HR INFORMATION
2021新卒採用傾向と対策(前編)
いわゆる“新卒採用スケジュール”については、2021年春入社に続き、2022年春入社についても「広報活動開始:3月1日以降、採用選考活動開始:6月1日以降」の現行ルールが維持される見込みとなりました(2019年10月30日「就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議」より)。
とはいえ、売り手市場が続き、企業にとっては厳しい“採用氷河期”が続くなか、求める人材を確実に採用するために、新卒採用は「早期化」「長期化」していくものと考えられます。今回はこれらの背景や傾向をふまえた現在の採用マーケットの特徴をまとめるとともに、今後の採用活動において欠かせない「採用マーケティング」の考え方に基づく今後の施策についてご提案いたします。
テクノロジーの活用と、潜在層への“接点強化”がカギ
現在の新卒採用には、大きく3つの動きがみられます。
特徴① HR テクノロジーの潮流
人事関連業務を最先端のテクノロジーを使っておこなう「HRテクノロジー」が、大きく拡がりをみせています。なかでも人材データを活用し、要因分析・予測分析をおこなうピープルアナリティクスの領域が注目を集め、さまざまな分野での先進的な活用も耳にするようになりました。そして採用においても同様に、担当者の“ 勘”と“ 経験”によっておこなわれてきた従来のやり方ではなく、データ分析とそれにもとづく施策立案への関心が高まってきています。
特徴② 採用管理システムの普及
HRテクノロジーによる新たな採用ツールや手法が開発されるなかでも、応募から採用に至るまでの情報を管理できる「採用管理システム」は、いまや企業規模・業種を問わず、多くの企業が使っています。インターンシップ、ダイレクトリクルーティング、リファラル、新卒紹介……といった多様な接点を手間なく一元管理でき、応募者との接点をきめ細かく残すことが可能です。採用管理システムにより、企業は、自社の採用活動/応募者に関する精緻なデータを残すことができるようになったといえます。
特徴③ 接点のさらなる長期化、短期化
“採用氷河期”が続き、短期決戦の新卒採用活動では成果をあげることが難しくなっているなか、これまでのように大学3年生の夏頃から認知獲得の施策をおこなっていくのではなく、大学1、2年生も対象とした早期での取り組みが増えてきています。そこで重要となるのが、応募者になる前の学生との接点づくりと接点の維持です。採用活動は「応募者を集める」「合否を判断する」といった断片的なものではなく、応募者と企業が出会い、理解を深め、志望度を高め、入社先企業として決断させ、入社に導く……という、応募者と企業の間のストーリーとして展開するものであり、そのあるべき姿を実現に向けた施策が重要となっていくといえます。
そして、採用マーケティングの実践へ
このような流れのなか、いま注目されているのが「採用マーケティング」という考え方です。
マーケティングという言葉にはさまざまな定義がありますが、わかりやすく「ものを売る仕組みをつくること(=人を購買行動に結びつけること)」とすると、採用マーケティングとは「ひとを採用する仕組みをつくること(=人を自社への入社に結びつけること)」となります。そのための一連の流れ――会社を知ってもらい(認知)→興味を抱かせ(興味・関心)→「この会社で働きたい」と思わせ(欲求)→入社に結びつける(行動)仕組みづくりこそが、採用マーケティングの基本といえます。採用活動はこれまでもよくマーケティングにたとえられ、事実マーケティングの最新の理論が数年遅れで導入されることがよくありました。実際に、この動きによって応募者全体に向けた一方的な情報提供(マス・マーケティング)→文系/ 理系など大まかな属性別の働きかけ(セグメント・マーケティング)→応募者一人ひとりに個別に働きかけるOne to Oneマーケティング、へと進化してきています。その視点で考えたとき、いま改めて採用活動がマーケティングにたとえられるのは、とても納得できます。「早期化」「長期化」する新卒採用では、よりマーケティングの視点をもって、自社の「採用活動」を組み立て、施策を講じていくことが効果的といえます。
まとめ
上記で挙げた新卒採用のトレンドは、2021シーズンでさらに深化することが予想されます。したがって、この状況に応じて「求められるようになったこと」と「可能になったこと」を自社の採用に落とし込み、採用マーケティングの考え方に基づいたPDCAを回していくことが重要になります。
具体的な施策としては、以下3点が挙げられます。
- 長期的なファンづくりの施策
- データ蓄積の新たな取り組み
- 「人」を投下するための戦略的な効率化
次回は、採用マーケティングを前提としたこれらの施策についてご紹介します。