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Interview

組織と個人の関係性をアップデートせよ。
「アルムナイ採用成功へのステップ」を解説

RECRUITMENT

Published on 2023/10/20

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Profile

酒井 章Akira Sakai

アルムナイ研究所 所長
株式会社the creative journey 代表

1984年、株式会社電通入社。クリエイティブ部門、営業部門を経て、2004年からのアジア統括会社赴任時にアジアネットワークの企業内大学を設立。帰任後は人事部門でキャリア施策開発に携わる一方、東京汐留エリアの企業・行政越境コンソーシアムを立ち上げる。2017年、電通アルムナイ立ち上げ。2019年4月に独立。国家資格キャリアコンサルタント。

退職者と企業の間でゆるやかなコミュニティを形成し、関係を維持する中で生まれる「アルムナイ採用」。終身雇用が崩れた今、組織のイノベーションを促進すると同時に、個人の柔軟なキャリア形成を可能にする有益な手法として注目を集めています。インタビューにお応えいただいたのは、アルムナイ研究所長の酒井章氏。本記事では、企業がアルムナイ採用を実践するための考え方や具体的なプロセスについて、実際の事例を交えつつお話しいただきました。

「フラットにつながり合う」ことがアルムナイ採用のスタート

アルムナイ採用を実践したいと考えているものの、具体的な手法がわからないという採用ご担当者も多いかと思います。アルムナイ採用を行う上でまず押さえておくポイントは何でしょうか。

アルムナイネットワークの構築に成功している企業に共通するポイントの一つに、「採用を前面に出しすぎないこと」が挙げられます。まずは企業とアルムナイがフラットにつながり合い、心理的に安全かつWin-Winの関係が構築できていなければ、アルムナイが戻ってきたいとは思わないからです。組織と個人との関係を見直すことなく、採用のみを目的にアルムナイとつながろうとする会社は、せっかくつくったネットワークも長続きしないと感じています。

アルムナイ採用における課題はどのようなものですか。

例えば、短期的な視点や中長期な視点のバランスが崩れていることが挙げられます。既に戻りたいと思っているアルムナイに対して正しい採用情報が届いているか。一方で、いまは戻ることを考えていないアルムナイにとっても会社の変化やワクワクする情報が届けられているか。アルムナイが置かれている環境はさまざまであるため、いずれのニーズも満たす必要があります。

ちなみに、アルムナイと組織との良好な関係は、欧米がモデルとなっているのでしょうか?

アルムナイネットワークの構築は、もともと欧米のコンサルティング会社や大学などを中心に広がっていきました。人材流動性が高い市場の中で、辞めた後にも企業と個人とが関係性を保ち、そこからビジネスを生み出すという習慣が根付いていきました。その点で、欧米と日本ではアルムナイの成り立ちは異なりますね。

アルムナイ採用の鍵は「理念」に即した関係づくり

アルムナイとの関係づくりを行っている最近の好事例をご紹介いただけますか。

最近の傾向の一つとして挙げられるのが、若手の社員がアルムナイネットワークの構築に奮闘しているということです。例えばある自動車メーカーでも、若い人事の方が中心となってアルムナイネットワークを立ち上げています。会社の未来をつくっていくために、積極的に社外との連携を図っているという良い事例です。

現在、アルムナイ採用がうまくいっている企業に共通するのは、アルムナイとの関わり方における理念をしっかりと据え、自社らしい「型」をつくっている点です。自社のアルムナイの在り方をまずはしっかりと議論し、最終的にどのように採用までつなげていくかを考える必要があります。

具体的な方法論についてもお伺いしたいのですが、アルムナイとのネットワークはどのように構築し、維持していくのが良いのでしょうか。

多くのケースでは、アルムナイ同士、アルムナイと企業所属の社員が交流できるプラットフォームを構築し、その中で情報交換の場や自社のいまを伝えるコンテンツを提供することで、ゆるやかにつながりを維持していきます。これからアルムナイ採用を見据える企業は、社員の退職時に「退職した人たちに会社の情報をお知らせするサイトがあるので、よければ入ってみませんか」と促すと良いでしょう。スムーズにコミュニティへ誘導できるこうしたプラットフォームをつくることもひとつの手段です。

アルムナイに対して、企業はどのような情報を提供するのですか?

例えば社外へのプレスリリースを同時にアルムナイコミュニティに発信する企業もありますし、アルムナイそれぞれの興味関心や現在の職種に合わせた最新のニュースを発信している企業もあります。

普通、退職した社員は突如として会社からの情報が完全に遮断されてしまいますが、こうした情報提供を行うことで、会社とつながっている実感を持つことができます。これらの情報提供やネットワークを充実させることは、いますぐには採用に結びつかないかもしれませんが、まずは自社の情報を届け、アルムナイと健全につながり合う「場」を確立させることが大切です。実現できるかどうかは企業にもよりますが、アルムナイ同士が交流できるツールなどを活用するのも良いでしょう。

アルムナイ採用に挑戦する人事担当者が注意すべきポイント

採用ご担当者からは、「アルムナイ採用は社員数が多い大手企業でないと難しいのでは」という声をいただくこともあります。規模が小さい企業の成功事例もあるのでしょうか。

もちろんです。システムの活用はもちろん、小規模のイベントを開催するなどしてアルムナイとのネットワークを築いた事例はたくさんあります。持続的な関係が土台としてあるからこそ、採用につながりやすくなると思います。大切なのは企業規模や従業員の人数ではなく、アルムナイのネットワークを活性化させるための取り組みの質と量だと考えます。

従来の日本企業が、アルムナイ採用を目指す上で改めるべき点はどのようなことだと思われますか?

例えば、退職時のコミュニケーションを見直すべき企業は多いでしょう。日本の企業では、数十年にわたってロイヤリティをもって務めてきた社員であっても、システマチックに退職の手続きが行われます。退職直前のネガティブな経験によって、それまで長く会社に抱いていたロイヤリティが一気に反転してしまう。これでは良好なアルムナイネットワークを構築することはできません。

その他、採用担当者がアルムナイ採用を行う上で気をつけるポイントがあれば教えてください。

アルムナイとの間で、「理念(フィロソフィ)」を共有することが重要です。ここでいう理念とは、「現在の自社のパーパスや企業文化を共有し、共感してもらうこと」を意味します。アルムナイを採用するにあたっては、「あなたが在籍した頃と現在とでは、このように会社が変化しています」ということをすり合わせ、長期的な関係性を築いていく必要があります。個別の事業内容や仕事だけではなく、企業全体の状態やビジョンも含めた情報提供を行っていくことが必要だと考えられます。

最後に、企業と個人の新しい関係を実現するために、人事担当者に求められることはどのようなことでしょうか。記事を読んでいる採用ご担当者に向けてメッセージをお願いします。

最近、企業の経営層の方とお話ししていると、共通して「人事部門のアップデート」という言葉が出てきます。2000年代頃までの人事部門では成果主義が主流でしたが、ジョブ型雇用や人的資本経営が主流になりつつある今は、成果主義だけでは人材をマネジメントできません。入社してから卒業(退職)するまではもちろん、その後まで見据えて人材マネジメントのエコシステム全体の再構築をしていく必要があると思います。そのためにも、これからの人事ご担当者は、経営や社会に対する感度を高く持ち、経営との連携を深めていくことが不可欠です。これまでの人事は、ともすれば外部との接点が少なくなりがちでした。しかしこれからは、外部へのアンテナを高め、自らをアップデートし続けることが求められていくのではないでしょうか。

アルムナイ研究所についてはこちら(外部サイトに遷移します):
アルムナイ研究所 – アルムナイ研究所は、日本の文化に根ざした「企業とアルムナイの関係」を研究する組織です。


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