2006年、株式会社バンダイに中途採用で入社。労務全般、報酬等の実務及び制度設計を経て、採用、人材育成を担当。2016年、BANDAI NAMCO ASIA CO., LTD.(香港)に出向、Global HRとしてアジア8拠点をまとめるHK Head OfficeのHR責任者として活動。2018年に日本帰任、株式会社バンダイ人事部デピュティゼネラルマネージャーに就任。2019年、バンダイ人事部ゼネラルマネージャーに就任。
Published on 2021/07/09
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松原 誠Makoto Matsubara
株式会社バンダイ・株式会社BANDAI SPIRITS
人事部 ゼネラルマネージャー
2006年、株式会社バンダイに中途採用で入社。労務全般、報酬等の実務及び制度設計を経て、採用、人材育成を担当。2016年、BANDAI NAMCO ASIA CO., LTD.(香港)に出向、Global HRとしてアジア8拠点をまとめるHK Head OfficeのHR責任者として活動。2018年に日本帰任、株式会社バンダイ人事部デピュティゼネラルマネージャーに就任。2019年、バンダイ人事部ゼネラルマネージャーに就任。
勝野 由麗Yuri Katsuno
株式会社バンダイ・株式会社BANDAI SPIRITS
人事部 新卒採用担当
2014年、バンダイに新卒で入社し、ライフ事業部にて化粧品の企画開発を担当。2019年、ベンダー事業部に異動、カプセルトイの企画開発を担当。2020年人事部に異動、新卒採用を担当。
人気アニメ・特撮番組をモチーフとしたヒーロー玩具で圧倒的なシェアを誇る株式会社バンダイ。長年愛される「ガンプラ」をはじめとするプラモデルなど、主にハイターゲット向け商材に特化した新会社「BANDAI SPIRITS」と共に、日本を代表する玩具メーカーの一つです。強力なブランド力ゆえに学生からの応募数も相当数にのぼるため、個々の学生に割く時間は少なくなるのでは……と思いきや、なんと同社では「エントリーシートの提出者全員と必ず直接話す(新型コロナウイルス流行下ではオンラインで対話)」というユニークな施策を続けているといいます。人気企業でありながら手間を惜しまず学生と向き合う真意とは何か。そしてバンダイ・BANDAI SPIRITSにとって「人材」とは何なのか。人事部ゼネラルマネージャーの松原誠様と、新卒採用担当の勝野由麗様にお話を伺いました。
貴社の採用サイトのトップには、「夢・クリエイション」というコピーが大きく表示されています。これは採用コピーであると同時に、貴社のコーポレートコピーでもあるのですね。
松原:
はい。バンダイ・BANDAI SPIRITSは「夢・クリエイション」を企業スローガンとして掲げ、すべての社員が心から誰かの「夢」を創りたいという想いを持って仕事に取り組んでいる会社です。バンダイナムコグループでは幅広いエンターテインメントを手がけていますが、その中でも当社は玩具、食品、生活用品やプラモデル、フィギュア、景品など、さまざまな商品・サービスを企画・製造・販売しています。
やはり、キャラクター文化に精通した人が多く採用されるのでしょうか?
勝野:
いいえ、そんなことはありません。当社には玩具やアニメが大好きな人がもちろんたくさんいますが、そうではない人もいます。私自身もそこまでアニメなどに詳しいわけではありません。企業の採用においてはよく「求める人物像」が設定されますが、当社ではそうした固定的な人物像はあえて設けていません。
それでは、どのようなポリシーで採用を行われているのでしょうか。
松原:
バンダイ・BANDAI SPIRITSでは「同魂異才」という人材ポリシーを掲げています。つまり、似たような人を集めるのではなく、一人ひとり異なる、多彩な才能、性質を持った人を採用したいと考えているのです。キャラクターに詳しい人、子供が好きな人、面白いことを考えるのが得意な人は確かに必要ですが、そういう人ばかりでは会社は成り立ちませんよね。特別なアイデアが出せなくても、アニメに詳しくなくても、真面目に仕事に取り組んでくれる社員がバンダイにはたくさんいて、共に会社を支えてくれています。ただし、「同魂」の言葉が示す通り、仕事に込める「魂」だけは必ず同じであってほしい。
バンダイ・BANDAI SPIRITSが求める「魂」について、詳しく教えてください。
松原:
世界中に「夢、遊び、感動」を届けたい、という想いです。商品を生み出す企画マンはもちろん、PR、セールス、そしてもちろん私のように人事に携わる者も、役割にかかわらず「夢、遊び、感動」を届ける使命を背負っていると考えています。
貴社では「エントリーシート受付会」というものを開催されていますね。これはどういうものですか?
松原:
当社では例年学生の皆さまには「手渡し」でエントリーシートをご提出いただいています。これを行うのが「エントリーシート受付会」です。複数の大規模な会場を借りて、エントリー者全員にお越しいただき、社員に直接シートをお渡しいただく。その際、応募者から社員に、エントリーシートの見所やご自身の強み、バンダイ・BANDAI SPIRITSへの想いなどについて語っていただく時間を設けます。このときの会話を参考に、エントリーシートによる審査を行います。新型コロナウイルス流行期は、会場にお越しいただく代わりにオンラインで会話をする機会を設けました。
貴社の場合、エントリー数は膨大な数になるかと思います。リアル・オンラインにかかわらず、相当な労力がかかるのではないでしょうか?
勝野:
はい、もちろん人事部だけでは手が足りませんので、社員総出で対応しています。社員も学生とお話できることを楽しみにしており、快く協力してくれています。
最近はWebでエントリーを受け付ける企業が主流で、手書きのシートを義務づける企業でも郵送で受け付けるのが一般的です。なぜあえて「直接会う」ことにこだわるのでしょうか。
松原:
エントリーシートというのは、学生が企業への想いの丈を詰め込んだ、とても大事な書類です。しかし、書類だけでは伝わらないものがあるのも事実です。私たちは、当社を志望してくださる学生一人ひとりと向き合いたい、書類だけでは伝わらない学生の魅力や当社に対する想いをしっかりと受け止めたい、という思いを強く持っています。そのため、リアル・オンラインにかかわらず、一度は学生の皆さんとお会いすることにしています。
そこで必要となるのが、「同魂」ということでしょうか。
松原:
その通りです。私たちが書類選考や面接で最も重視するのは「気持ち」です。何でもいいので、「これがしたい」と思ったことに対してどれぐらいの情熱とエネルギーを注げるか。それを見たいのです。実はバンダイの伝統的な格言に、「仕事の報酬は仕事」というものがあります。これは、大きな仕事をやり遂げた人は「さらなる重要な仕事に挑戦できること」によって報われる社風を表しています。そしてそれを喜びとできる人こそ当社に向いています。
バンダイ・BANDAI SPIRITSが提供するのは「遊び」です。衣食住に関わる商品のように、自然にニーズが発生するものではありません。多くの人に心から必要だと思ってもらえなければ、当社の存在価値はなくなってしまうわけです。だからこそバンダイ・BANDAI SPIRITSの社員は誰もが「こんな仕事がやってみたい」と自発的に考え、発言し、行動する。ビジネスは常にスピード感とエネルギーに満ちていて、自ら存在感を発揮していける人でないと活躍できない。そういう魂の「原石」を持つ人を、私たちは採用したいですし、そのためには手間を惜しまず、学生と真摯に向き合わなければならないと考えています。
「応募者全員と話す」ことは、採用に対する真摯な想いの表れということですね。
勝野:
おそらく、応募者の中には郵送やWebのほうが楽という人もいるでしょうし、そのほうがエントリー数も増えると思います。しかし、それでも私たちは「直接想いを語っていただくこと」を大切にしたいのです。「エントリーシート受付会」は私が就職活動をした年から始まったのですが、「必ず社員に会って気持ちを伝えられる会社」は他になく、嬉しく感じたのを覚えています。
エントリーシート受付会を導入したことで、採用活動にどのような変化がありましたか?
松原:
エントリーシートがこれまでになく「体温」の感じられるものになり、文字と写真だけでは伝わらない情報も読み取れるようになりました。そしてもう一つ重要なことは、受付会は学生が会社を見る機会でもあるということです。採用というのは本来、企業と学生が対等に互いを評価するもの。直接話すことで相互理解が深まり、マッチング精度が劇的に高まりました。
勝野:
定量的な効果としては、当社は選考中の辞退率が比較的低いというデータが出ています。この理由の一つがエントリーシート受付会ではないか、と分析しています。ちなみに、入社後3年の離職者もごく少数しかいません。入社時に相互理解がうまくいっているおかげではないかな、と思います。
「エントリーシート受付会」の他に、学生とのコミュニケーションを強化するために心がけていることはありますか?
勝野:
バンダイ・BANDAI SPIRITSを知っていただく最初のきっかけとして、セミナーには力を入れています。「飽きさせないセミナー」を目指して毎年内容を刷新しており、新型コロナウイルス流行のずっと前から採用動画の制作にも取り組んできました。セミナーや採用動画、採用サイトでは、たくさんの社員が登場してリアルな仕事の話をし、魅力を伝えています。「やりたいことを見つけて夢を叶える場所」として当社を選んでほしい、という一心で毎年工夫をしています。
新型コロナウイルス流行を機に、採用のオンライン化が進んでいます。貴社ではどのように対応されていますか?
松原:
応募者の安全を第一に、セミナーや面接のオンライン化を進めています。しかし、できれば対面で会いたいというのが本音ですね。2021年新卒採用では、三次面接以降は万全の感染対策を行った上で、対面で行いました。そのために採用スケジュールは1ヶ月近く遅れることになり、学生が競合他社に流れるリスクもありましたが、それでも対面面接を優先しました。
対面の面接を重視する理由は何でしょうか?
松原:
先ほども申しあげた、企業対学生の相互理解を深めるためです。応募者にとっても、入社後に認識の齟齬が生じ、「思っていた会社と違う」と感じて苦しむのは不幸なことです。面接は学生が企業を選ぶ場でもありますから、しっかり当社を知った上で選んでほしい。そして前向きな気持ちで私たちの仲間となり、一緒に働いてほしいと考えています。
今後の採用活動についての展望や、個人的な抱負をお聞かせください。
勝野:
私はバンダイに入社後、化粧品の企画開発やカプセルトイの企画開発を担当し、2020年から新卒採用に携わっています。約1年間人事の仕事を経験して難しさを感じるのは、売上という数値で成功を測れる企画開発と違い、採用が成功したかどうかはすぐに判断できないということです。入社後、中長期的に社員を育成し、成長した姿を見ることで、初めてバンダイに合った人材かどうかがわかるのだと思います。今後も悩み、試行錯誤し、決して手間を惜しむことなく、学生ファーストの採用活動に打ち込みたいです。
松原:
私は人事部ゼネラルマネージャーですので、採用だけではなく育成、評価、労務などの人事業務にも携わっています。その視点からいうと、採用の在り方は企業の課題とワンセットに結びついており、単独で切り離せるものではありません。私が理想とするのは、経営者の視野を持って会社全体の課題を把握し、最適な人材戦略を考える人事。そのために私は、採用現場はもちろん、事業部の現場にも積極的に関わって多くの人に会うよう心がけていますし、彼らが長く活き活き働けるよう、「人ファースト」で尽力したいと考えています。
Special Feature 01
人材データを蓄積し、その後の採用可能性につなげていく「タレントプール」。
新たな採用手法の実現方法を紐解きます。
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