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Interview

「街づくり」を支える多彩な人材を求めて――
私鉄の雄・東急の「総合職一括採用」を紐解く

Published on 2022/04/15

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Profile

初田 直美Naomi Hatsuda

東急株式会社
人材戦略室 人事開発グループ

2003年、東急電鉄株式会社(現:東急株式会社)に新卒で入社。社内ベンチャーで立ち上がったリテール部門でマーチャンダイジングなどを担当後、2011年より武蔵小杉駅再開発計画の商業エリアを担当。2014年より駅資産営業部にて駅ナカの開発に従事。2018年より人材戦略室へ異動。現在は新卒・中途採用を統括している。

1922年の創業以来、首都圏を代表する鉄道会社として交通インフラの整備や都市開発に取り組んできた東急株式会社。今や年間利用客数は11億人超と民鉄1位を誇ります。グループ会社は230社5法人に及び(2020年3月31日時点)、交通インフラ事業をはじめ、都市開発事業、生活サービス事業、リテール事業など多彩な事業を通じて「街づくり」を展開。そのすべてを統括するのが東急株式会社という位置づけです。とりわけ近年注力しているというのが、多彩な事業展開に欠かせない理系人材の採用です。同社がこだわる「総合職一括採用」の意義とは何か、そしてその成功の秘訣とは。人事開発グループの初田直美様にお伺いしました。

「総合職一括」で理系学生を採用する理由

まずは貴社の事業について簡単にご紹介いただきたいのですが、数ある鉄道会社の中での東急の位置づけはどのようなものでしょうか。

他の私鉄と比べ、鉄道サービス以外の事業の売上比率が高いことが当社の特色といえると思います。現在、東急グループでは230社、5法人にのぼる会社が、不動産、小売り、ホテルなど暮らしを支える多様な事業を運営し、トータルで「街づくり」を手掛けています。

2019年3月には鉄道事業を分社化されていますね。これも事業の多角化と関係があるのでしょうか。

鉄道事業を担う組織を「東急電鉄株式会社」として独立させると同時に、我々「東急株式会社」は東急電鉄を含むグループ全体の経営や成長戦略を担うことになりました。ニーズの多様化、テクノロジーの進化に伴い、これまで以上に多角的な事業を効率的に推進する必要があるという経営判断によるものです。

鉄道だけではなく「街づくり」を手掛ける東急、というビジョンがいっそう鮮明になったわけですね。入社後には多様な配属先があるわけですが、新卒採用においては職種別採用や文理別採用は行われているのですか?

いいえ、当社は「総合職」というかたちで一括採用を行っており、文系と理系も分けていません。ただし理系学生の採用率はかなり高く、例年4~5割の新入社員が理系出身です。

文系・理系の採用窓口を分ける企業も多い中、なぜ貴社では総合職一括採用を行われているのでしょうか。

東急は技術によって何かを開発する会社ではなく、あくまで技術を活用して「街づくり」にかかわるサービスを生み出す側の会社だからです。ですから理系の社員にも、特定の技術を極めていくのではなく、幅広い視野を持ち、専門性をサービス展開につなげるという働き方をしてほしいのです。視野を広げていただくためにも、当社では配属先も入社後に決まりますし、その後のキャリアチェンジの機会も豊富にあります。

理系学生のミスマッチを防ぎつつ、母集団を確保

理系学生の母集団形成においては、大学や研究室とのつながりを重視する企業が多いと言われます。貴社はどのような方針をとられているのですか?

実を言うと、当社はこれまであまり「研究室回り」を行っていませんでした。そろそろ本格的に実施しようと考えていた矢先、コロナ禍に入ってしまった次第です。ただし昨年はいくつかの研究室を対象にオンラインイベントを開き、少人数の若手社員と理系学生とでコミュニケーションをとる機会を作りました。

オンラインイベントはどのような内容だったのですか?

会社の説明をするというよりは、座談会形式で自由に話し合ってもらいました。学生の皆さんからの質問も積極的でした。理系の人材が入社後にどのような部署に配属され、どのような仕事をしているのかなど、仕事やキャリアに関するリアルな話ができ、有意義だったと思います。オンラインイベントを通じて興味をお持ちいただいた方には、その後のイベントやインターンシップにも参加いただきました。

それ以外で、理系学生との接点づくりのために実施された施策はありますか?

近年始めたのが、理系学生に特化したダイレクトリクルーティングです。最初はなかなか良いリアクションを引き出せず苦労したのですが、徐々にイベントやインターンシップへの誘導率も高まってきました。

ダイレクトリクルーティングを成功させるために、どのような点を工夫されたのでしょうか。

当社の事業や採用に関する情報をわかりやすくお伝えし、興味を持っていただけた方に絞ってアプローチをするようにしてからは、反応が良くなりました。つまり、東急の理系人材の役割は技術を突き詰めることではなく、多様な事業部でサービスを作り出すことだということをはっきり伝えたわけです。その結果、当社に興味を持っていただける理系学生の傾向もだんだんわかってきました。やはり研究職を選ぶタイプの方ではなく、研究以外の職種にも興味がある方や、社会に出てからいろいろなことをやってみたいという方が多いようです。また、そういう方のほうが当社で働く上でミスマッチがないと思います。

11コースにのぼる理系インターンシップで仕事のリアルを伝える

インターンシップも総合職一括で行われているのですか?

いいえ、2022シーズンのインターンシップは理系専用の別プログラムを実施しました。具体的に言うと、夏期のインターンシップは理系専用のコースを11、文理不問のコースを1つという内訳です。

11コースというのはかなり細かいですね。なぜそこまで理系専用のインターンシップに注力されたのですか?

当社には理系の専門性を活かして活躍できる部署がたくさんあります。鉄道部門がその筆頭ですが、例えば不動産部門では土木・建築や都市計画の知識が活かせますし、情報技術はどの部署にも欠かせません。インターンシップでは学生各自が興味を持つ分野の仕事風景を実際に見ていただき、理系社員がどのように活躍しているのかリアルに知っていただくことを目指しました。

貴社のインターンシップはすべてオンラインで行われているのですか?

全日程オンラインで実施したインターンシップもありますが、9日間コースではパソコンを参加者に配布し、社員同様の働き方を実際に体験していただきました。出社して現場に行く日もあれば、終日在宅で仕事をする日もある、といった感じですね。

在宅勤務も体験できるというのはユニークですね。

少しでも現実に近い働き方を体験してもらうことで、ミスマッチを減らしたいと考えました。

2022シーズンはオンライン採用2年目となったわけですが、2021シーズンを踏まえて改良された点などはありますか?

1年目の教訓として学んだのは、オンラインのインターンシップでは参加者が集中できる時間に限度があるということです。そこで、例えば秋に実施したインターンシップでは、従来3日間で実施していた内容を4日間に延ばしました。また理系の学生は研究などで忙しく、夏期しか十分時間がとれないという方が多くいらっしゃいます。そこで夏期インターンシップでは理系学生向けのプログラムを充実させ、冬期は文理不問でグループワークを行う、といった内容にしています。

今後、インターンシップではどのような点を改善したいとお考えですか?

インターンシップに注力する企業が増える中、学生の考えも変化しつつあると感じます。つまり1社のインターンシップに長期で参加するよりも、貴重な夏休みを活用していろんな企業のインターンシップに参加したいという方が増えているようなのです。そうしたニーズに応えるため、当社の夏期インターンシップも従来の2週間から1週間へと短縮したいと考えています。現場での仕事体験については、希望者に対してまた別のイベントで提供する予定です。

内定から入社までのフォローについてもお聞かせいただけますか。

当社では総合職一括採用を行っているため、希望の職種につけるのかという不安を抱いている理系学生へのフォローを重視しています。どの部署、職種につくかを確約することはできないのですが、どれぐらいの確率でどの部署に配属されたかという過去の事例を開示し、納得の上でご入社いただいています。また、希望のキャリアを実現している社員との面談をセッティングすることで、疑問を解消してもらえるようにしています。

懸念点もしっかりと払拭されている、戦略的な採用方針だと感じました。最後に、今後の採用ビジョンについて一言お願いします。

これまでも東急は、毎年様々な企画を考えながら採用企画を改善してきました。今後も他社の動向をいち早くキャッチしながら、新しい取り組みにチャレンジしていきたいと思います。

※所属・内容は取材当時のものです


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