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「コミュニケーション能力」の変容――これからの時代、成果につながる能力とは
属性、価値観、働き方……さまざまな点で多様化が進んでいるいま、組織で仕事をする際に求められる「コミュニケーション能力」は、以前とは異なるものとなっています。今回は、これからの時代に必要とされるコミュニケーション能力とは?を考えます。
“協調性”から“シナジーを生む力”へ
採用選考において「コミュニケーション能力」は、最も重視されるポイントのひとつです。日本経済団体連合会が会員企業におこなったアンケート調査では、選考にあたって特に重視した点として、「コミュニケーション能力」が16年連続の第1位となっています。このように、コミュニケーション能力は昔も今も重視されていますが、その意味は、時代とともに変わっています。
以前は、コミュニケーション能力の高い人=協調性の高い人を指していました。ダイバーシティが進む前、国内の競争のみに終始していた時代は、人に合わせられることは、同質性の高い組織でスムーズに仕事を進めるうえで一定の効果があったと考えられます。しかし、ダイバーシティが進み、企業がグローバルな競争にもさらされているいま、人に合わせるだけの協調性では、成果を生み出すことはできません。さまざまな強み・特徴をもつ人が集まるチームで、1+1=2ではなく、1+1=3にも5にも10にもできるシナジー(相乗効果)を生む力――「チーム・コミュニケーション」が、これからの組織で働くうえで求められる「コミュニケーション能力」なのです。
チーム・コミュニケーションは、「I'm OK.」と「You're OK.」
では、チーム・コミュニケーション(チームでシナジーを生み出す力)とは、どのようなものなのでしょうか。
心理学の知見にもとづく研究により、チーム・コミュニケーションの高い人材は、「自尊」と「他尊」が高いことが明らかになっています。「自尊」とは、「I‘m OK.」のこと。自分の価値を認めようとする行動傾向を指します。自己を肯定し、「自分にはこれができる」という信念を持って行動することで、周囲の人が「この人と一緒に仕事を進めたい」と思い、ポジティブに協働することができます。
もうひとつの「他尊」とは、「You‘re OK.」のこと。他者が持っている、自分とは異なる強みを認め、他者にメリットを与えようとする行動傾向を指します。チームにおいて、互いに違った強みを持った者同士が協働していくためには、自分の強みを相手に伝えるだけでなく、「相手は何ができて、どんなことが強みなのか」「相手は何を求めていて、どうしてほしいと思っているのか」を正確に理解できる力が大切です。
チーム・コミュニケーションは、「自尊」と「他尊」のバランスが取れていることが大切です。この2つのバランスが取れていない場合、チームでシナジーを生む阻害要因となる恐れもあります。
I‘m OK. 《高攻撃性》 |
I‘m OK. 《チーム・コミュニケーションが高い》 |
I‘m not OK. 《高孤立性》 |
I‘m not OK. 《高服従性》 |
「チーム・コミュニケーション」を安定して発揮するために
チーム・コミュニケーションの高い人材は、そのときどきの状況に応じてシナジーを生む関係を結び、成果につなげることができます。「自尊」「他尊」がカギとなることは前述の通りですが、安定した「自尊」「他尊」には、それぞれポイントがあります。
安定して高い「自尊」感情を持つには、自分の強みを客観的に認識することが必要です。「自分にはこういうことができる、得意だ」という事実を正確に捉え、周りにもそれを伝える姿勢が、自分を肯定することにつながります。同様に、安定して高い「他尊」感情を持つには、相手の言葉や態度などをしっかり聞き取り、事実ベースで正確に把握することが必要です。自分の強みも、相手の強み(求めていること)も、事実ベースで正確に把握することがチームでシナジーを生み出す基本となります。
“傲慢”と“取り入り”との見分け方
「自尊」は、自分の価値を認めようとする傾向ですが、「傲慢」とは全く別のものです。「自分にはこれができる」は「自尊」ですが、「自分にはこれができる。だからほかの人は自分に従うべきだ」は「傲慢」です。大きな違いは、「自尊」は絶対的な感情であり、「傲慢」は人と自分を比べた相対感情です。ほかの人が成功したときに、「自尊」の高い人はその成功を素直に喜べますが、「傲慢」な人は自身の立場が脅かされるように感じて、「あの人はたまたまタイミングがよかっただけだ」などと批判します。
同様に「他尊」とは、他者の強みを認め、他者にメリットを与えようとする傾向ですが、「取り入り」とは全く別のものです。「他尊」は、相手の存在を認め、相手にとってのメリットを考えていますが、「取り入り」は、お世辞を言って取り入ることで自分にメリットが返ってくることが目的です。実は相手を認めてはいないし、相手ではなく自分のメリットを考えています。
“傲慢”も“取り入り”も、チームでシナジーを生み出すことを阻害します。混同せず、正確な見極めが必要です。
まとめ
社会や組織の変化に伴い、「コミュニケーション能力」の意味も変わっています。これからの時代の「コミュニケーション能力」である、チーム・コミュニケーション。採用選考でその人のチーム・コミュニケーションを確認するには、適性検査の結果をもとに面接で行動事実を確認する方法などがあります。
ダイバーシティが進み、企業がグローバルな競争にもさらされているいま、チーム・コミュニケーション=チームでシナジーを生む力は、採用の場面はもちろん、現有社員が組織で力を発揮し続けていくためにも必要と言えそうです。
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