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Interview

徹底したストレスチェックを軸に、社員の心を守る。
ニチレイが目指す健康経営の在り方

Published on 2022/04/28

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Profile

酒井 麻路Asaji Sakai

株式会社ニチレイ
人事部 ニチレイ健康推進センター
副センター長

1989年入社、営業事務職として九州支社勤務。2001年総合職にキャリアチェンジし本社経営企画部へ異動。分社化後事業会社管理部門、2010年よりニチレイ人事総務部門で採用、教育、労務等を経験し、2019年より現職。

金澤 小也香Sayaka Kanazawa

株式会社ニチレイ
人事部 ニチレイ健康推進センター
保健師

看護師、行政非常勤保健師として勤務の後、「働く世代の健康管理に携わりたい」との希望から、2018年ニチレイに入社。人事総務部ニチレイ健康推進センターに保健師として配属。健康経営の推進に携わり、メンタルヘルス総合対策担当を担っている。

冷凍食品メーカー最大手・ニチレイグループは2016年より「グループ健康管理基準」を策定し、健康経営への取り組みをスタートしました。とりわけ同社が注力しているのが「メンタルヘルス総合対策」です。セルフケア、ラインケア、産業保健スタッフによるケアを組み合わせることにより、メンタル不調の予防から復職支援までトータルにサポートする体制を整えました。ニチレイグループが歩んだ「健康経営」実現への道、そして今後の展望について、人事部 ニチレイ健康推進センターの酒井様と金澤様にお話しいただきました。

「グループメンタルヘルス方針」策定の経緯

貴社では「健康経営」の一環として、メンタルヘルス総合対策に対して非常に注力されていると伺いました。どのような背景、理念に基づいてこのような活動を展開されているのでしょうか。

酒井:
株式会社ニチレイは、2005年に持株会社制に致しました。これに伴い、従業員の健康管理の責任主体が不明確となり、従業員の疾病を事由としたさまざまな健康課題が継続的に発生するようになったのです。「このままではいけない。働き甲斐のベースは従業員の健康である」と経営トップが判断したのが2015年。健康経営に取り組む方向に経営の舵が切られました。

健康経営の開始にあたって、まずどのようなことに取り組まれたのですか?

酒井:
2016年にグループ健康管理基準が策定され、健康推進グループを設置、グループ各社に健康推進を担当する従業員を任命するなど、組織的に体制を整えました。

金澤:
同じく2016年4月には、健康経営への理念を示す「ニチレイグループ健康宣言」も制定しました。“「おいしい瞬間を届けたい」、その想いを大切に、ニチレイグループで働く一人ひとりの健康づくりに取り組みます”というものです。この宣言を実現するために、定期健康診断・事後措置の徹底、全国の産業保健体制の整備、ヘルスリテラシーの向上、そしてメンタルヘルス総合対策を重点施策に据えました。尚、2018年には、健康推進グループをニチレイ健康推進センターへ改組し、グループ全体での取り組みとしてより一層日々の業務に取り組んでいます。

健康経営の開始にあたって直面された課題などがあれば、お話しいただけますか?

酒井:
定期健康診断をはじめとしたフィジカル面の施策は着実に根付きました。一方、メンタルヘルスについては各事業会社で取り組みを進めているものの、グループ全体を対象とした施策は整っていない状況でした。そこで2021年度、

(1)ストレスチェックの実施

(2)教育研修並びに情報提供

(3)ニチレイグループ内外の相談体制整備

を柱とした「グループメンタルヘルス方針」を策定いたしました。

「グループメンタルヘルス方針」をもとに、どのように具体的な施策を展開されたのでしょうか。

酒井:
まず、以下のような概念図を作成しました。

画像1

「セルフケア」「ラインケア」「産業保健スタッフによるケア」「事業外資源によるケア」という4つのケアを、一次予防から三次予防という視点で実施することにより、「支援の隙間」が生じないことを目的としています。

非常に充実した内容ですね。

酒井:
ありがとうございます。当社のメンタルヘルス総合対策の特徴は、ストレスチェックを起点とし、メンタル不調者への対応だけではなく、セルフケア、ラインケア、職場でのコミュニケーションの活性化などを含めた、心の健康づくりを推進する点にあります。

ストレスチェックを軸としたメンタルヘルス総合対策

ストレスチェックに関する施策は、どのように行われているのですか?

金澤:ストレスチェックに関する施策としては、

(1)高ストレス者対応の充実

(2)集団分析結果を活用した職場環境改善の促進

という2つを軸に展開しています。まず、高ストレス者対応については、高ストレス者に該当された方が面接指導や保健師相談を活用し、メンタル不調が生じる前、悪化させる前にセルフケアいただけるよう、面接指導に関する正しい情報の提供や、受けやすいフローや書式の整備、オンライン面接指導の導入を行いました。

面接指導などの制度を用意するだけではなく、社員が利用しやすいよう配慮しているのですね。

金澤:
はい。社員が相談しやすくするため、面接指導は原則的に外部の医師ではなく、社内の産業医が行っています。これにより、面接後の業務配慮も職場に適したかたちで実施しやすくなると考えているほか、医師面談に抵抗のある方には保健師面談を提案しています。今年度は保健師面談を利用される方が増え、昨年度よりも約1.5倍、高ストレス者に該当された方からご相談いただけました。

続いて第二の主要施策である「集団分析結果を活用した職場環境改善の促進」についてご説明いただけますか?

酒井:
こちらの施策については、大きく3つの取り組みを行っています。まず、集団分析レポートと併せて、自社内でも詳細分析を実施しています。ニチレイでは2018年よりストレスチェックツール「Co-Labo」を導入しており、ヒューマネージ社に作成いただいた集団分析レポートを活用しているのですが、この分析レポートに加え、自社内でも詳細分析を行い、職場環境の背景や産業保健スタッフへの相談状況を加味したフィードバック資料を作成しています。

金澤:
ここで作成した資料は、各事業会社と共有してフィードバック会を行い、職場環境の改善について話し合います。これが2つ目の取り組みである、各事業会社へのフィードバックです。会議には、人事管理部門など、職場環境改善が可能な職務の方に参加を依頼しています。各事業会社からは職場の詳細情報が伝えられ、健康推進部署からはグループ全体の健康経営から見た意見、保健師からは健診結果や相談状況を踏まえた意見が出されます。このような多職種連携により、部署単位だけでない、会社単位の施策を検討することにもつながると思います。

酒井:
そして3つ目が、職場環境改善の支援です。まず「重点アプローチ部署」と認定された部署に対してヒアリングし、人事管理部門・上長と連携し働きかけを行います。同時に、職場環境が改善した部署に対してもヒアリングを行い、グッドプラクティスを全社に展開しています。

まさにグループ全体が一丸となってメンタルヘルス対策に取り組まれているという印象です。ちなみに、分析結果からメンタルヘルスに関する傾向や課題は明らかになりましたか?

金澤:
ニチレイグループ全体の2021年度の結果では、30代、40代の高ストレス者率が高く、中間層からマネジメント層のストレス負荷が懸念されることがわかりました。また、性別では女性に比べ、男性の高ストレス者率が増加していますので、この層に対する重点的なアプローチを実行していければと考えています。

セルフケア、復帰・復職支援、社外資源の活用も積極的に展開

メンタルヘルスのセルフケアについては、どのような取り組みを行われていますか?

酒井:
今年度より、グループの全従業員を対象としたオンラインセミナーおよびeラーニングを開始いたしました。実施初年度のため、どちらも基本知識の習得を目的にし、多くの従業員に受けていただけるように、オンライン開催で複数実施しています。

従業員からの反響はいかがでしたか?

金澤:
セミナーには400名以上の方にご参加いただき、「有益だった」との多くの声をいただきました。eラーニングも90%以上の方に受講いただいています。そのほかにも、産業保健スタッフによるケアを行っています。

産業保健スタッフによるケアの主な目的はどのようなものですか?

酒井:
復帰・復職支援です。従業員が1週間以上の診断書の伴う長期お休みに入る段階で、産業保健スタッフに情報いただけるよう、各社人事管理部門へ依頼しています。復帰・復職の際には、原則的に産業医面談を行い、復帰・復職プランを作成するフローとしています。

金澤:
産業保健スタッフの周知は、社内のイントラネットやポスターなどさまざまな方法で行っており、メンタルヘルスに関する相談件数も大きく増加しています。ただし復帰・復職フローはまだ十分に浸透しておらず、復帰後に再度お休みが必要となる従業員もいるという課題があります。今後もフローの周知に努めていきたいです。

貴社では社内のメンタルヘルス支援体制が充実していますが、事業外資源についても積極的に活用されているのですか?

酒井:
もちろんです。厚労省のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」や、EAP(従業員支援プログラム)業者情報など、会社外のメンタルヘルス関連情報も、社内イントラネットや社内の健康通信などで発信しています。

金澤:
新型コロナウイルスの感染拡大期や、自殺報道があった後など、メンタル不調者が増加する恐れがある際には、状況に応じて不定期にも発信するようにしています。

最後に、今後の取り組みについてもご紹介いただけますか。

酒井:
まずは、ストレスチェック結果活用の促進に取り組みたいと考えています。ストレスチェックに関する情報提供・周知を継続するとともに、高ストレス者の医師面接指導の利用率を高めるため、より相談しやすいシステムやフローの構築を検討していきます。また、ストレスチェックの側面からだけではない、ワーク・エンゲージメントやプレゼンティーズムを取り入れた分析も必要だと思います。

金澤:
メンタルヘルス知識のさらなる向上も、重要な課題の一つです。すべての従業員が情報に触れられるよう、機会創出と継続的な情報提供を行っていきます。

酒井:
加えて、復帰復職支援の拡充も重要ですね。現在ニチレイでは、復帰・復職基準や、復帰復職プログラムの導入も含めたフローの整備を進めているところです。引き続き、各事業会社、担当部署、産業保健スタッフと連携し、ニチレイグループの働き方に適したメンタルヘルス総合対策をつくり上げていきたいと思います。

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