HR INFORMATION
採用活動にまつわるあらゆるデータを一元管理し、企業と応募者を結ぶプラットフォームである「採用管理システム」。かつては説明会や選考に関する手続きが主な役割でしたが、採用マーケットの変化にあわせ、目覚ましい進化を続けています。近年では、採用管理システムに蓄積されたデータを活用し、採用マーケティング=人を採用するしくみづくりに活用する動きが広まっています。今回は、採用管理システムの進化を辿るとともに、最新活用事例をみていきます。
採用管理システムの変遷
応募者専用のマイページを有した採用管理システムが登場したのは1998年、インターネット黎明期で、さまざまなものが紙からWebに移り変わる時代。プレエントリーをはじめとする企業と応募者間のやり取りが、システム上で行われるようになりました。会員登録が必要で、かつセキュアな環境にある採用管理システムはだんだんと広まっていき、エントリーシートの提出、説明会や面接の予約など、さまざまな手続きを効率化することが可能になりました。
次第に手続きのためだけではなく、コンテンツやメッセ―ジ配信を通じたコミュニケーションの場としても活用されはじめます。使いやすく、わかりやすいマイページを目指して企業はさまざまな情報を発信し、採用管理システムは応募者の志望度を醸成するためのプラットフォームとしての役割を担うようになります。さらに、会社説明会のオンライン化や面接のペーパーレス化、オンライン面接など、HRテクノロジーの加速に後押しされ、採用管理システムは進化を続けてきました。
そして近年ではピープルアナリティクスやマーケティングの潮流が採用領域へも波及し、採用管理システムに蓄積されたデータを活用したOne to Oneマーケティングの時代になりました。採用サイトやページを手軽に制作・配信できるCMS(コンテンツマネジメントシステム)や、データに基づく意思決定を支援するBI(ビジネスインテリジェンス)ツールなど、採用管理システムと一体型の機能もぞくぞく登場し、採用マーケティングに活用されています。
採用管理システム活用の最新事例
このように、日々進化する採用管理システムを用いて、企業は採用課題の解決に取り組んでいる企業が多くあります。ここでは、採用管理システムで採用マーケティングを推進する企業の声をご紹介します。
■媒体別の効果測定で有効母集団を増やした事例
「それまでは就職情報サイトからのプレエントリー者をExcel で管理していましたが、 採用管理システムの導入と同時に媒体との自動連携を実現。 応募者の重複削除をする必要もないため、圧倒的な業務効率化につながりました。それだけではなく、大学訪問などのその他の流入経路も含めた効果測定ができるようになったことで、自社と相性がいい就職情報サイトや効果的な時期を検討改善することができ、 手間を省きながら有効母集団を増やすことができました。」
素材メーカーA社
■選考フローの変更で歩留まり率を改善した事例
「経年で歩留まり率(採用フローの中で各過程に進んだ人数の割合)を分析しています。直近のシーズンでは、早期選考の歩留まりが悪かったことを受け、その層に対して、選考の間にリクルーター面談を行う特別フォローを追加。 選考中の不安や疑問を解消する機会になったほか、社員と直接話ができたことで、 志望意欲が向上するケースが多く、昨対で選考辞退率を改善させることができました。」
専門商社 B社
■タイムリーな状況把握で選考辞退を防止した事例
「当社は選考を複数クール回しており、もともとは全クールで同じフローを用意していました。しかし、採用管理システムで日々タイムリーに確認できる選考進捗分析をみると、時期が遅くなるにつれ選考辞退率が上がっていることが判明。選考シーズン後半は短期決戦であること、また学生も早く内定を出してほしいと感じていることを実感し、短期間の選考フローに変更したところ、辞退率が改善しました。シーズンの振り返りを待たずに、自社で課題の究明ができるのは採用管理システムのデータがあってこそです。」
金融サービスC社
■動画面接でマッチする人材を早期に見極めた事例
「オンライン下での選考が続くにつれ、 面接官から「母集団の質(マッチング))の低下」 が指摘されるように。そこで、書類選考時に採用管理システム一体化の動画面接機能を導入したところ、早い段階から応募者の雰囲気を掴めたことで効率的な見極めを行うことができました。また、当社は事業の特性柄、新しいことにも柔軟に対応できる学生を求めており、目新しい選考手法にもチャレンジしてくれる学生を集めることにもつながっています。」
食品メーカーD社
■多彩なコンテンツ配信でマイページログイン率を向上させた事例
「これまでマイページでのコンテンツをあまり配信していなかった当社ですが、ログイン率が低いことを課題に感じ、 CMS機能を使ってマイページ内に小さなオウンドメディアを制作。会社の動きや伝えたい魅力にあわせて、会社の日常を切り取ったブログのような記事を配信し、メッセージを通じてお知らせするようにしています。応募者からは 「会社のリアルな雰囲気が伝わってくる」「ここまでオープンに伝えてくれる企業は他になかった」などの声があがり、ログイン率や一人あたりのログイン回数も増加しました。」
不動産 E社
これらの試みに倣い、応募者とのひとつひとつの接点に対して、採用管理システムに蓄積したデータに基づきより良いアプローチを検討することが重要です。丁寧な接点設計に小さな改善を加えていくことが、実りある採用活動につながっていくものと考えられます。
まとめ
採用管理システムは、企業と応募者をつなぐプラットフォームであると同時に、データ活用や採用マーケティングを推進するための装置でもあります。この潮流は今後これまで以上に広まり、より活発化していくと考えられ、企業は自社が採用PDCAを回す指標をもち、改善を行っていく必要があると言えそうです。
さまざまな企業の事例を参考に、採用管理システムを活用したより良い採用活動の試みを実践していただければと思います。