2007年に新卒入社。製造現場での8カ月間の実習を経て、複数の工場にて労務管理を担当。2014年より現職。現在は新卒採用、中途採用のほか、社員研修や女性活躍支援など幅広い業務に携わる。
内匠 智子Satoko Takumi
株式会社YKベーキングカンパニー
総務人事部 人事・能力開発課
2007年に新卒入社。製造現場での8カ月間の実習を経て、複数の工場にて労務管理を担当。2014年より現職。現在は新卒採用、中途採用のほか、社員研修や女性活躍支援など幅広い業務に携わる。
YKベーキングカンパニーは、全国のスーパーマーケットやコンビニエンスストアに食パン、菓子パン、洋菓子など幅広い「食」を提供しています。同社が採用において最も重視するのは「人柄のマッチング」。書類選考よりも圧倒的に面接を重視し、企業風土や社員の魅力を徹底して伝えることで、入社後も長く幸せに働ける人材を採用しています。さらに、内定者同士のつながりも強力にサポートすることで、定着率の向上にも成功。長きにわたり醸成されてきた企業風土と密接に紐づく、人情味あふれる採用戦略に迫ります。
まずは改めて、貴社の事業についてご紹介いただけますか。
当社はもともと、大阪を拠点とした製パン・フードサービス企業である神戸屋から製造販売事業を承継し分社した企業です。分社後、2023年3月末に山崎製パングループの一員となりました。神戸屋時代からご愛顧いただいている製品も引き続き製造しており、関西の“ソウルパン”と呼ばれる「サンミー」をはじめとするロングセラー商品も少なくありません。おかげさまで全国のスーパーやコンビニで好評いただいています。
採用ホームページでは「ともに、前へ。」というぬくもりのあるキャッチコピーが使われており、社員の顔が見えるサイト構成が印象的です。
会社として新しく生まれ変わった今だからこそ、これから入社する方々にはこの会社とともに社会人として成長していってほしい。そういう思いがこのコピーには込められています。私たちも「採用して終わり」ではなく、入社後にしっかり育成して成長してもらい、一人ひとりの人生を楽しんでほしいという思いで採用に取り組んでいます。
この採用サイトは、どのような意図で制作されたのでしょうか。
言葉だけでは説明できない会社の魅力や働く人の魅力を、写真やデザインといったビジュアルを使ってダイレクトに伝えることが、採用サイトの目的です。当社の魅力である「社員」をメインに打ち出し、働く人の顔や人柄が伝わるようにしたいと考えました。また、当社は2023年に新会社としてスタートしたばかりなので、新しい会社をともにつくっていこうというメッセージを伝えたいと考え、「ともに、前へ」という採用コピーを軸に据えたサイトになりました。
学生の皆さんからの反応はいかがでしょうか。
大半の内定者が採用サイトをよく見てくださっているようです。採用サイトに登場していた社員と社内で出会ったときには「あっ、採用サイトに載っていた方ですね! あの記事を見てこの会社に興味を持ったんです」といったポジティブな意見を耳にすることも少なくありません。
さらに貴社では人となりを重視し、面接を主軸とした採用を行っていると伺いました。
はい。当社では可能な限り多くの方とお会いするため、応募者の9割近くの方と面接を実施しています。心がけているのは、面接官全員が話しやすい雰囲気をつくるということ。学生を見極めるためには、まずは「素の姿」を見せていただくことが必要ですが、こちらが堅苦しい質問ばかりしていたら彼らも緊張してしまい、本当の姿を見せてもらえなくなります。例えば志望動機など定番の質問に対しては、皆さんあらかじめ準備しておいた原稿を読んでいるかのような回答が多く、そこから本当の人となりを知るのは困難です。もちろん当社にもいくつか必須の質問事項はありますが、それ以外の大半の時間は雑談のように会話を楽しんでいることが多いですね。自己紹介に含まれていた趣味、部活動、研究などの話の中から、興味を持ったことについて質問し、自由に話していただく。学生も自分が興味のあることを話すと自然に笑顔が出てきますし、そこから本当の姿も見えてくると感じます。
そのほかには、貴社の企業風土や社員の人柄を学生に伝えるため、どのような工夫をされていますか?
人事だけでなく、なるべく多くの社員と接点を持ってもらうことに注力しています。例えば営業職、生産職など職種別の仕事体験イベントには、各職種の先輩社員が複数名参加し、学生とコミュニケーションをとっています。私自身が就活生だったころ、人事の方は会社をアピールすることが仕事なので、人事の方の話を聞いても「本当かな?良い事だけ言ってないかな?」と疑ってしまう部分がありました。しかし、現場の社員の話は、リアルな声として聞こえます。イベント以外の場でも、チャンスがあれば学生と社員に話してもらうようにしています。例えば内定者面談のために来社してくれた学生に社内を案内して、実際の職場を見てもらったりもしますし、廊下ですれ違った社員を呼び止めて雑談をしたりもする。当社の社員は本当にフレンドリーなので、仕事中でも喜んで学生と交流をもってくれるんです。そういう社員たちの素の姿を見て、「年齢や職種が違っても、気兼ねなく社員同士が話せる雰囲気が良かった」といった意見をくださる学生も多いです。
社員同士の関係性の良さを見せるということは、入社後の不安を払しょくする上でも有効な方法ですね。
当社は本当に社員同士の仲がいい会社で、プライベートで有志のメンバーが集まって遊びに行くこともよくあります。部署や年次、職場が違う人たちが自由に集まり、友だちのように遊ぶのですが、他の会社に勤める友人に話すと驚かれますね。それ以外に社内のイベントもありますし、定年退職したOBの方々との交流もいまだに続いている。本当に昔から社員同士の仲がいい会社だったんだな、と思います。ただし、こういう社風が肌に合わない人にとっては、つらい環境ともいえるかもしれません。面談ではプライベートの誘いが多い企業風土についても正直に伝え、納得の上でご入社いただいています。
社員同士の関係性といえば、同期のつながりも重要と言われます。内定者期間に、同期のつながりを形成するために工夫されていることはありますか?
内定者期間には2~3回ほど研修会を開いて、会社と内定者が交流するだけでなく、内定者同士のつながりを深めています。例年、研修会の際には内定者同士が連絡先を交換し、自発的に親交を深めている様子で、これが入社に向けたモチベーションアップに役立っているようですね。最近では私たち人事も、内定者向けマイページを開設して自己紹介を書いてもらったり、ブログ機能を使って情報を共有するなどして、さらに内定者へのフォローを強化しています。例年、入社式のときにはすでに新入社員全員がすっかり仲良くなっているので、その後の定着にもつながっていると感じます。
貴社では、工場勤務の製造職の募集数も多いと伺っています。こちらについて何か工夫されていることはありますか?
当社の場合、大阪、埼玉、神奈川の4カ所に工場があり、「地元で働きたい」という方からの応募は比較的多いと思います。また、パンや洋菓子の製造は当社の事業の根幹を担うものですので、職種を問わず入社後は少なくとも半月は製造現場でパン作りを経験します。パンの製造工程を知らないことには、新商品の企画などもできませんし、営業として自信をもって商談することもできないでしょう。また、生産職についても、製造現場で経験を積んだ後には、生産管理や品質管理、材料仕入れなど幅広いキャリアがあり、そうした魅力も学生にはしっかり伝えています。当社では生産管理や製品開発など専門性の高い職種も文理不問で採用し、入社後に教育する体制をとっているので、興味を持ってくれた文系の学生からご応募いただくケースも多いですね。このような教育体制の中で、「パン製造技能士」という国家資格の取得支援も行っており、生産職だけでなく、営業も事務職も含めて6割以上の社員が資格を取得しています。
社風や仕事の魅力を総合的に伝えることで、入社後のギャップを徹底して減らしているわけですね。
社風に合った方にご入社いただいているおかげで、若手社員はみな先輩社員にかわいがられながら成長していると思います。
最後に、今後の採用活動に向けての目標や、挑戦してみたい施策についてお話しいただけますか。
YKベーキングカンパニーとして再スタートしたことは、当社にとってポジティブな変化ではありますが、学生からの認知度は神戸屋のころと比べると下がっていると感じます。新しい社名を広く認知してもらえるよう、動画コンテンツをはじめとする視覚的なコンテンツを拡充したいと考えています。また、会社説明会などのイベントも、普通に説明をするだけではどうしても飽きられてしまうので、ゲーム形式で参加できる説明会など、楽しみながら企業理解を深めていただけるようなイベントを企画してみたいですね。
Special Feature 01
人材データを蓄積し、その後の採用可能性につなげていく「タレントプール」。
新たな採用手法の実現方法を紐解きます。
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