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Interview

求める人物は「IQより愛嬌」
「文藝春秋」の素顔を魅せる採用戦略

RECRUITMENT

Published on 2025/01/17

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Profile

山本 直樹Naoki Yamamoto

株式会社文藝春秋
総務部 次長

2010年に新卒入社。「週刊文春」編集部で2年間編集者を務めたのち、メディア事業部にて広告営業やブランドビジネスに従事。2023年7月より現職。総務・人事業務全般をマネジメントすると同時に、新卒・中途採用の担当者としても活躍中。

創業以来100年の歴史を誇る文藝春秋は、日本を代表する出版社として、芥川賞・直木賞の創設や、「週刊文春」や「Number」など出版史に残る数々の刊行物を世に送り出してきました。その存在は多くの学生に知られていますが、一方で「人並外れた知識がないと入れない」「堅苦しそう」といったイメージも抱かれやすく、入社のハードルが高いと感じられることも少なくありません。こうしたイメージを払拭し、社員の親しみやすい人柄や、多様なキャリア形成を可能にする柔軟なジョブローテーション制度について学生に理解を深めてもらうため、同社はインターンシップや採用サイトを通じた積極的な広報活動を展開しています。今回、「週刊文春」編集や広告営業など、多彩なキャリアを積んできた総務部次長の山本様に、採用に関するポリシーや戦略についてお話を伺いました。

求める人物像は「IQより愛嬌」

まず、貴社の事業について改めてご紹介いただけますでしょうか。

当社は、雑誌・書籍の刊行を中心に事業を展開している出版社です。多くの方には「週刊文春」や「文春文庫」といった紙媒体のイメージが強いかと思いますが、実際にはメディア事業として雑誌の広告コンテンツを販売するほか、「文春オンライン」「Number web」といったWebメディアの運営も行っています。近年では「週刊文春」「文藝春秋」といった雑誌のサブスクリプション化や、動画・音声配信といった新たなデジタル分野の開拓にも精力的に取り組んでいます。

長い歴史を持ちながらも、先進的なサービスを積極的に展開されているのですね。貴社ではどのような人材を求めているのかについても教えていただけますか。

当社では、いわゆる「求める人物像」を厳密に定義することはしていません。むしろ、同じような価値観の人材ばかりが集まっても、斬新で興味深いコンテンツを生み出すのは難しいと考えています。強いて条件を挙げるならば、「わからないことがあれば素直に尋ねることができる姿勢」を持つ人が理想です。学生の中には「文春に入るには、膨大な読書量や知識が必要なのではないか」と懸念される方も多いですが、実際には、知識以上に「詳しい人に教えてもらう力」が求められます。普段の採用活動では、こうした姿勢を「IQより愛嬌」という言葉で表現しています。

「愛嬌」というキーワードは、意外に思われる方も多いかもしれません。

おっしゃる通りです。芥川賞・直木賞といった文学賞や、硬派なスクープで知られる「週刊文春」などのイメージから、文藝春秋は堅苦しく少し近寄りがたい会社と思われがちです。しかし、実際の社内は部署にかかわらず柔らかい雰囲気があり、上下関係もフランクです。選考フローを通じて、こうした「本当の文春らしさ」を感じてもらうことが私たちの使命だと考えています。

さまざまなイベントで、リアルな社風を伝える

リアルな社風を学生に伝えるために、具体的にはどのような施策を実施されていますか?

当社では、学生とのコミュニケーション機会として、インターンシップ、会社説明会、「社員と語る会」の3つのイベントを重視しています。まずインターンシップでは、1dayのオンラインワークショップを通じ、さまざまな業務を疑似的に体験してもらっています。

また、会社説明会の次に実施する「社員と語る会」は、対面とオンラインの両方で開催しています。対面の場合は学生が興味のある3つの事業ブースを選んで訪問できる仕組みです。1ブースあたり30分程度をかけて各部門の若手社員が、業務やその魅力について直接語ります。

一日の間に複数の事業部の社員と話ができる仕組みは面白いですね。そこにはどのような意図が込められているのでしょうか。

当社の場合、特に小説や雑誌の編集者を目指す学生が多い一方で、広告企画や営業の仕事について知る機会が少ない方が多く見受けられます。また、編集業務も単に良い本を作るだけではなく、マーケティングの視点を持たなければならず、幅広い視野と知識が必要です。そのため、あまり知られていない業務についても包括的に理解してもらうために、複数ブースを回れる形式を採用しています。

実際に「社員と語る会」に参加した学生からはどのような反応が寄せられていますか?

編集者を志望する学生からは「編集の仕事がより具体的に理解できてよかった」との声が多く寄せられています。映画や小説などで描かれる編集者像とは異なる現実の業務内容に触れたことで、さらに志望動機が高まったというケースも少なくありません。また、Webメディアや広告事業に触れた学生からは、「広告代理店を志望していたが、文春でもやりたいことが見つかった」と新たな可能性に気づいてもらえた事例もあります。

社員の人柄や社風が伝わることには、どのような効果があるとお考えですか?

イベントでは、社員同士がチームで話をするように心がけています。例えば「週刊文春」の話をする際には、編集長と若手社員が登壇し、当社のリアルな社風が自然と伝わるように配慮しています。週刊誌の編集部というと上下関係が厳しいというイメージがあるかもしれませんが、実際には社長も含めて上司を「さん」づけで呼ぶフランクな会社です。こうした社員の自然体な姿から、当社のリアルな社風を感じ取っていただければと考えています。アンケートを取ると、「想像していたよりもフランクな雰囲気で驚いた」といった感想が必ず複数寄せられます。

Webコンテンツからも「文春らしさ」を発信

貴社では採用サイトによる採用広報にも注力されていると伺っていますが、どのような工夫をされていますか?

出版社である当社では、採用サイトの文章量を多めに設定しています。記事は「人」に焦点を当てたものと、「仕事」に焦点を当てたものに大別しており、社員紹介の記事では、先ほどお話ししたフラットな社風を伝えることを重視しています。また、仕事に焦点を当てた記事では、出版業界における「文春ならではの特長」を意識的に発信しています。

例えば、現在掲載されている「文學界」の編集長のインタビュー記事では、彼女がもともと「週刊文春」の記者であったことが紹介されています。「文學界」編集部といえば純文学の専門家が集まっているイメージがあるかもしれませんが、彼女のように他部署の経験を積んだ編集者も少なくありません。こうした経験が可能になるのは、当社にジョブローテーション制度があり、週刊誌の現場で得た知見を文芸誌編集に生かすといった柔軟性を重視しているためです。彼女のインタビューからも「文春イズム」が伝わってきます。

さらに、採用サイトでは他の出版社で発表が難しかった“宗教2世”の実録漫画を当社が出版した事例も紹介しています。この事例では、当社のジャーナリズム精神が象徴されており、漫画出版においても時事性や、社会的意義を重視する姿勢が示されています。これもまた文春ならではの魅力といえるでしょう。

文藝春秋らしい、読み応えのある記事ですね。学生の企業理解・仕事理解にも役立ちそうです。山本様は、現在の業務にどのようなやりがいを感じていらっしゃいますか。

学生との対話を通じて、こちらが学ぶことが多いと感じています。例えば、現代の若者がどのようなコンテンツに興味を持ち、どのような消費行動をしているのかという生の情報に触れることは、他の部署ではあまりない経験です。こうした新しい世代の価値観に触れることで、自分の凝り固まった考え方がほぐれるのを実感していますし、今後別の部署に異動した際にもこの経験が活かされるのではないかと期待しています。

最後に、今後の採用活動に向けた目標をお聞かせください。

出版社の人材、特に編集者の能力は定量化するのが難しく、当社では「IQより愛嬌」を基に多様な人材を採用してきましたが、今後はITスキルなど、より専門的なスキルを持つ人材も必要になってくると考えています。時代の変化に応じて、具体的なスキルを評価する採用指標の整備も今後の課題です。

また、タレントプールの導入も今後の施策として検討しています。当社は採用人数が少ないため、選考途中で不合格になる方も多いですが、その中には再びご縁があるべき素晴らしい人材も多く存在します。今後、タレントプールを活用し、当社が必要とするスキルを持った多彩な人材との関わりを増やしていきたいですね。

さらに、地方学生限定のオンライン説明会も開催予定です。大手出版社は首都圏に集中しているのですが、地方の学生は出版社でのアルバイト経験や社員訪問が難しく、情報収集に限りがあるのが現状です。例えば、地方大学出身の社員を集め「地方就活あるある」をオンラインで発信することにより、「自分も東京の出版社に応募してみよう」といった意欲を高める一助になればと思っています。


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