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Interview

創業140周年を機に「グループパーパス」を発表。
SEIKOの未来を賭ける“革新・挑戦”の人材戦略

Published on 2022/05/13

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Profile

相模 咲子Sakiko Sagami

セイコーグループ株式会社
人事部

2012年に入社し、人事部へ配属。人材育成、ダイバーシティ推進等に携わり、現在は採用の主担当者として採用戦略の立案から推進まで手掛ける。ひそかな野望は、「将来社長になる人材」を採用すること。

世界に誇る腕時計メーカーであると同時に、電子デバイス事業、システムソリューション事業、クロック事業、小売り事業スポーツ計時計測事業といった多彩な事業を展開するセイコーグループ。2021年には創業140周年を迎え、一層の革新的な経営に向けた「グループパーパス」を掲げました。「これからのミッションは、SEIKOをよりよく変えていきたいというチャレンジ精神を持った人材を採用していくことです」と語るのはセイコーグループ株式会社 採用担当の相模咲子様。「複数の役員が二次面接から参加する仕組み」や「AIを活用したオンライン適性検査」など、新たな取り組みについて語っていただきました。

「グループパーパス」に基づき、人材戦略も一新

セイコーグループは2021年で創業140周年を迎え、新たに企業の存在意義を示す「グループパーパス」を公開されましたね。これは貴社の経営においてどのような意味を持つのでしょうか。

当社には従来「グループパーパス」というものは存在しなかったのですが、創業140周年の節目を迎えるにあたって策定することになりました。コロナ禍が象徴するように、現代は非常に変化の大きな時代です。こうした変化を乗り越え、成長を続けていくためには、グループ各社が事業に取り組むだけではなく、グループ全体が確かな存在意義を共有し、一丸となって戦っていかなければなりません。そうした想いを込め、全社員からアイデアを募集した結果、「革新へのあくなき挑戦で、人々と社会に信頼と感動をもたらし、世界中が笑顔であふれる未来を創ります。」というグループパーパスが完成しました。

素敵なメッセージですね。

ありがとうございます。当社グループは創業者である服部金太郎の掲げた「常に時代の一歩先を行く」という経営姿勢を継承し、革新と挑戦を重んじてきました。パーパスにある「革新へのあくなき挑戦」という言葉はそれを表しています。一方、「笑顔であふれる未来」という言葉は従来の企業理念にはなかった新しいキーワードです。ここには「正確な時」が象徴するSEIKOブランドの技術的・社会的価値に加え、人の心を動かし感動を生み出す企業を目指すというビジョンが込められています。

そうしたパーパスの実現に向けて、採用戦略はどのように変化するのでしょうか。

パーパスの実現のためには、セイコーが好きな人だけではなく、セイコーをよりよいグループに変えていくというチャレンジ精神を持つ、多様な人材を採用する必要があります。採用の手法も大胆に変革しなければならないと考えています。

経営陣・人事部が総力を結集し、選考の精度を追求

具体的には、どのような新しい施策を実施される予定ですか?

まずはエントリーシートを、応募者のチャレンジ精神を重点的に測れるようなものに再設計したいと考えています。「エントリーシートは参考資料」とする企業もあると聞きますが、当社では評価が偏るのを防ぐため、年齢・性別・役職の異なる複数の採用担当者がすべてのエントリーシートを読み込んでいます。そのうえで評価項目に沿って公正に点数をつけ、さらにディスカッションを行うことで合否を決めます。工数はかなりかかりますが、資質ある応募者を見逃さないために欠かせないプロセスだと考えています。

時間をかけてエントリーシートを作成する応募者の努力に、きちんと向き合われているのですね。

製品・サービスの“品質”へのこだわりはSEIKOの伝統であり、採用活動においてもやはり同じ価値観をもって臨んでいます。
さらに今検討しているのは、面接における「見極め」の強化です。当社では以前から、二次面接は人事部の役員が、最終面接は社長自らが担当してきました。グループ全社の方向性を決定する持株会社である当社は、採用人数も少ないため、その分マッチングに注力してきた経緯があります。しかし今後はさらに精度の高い面接を実現するため、二次面接に人事部以外の複数の役員も参加することを予定しています。

そこまで多人数の経営陣が選考に直接参加する企業は少ないと思います。人材の見極めが前進する一方、コストもかかりそうですが……。

おっしゃる通り、必ずしも効率的な方法とは言えません。しかし当社は社長をはじめ経営層が人材戦略や採用活動に対して非常に積極的です。調整は大変ですが、これが実現すれば、それぞれの部門が本当に必要としている、多様な人材の採用に繋がると考えています。

その他に、応募者の「見極め」や「マッチング精度の向上」のために注力していることはありますか?

定量的な情報として、適性検査はかなり重視しています。適性検査によってご本人も気づかれないような職務適性を持っていることが分かる場合もありますので、ご入社後の定着率を高めるためにもしっかり読み込み、面接で事実確認をするようにしています。

適性検査の結果と、採用した応募者の能力や人柄は一致していると感じられますか。

ありがたいことに、入社された方は皆さん、適性検査の結果通りに能力を発揮して活躍してくれており、その点でギャップを感じたことはありません。当社では内定者に対して適性検査の結果をフィードバックしているのですが、それを通して「今まで知らなかった自分の隠れた資質」を知り、入社後の仕事に活かしている社員も多いようです。社員からも入社前とのギャップに苦しんだという声は聞かず、対象者自体は少数ですが入社三年以内の離職率は0%となっています。

人事担当者として、学生の味方でありたい

「SEIKO TIME DESIGN ACTION」マスコットキャラクター 「UNI2031(ユニにーまるさんいち)」

選考の質を高める施策に注力されていることも含め、貴社の採用活動は学生に対して非常に誠実であるという印象を受けます。学生をフォローするために何か工夫されていることはありますか。

昨年からアップデートした施策として先輩社員との座談会があります。最近は「カジュアル面談」とも言うそうですが、これはある程度選考が進んだ段階で、当社社員と学生が、選考と関係なくカジュアルに話し合う場を設けるものです。以前は一次面談前にのみ実施していましたが、昨年実施したところ好評でしたので、今年は本格導入しました。学生が複数名の場合はオンラインで行いますが、お一人の場合は本社にお越しいただき、感染症対策を十分行った上で、お互いリラックスした状態でお話をします。今回インタビューを受けているこの部屋は、社員同士が集い、自由に交流できるようにとつくられた「CROSS CAMP」というスペースなのですが、キャンプのような設えでゆったりお話できますよね。このような話しやすい場所で座談会を行うこともあります。

会社の雰囲気も学生に伝わりますね。選考中の座談会を開催する意図は何ですか。

当社の面接はすべて個人面接となり、学生一人ひとりの話をじっくりと聞くスタイルです。ご自身や当社についてさまざまな角度から分析し、自分なりの考えを持ち、それを伝えられなければ通過できません。特に役員による二次面接は、経営層が参加するという緊張感もあるのか、通過率の低さが課題となっていました。そこで、当社への理解を深めていただくため、選考中にも座談会の場を設けたわけです。ここでは、個々の学生が興味を持っている部門に合わせて社員をアサインし、直接その分野の社員の話を聞いていただきます。

カジュアル面談を実施したことによる成果はいかがですか。

参加者の志望度は、目に見えて上がりました。先輩社員から得た情報を咀嚼し、「自分がセイコーでどのように活躍するのか」という具体的なイメージを持てるようになった結果、最終面接ではその想いを自分の言葉で、熱意と説得力をもって語っていただけるようになりました。参加する社員には、学生を応援する立場として参加してほしい、そして当社の選考に役立つ情報をできるだけ与えてほしいと依頼しているので、先輩社員達は当社の面接を受けた当時の内容まで言及し、学生に最大限の情報提供をしています。学生に対して飾らず等身大で向き合う先輩社員の話は好評で、彼らのサポートがあってこその施策だと思っています。
また先輩社員を交えた施策を講じる中で感じるのが、当社の若手社員の挑戦が目覚ましく、そうした社員との交流が応募者にとってよい刺激になっていることです。

若手社員の挑戦とは、どのようなことですか?

例えば2021年には、セイコーグループ各社の若手社員が社会課題解決に取り組むプロジェクト「SEIKO TIME DESIGN ACTION」のマスコットキャラクターとして、「UNI2031(ユニにーまるさんいち)」を制作しました。UNI2031のコンセプトは「未来への挑戦」と「時間の多様性」。10年時計と10個の子時計で構成されており、子時計は一つひとつが違ったテーマの「時間」を表し、「時間の多様性」を象徴しています。このプロジェクトに関心を持ち、社員から話を聞きたいという学生も非常に多いですね。

まさにグループパーパスを象徴する、挑戦的な取り組みですね。今後の採用活動についての展望をお聞かせください。

グループパーパスを実現するためには、これまで以上に多様な人材、挑戦的な人材を採用していく必要があります。そのためには採用チームも過去の実績にとらわれず、新しいチャレンジを果敢にしなければならないと思います。私自身、これからどんな変化が待ち受けているのかドキドキしていますが、HRテクノロジーの導入も含め、積極的に新企画の準備を進めているところです。具体的な例を一つ挙げると、2022年からは試験的に適性検査にAIを取り入れ始めました。オンライン受検中にAIがカメラで監視を行い、不正を抑止するシステムです。試験導入が成功すれば、質の高い見極めを、学生の負担を強いることなく実現することができると考えています。

お話を伺って、改めて貴社の採用チームの、労力をいとわず応募者を大切にする姿勢が伝わりました。最後に、相模様が採用業務に対してどのような思いで取り組まれているのか、お話しいただけますか。

私が新卒で当社に入社した2012年は就職氷河期だったため、選考で学生にプレッシャーをかける企業が少なくありませんでした。だからこそセイコーで採用の仕事を始めたとき、「私は学生第一の姿勢を大切にしよう」と決心したのです。市況にかかわらず、就職活動中の学生は立場が弱く不安なものです。人事担当者として、学生を直接フォローすることはもちろん、面接官に応募者を紹介するときにも最大限彼らの魅力をアピールするようにしています。これからも学生に寄り添った採用活動に挑戦し続けていきたいです。

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