め、従業員はジョブローテーションで様々な業務や勤務地を経験しながらキャリアを積んでいく。しかし世界的に見るとこの手法はかなり独特で、欧米をはじめ海外では多くの国でジョブ型雇用が主流です。ジョブ型雇用では入社前に業務内容や勤務地などの条件を明確に決めて雇用契約を結び、企業主導のジョブローテーションはありません。給与も入社時から職種によって異なります。

なぜ日本ではメンバーシップ型雇用が深く根付いているのでしょうか。

実は、日本でメンバーシップ型雇用が行われるようになってからの期間も、それほど長いわけではないのです。労働人口が限られ、資源の乏しい日本で企業が成長するためには人材の力が欠かせませんが、高度成長期において、優秀なスキルを持つ人材を選んでジョブ型雇用を行うのには限界がありました。それよりは、ポテンシャルのある新卒人材を一括採用し、一括で教育し、ローテーションでさまざまな仕事を経験させるほうが効率的だったのです。人事はジョブローテーションを繰り返す中で社員の適性を探り、社員は最終的に最も適した部署・業務に落ち着き、定年を迎えます。個人のキャリアオーナーシップは失われるものの、ジョブローテーションを経て成長を実現することもできますし、企業が成長しているときはポストも用意され、年功序列で給料も上がっていく仕組みです。さらに、終身雇用により一生涯を保証してもらえるというメリットもある。高度成長期の企業、そして社員にとっても、非常に優れたシステムだったと言えるでしょう。

確かに、メンバーシップ型雇用のメリットは大きいですね。しかし高度成長期が終わり、うまく機能しないケースも増えてきたということですか。

その通りです。バブル崩壊後、日本の低成長が長期化する中、企業が終身雇用を維持するのが難しくなりました。今では大手企業の経営トップでさえ、そのことを公に発言するようになっています。高度成長期のように新しいポストを用意し続け、年功序列で全員の給料を上げられる時代ではなくなったわけですね。こうした変化を受けて、キャリアを企業任せにせずに自分で決めたい、職務や勤務地を入社前に確約してほしいという志向をもつ若者も増えてきました。

現在、メンバーシップ型雇用に行き詰まっている企業は、今後どのように採用・雇用のあり方を変えていけば良いのでしょうか。

もちろんメンバーシップ型雇用にもメリットがありますし、それがフィットする企業も多いでしょう。従来のメンバーシップ型が主流の日本型雇用はもう古いからジョブ型に変えなければならない、という性急な転換はナンセンスです。自社の特徴に合わせて、どんな人材にどのように活躍してほしいかを考えながら採用・雇用手法をチョイスし、再設計していくしかないでしょう。しかし全体としてみると、ジョブ型の要素を取り入れることは良い流れだと思っています。これまでの日本はあまりにもメンバーシップ型の一括採用に偏りすぎており、キャリアに関する企業側の交渉力が強くなりすぎていたからです。今後は一括採用だけでない多様な「入口」が企業に設けられ、各個人の価値観にフィットする働き方が実現されることが重要だと思います。

一律的な採用や雇用は、もう限界を迎えつつあるということですね。

採用・雇用に限らず、これまでの日本ではあまりにもいろんなシステムが一律的すぎたと思います。少し話が変わりますが、例えば教育システムもその一例です。子どもの個性も能力も千差万別なのに、なぜ小学校・中学校・高校での学習カリキュラムは画一的なのか、という疑問の声を上げる人も最近は増えてきました。能力の高い子どもには飛び級を認めることや、全教科を一律で学ばせるのではなく、美術や音楽など得意な分野に特化した教育を受けさせるといった議論も始まっています。今後は教育にせよ労働にせよ、社会の多様化がいっそう進むことになるでしょう。

last

 

引用:
株式マーケットデータ チャート(日銀短観・業界判断指数DI)
リクルートワークス研究所 第39回 ワークス大卒求人倍率調査(2023年卒)
就職みらい研究所 働きたい組織の特徴(2022年卒)


関連記事

Interview

インタビュー記事一覧へ

Seminar

コンテンツがありません

セミナー一覧へ