HR INFORMATION
“集合しない”内定者研修。オンラインでおこなうポイントとは
シリーズ│内定者フォロー
求める人材を確実に入社につなげるためには、内定者フォローが欠かせません。毎年、各社工夫を凝らした内定者フォローがおこなわれていますが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、従来リアルでおこなってきた内定者研修をオンラインに移行する企業が増えているようです。今回は、オンライン内定者研修をおこなう際のポイントについて考えます。
<このシリーズの記事を読む>
・売り手市場における内定辞退の動向
・重視する要素に応じた、継続的な働きかけを。効果的な内定者フォローを考える
・内定期間のリテンション施策で、「納得感」を醸成する
内定者の迷いがなくなる3つのポイント
応募者優位のいわゆる売り手市場においては、複数社の内定を得る学生が多いため、内定辞退が増える傾向にあります。加えて、採用活動の早期化により入社までの期間が長くなっていることから、その間に「本当にこの会社でいいのだろうか」と不安になって内定を辞退したり、内定承諾後も就職活動を続け、内定式を過ぎたタイミングで他の企業に決めたりする学生も存在します。2021年卒対象の新卒採用は、新型コロナウイルスの影響でここ数年続いた売り手市場の潮目が変わり、内定辞退の傾向にブレーキがかかると思われますが、“優秀な人材”には売り手市場かどうかにかかわらず、多くの企業のオファーが重なることに変わりはありません。さらに、2021年卒予定の内定者は、Web説明会やWeb面接など、これまでの就職活動とは大きく異なるかたちでの就職活動を余儀なくされ、「一度も会社に訪問することなく内定をもらってしまった……」という戸惑いの声も聞かれる通り、迷いのある内定者も多いようです。
入社先企業に迷いのない内定者には、共通して以下の3点が見られます。
(1)自分自身を深く理解してもらって、内定したという実感がある
(2)入社先企業に対して、不安がない
(3)自分自身で、入社先企業を決めたという納得感がある
(1)自分自身を深く理解してもらって、内定したという実感があるというのは、たとえば「(入社を決めた企業の)面接は、基本的に個人面接で、他社に比べて時間をかけてやってもらった。自分を出し切れたと思える面接で、素の自分を見られて内定をもらえたのだから、大丈夫だと思った」「内定連絡のあと、人事の方が『●●さんのこういう点が、当社で活躍できると思いました』という話をしてくれた。一次面接~最終面接で話した内容をふまえてお話してくださって、自分でも納得できた」といったコメントに見られる実感で、選考中~内定後の個別の働きかけによってかたち作られるものです。
合同企業説明会やオープンセミナーなど、選考とは関係のない場での情報収集の機会が減ってしまったこと、採用活動が急遽オンライン化し、企業とのリアルな接点がなくなったことで、2021年卒予定の内定者は、(1)と(2)が不十分な状況にあるといえます。この点を念頭に、内定者との関係構築を強化しながら入社に導くまでのプロセスを設計することが、これまで以上に重要となりそうです。
オンライン内定者研修では、“事前準備”が効果的
内定者フォローの代表的なものが「内定者研修」です。内定者研修の成果のひとつは「内定者が会社をより深く知り、ともに働く仲間を知ることで、不安がなくなり、ポジティブな気持ちになる」ことです。それゆえ、これまで内定者研修は、実際に内定者が企業に赴き、“実際に会って話をする”“グループワークなどを通じて交流を図る”集合型のイベントとしておこなわれることが主でした。しかしながら、新型コロナウイルスの影響により、選考もインターンシップもオンライン化が急速に進むなか、内定者研修においてもオンラインの活用は“新しい常態”のひとつとして根付いていくものと思われます。
オンラインで研修をおこなう際は、オフラインとは異なるさまざまな工夫が大切です。「事前に機器や通信状況を確認する」は大前提として、具体的な例をご紹介します。
・リアルタイムで双方向型の研修にする
現有社員向けの研修等に使われるオンライン研修は、動画配信形式が一般的です。あらかじめ用意したコンテンツを社員が各自で学習する形式は「コンテンツを複数回利用できる」「講師を手配する必要がない」「受講者が好きなタイミングで学習できる」といったメリットが多くあります。
しかしながら、企業理解や内定者との関係を構築することが大きな目的である内定者研修においては、一方通行の配信型ではなく、会話やチャット機能での質疑応答をしながら進められるツールを利用した双方向型の研修が適しているといえます。オンラインであっても、「リアルタイムで参加者が参加していて」「企業⇔内定者、内定者⇔内定者の活発なコミュニケーションを促進する」プログラムであることが必要です。
・オンライン研修の密度を濃くする事前準備①
直接会えないオンライン研修の場合、事前準備に効果があります。ある企業では、グループワークの課題を事前に発表し、そのための基本情報を事前に動画で配信しました。加えて実施までの間、定期的に追加情報を配信し、内定者研修への期待感を高める工夫をしました。これにより、当日の議論が活発なものとなり、グループワークのアウトプットのレベルもあがり、内定者にとって達成感のあるものになったとのこと。グループワーク後に実施したオンラインの内定者懇親会も、想像以上に盛り上がったそうです。
・オンライン研修の密度を濃くする事前準備②
別の企業では、オンライン研修の実施に向けて、内定者限定のマイページコンテンツを公開しました。社内報の共有や製品開発秘話、PR戦略についてなど、選考中よりも一歩進んだ、“半分社員”である内定者だからこそ知っておいてほしいコンテンツを配信し、「この会社の社員になる」という意識や期待感を醸成してから研修に臨んでもらうことで、当日の積極性が高まったとのことでした。また、そのコンテンツに関して気になったことや疑問を事前に準備してもらい、コンテンツに登場した現場社員に回答してもらうコーナーも設けたそう。オンライン研修によりリアルな接点が減少するなかでも、選考から地続きのコミュニケーションを通じて内定者の意識を継続させ、関係維持に努めているといいます。
ほかに、「内定者から事前に質問を受け付け、内定者の“知りたい”ニーズの高い現場社員をアサインし、質問に回答してもらう」「オンラインでは研修中の反応が見えづらいため、短いスパンでQAを挟む」「グループワーク中も時間を刻んでアウトプットさせ、盛り上がる工夫をする」等の工夫をしているケースもあります。
まとめ
内定期間は、一連の内定者フォローを通じて、内定者に自社をより深く理解してもらい、働く場所の決断へ導く特別な期間です。内定者研修をはじめ、“発見”と“納得”のある一つ一つの施策が、「この会社でこの人たちと働くんだ」という期待感を育むことへ繋がります。“集合しない”内定者研修においては、従来のオフライン研修で意図する効果を可能な限り再現したうえで、オンライン研修ならではの工夫(細かいものも含め)を積み重ねていくことが大切といえそうです。