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人材不足を背景に採用が高難易度化し、新たな採用手法が模索されている昨今。その中で関心を集めているのが、人材データを蓄積し、その後の採用可能性につなげていく「タレントプール」です。本記事では、タレントプールの基本や目的についてご紹介します。
タレントプールは将来の採用候補者を蓄積する「データベース」
タレントプールとは、才能を意味するタレントをデータとしてプールし、将来的に採用の可能性がある人材として、中長期的に関係を保持していくためのデータベースを指します。具体的な運用としては、データベースにプールした人材に、メルマガや記事、面談の案内などを行い、中長期的な情報発信等でつながりをもつことが基本となります。
近年、以下のような背景から、新卒採用・キャリア採用ともに、採用が難化していると言われます。
・少子高齢化による慢性的な人材不足
・人材の流動化でキャリア採用が活発化(特に若手人材の転職が当たり前に)
・専門家人材の不足(コロナ禍を経た飲食・サービス業界やDX人材など)
そのような中で注目されるタレントプールの考え方は、これまで通り採用募集のときにはじめて出会うのではなく、「一度接点をもった人材」を将来の採用候補者として活用するというものです。例えば、新卒採用の辞退者や最終面接の不合格者は、数年かけて自社の事業や業務にマッチするスキルや志向をもっている人材に成長することが考えられます。また、アルムナイ(退職者)が一度退職して再度戻ってくる“カムバック採用”の対象者や低学年キャリア教育で出会った若年層など、「一度接点をもった人材」はさまざまなシーンにいるため、このデータを蓄積し、ゆるやかな接点づくりを行いながら、将来の応募者につなげていくことがねらいとなります。
タレントプールでは、この「中長期的」かつ「ゆるやかな」接点づくりがカギを握ります。新卒採用の辞退者を例にあげて考えると、他社に入社した直後に自社がアプローチをしたとしても、転職意欲はまだ高くないため、アプローチをしてもすぐに採用応募につながるケースは少ないと言えます。しかし、数か月おきにメルマガなどで情報発信をしたり、半年後、一年後に連絡をすることで、採用につながる可能性はだんだん高まっていきます。すぐに転職する意欲がない人材とも、情報発信などを通じた接点を持ち続けることで、自社を「応募候補企業」として認識してもらうことが重要になります。
タレントプールのメリット
人材獲得競争が激化する時代における新たな採用手法として注目されているタレントプールですが、他にもさまざまな背景があります。ここでは、タレントプールが注目される背景とメリットとあわせてご紹介します。
・採用コストの高騰
→すでにある人材データを活用するから、コストを抑えて採用できる
近年採用をさまざまなチャネルや外部サービスがありますが、各社でキャリア採用が活発化する中、「質」「量」ともに十分な候補者を集めるためには、費用・手間ともに大きなコストがかかります。そのため、従来の方法のみで採用活動を行うことに懸念の声があがっていましたが、人材のデータベースを活用するタレントプールは、コストを抑えて採用活動を行うことができる点で注目を集めています。また、自社内で完結できるスピード感も、タレントプールのメリットとしてあげられます。
・企業と応募者のマッチングがこれまで以上に重要に
→一度接点をもった人材と接点を重ねることで、マッチング度向上を図りやすい
流動化する人材マーケットにおいては、辞めない人材を採ることも重要です。特に即戦力人材を求めるキャリア採用では、スキルや人物像など、自社とのマッチングがこれまで以上に重要になっています。タレントプールは、一度接点をもった人材データを蓄積し、それをもとにアプローチを行うため、企業は「どのような(経歴、スキルをもつ)候補者かをわかっている」、候補者は「どのような(事業、仕事、理念をもつ)会社かをわかっている」状態からのスタートになる点がメリットであると言えます。
さらに出会ってすぐに選考を受け、入社を決断するよりも、長期的にゆるやかな接点をもつ中でコミュニケーションを重ね、さまざまな情報を得てから選考に臨んだ候補者のほうが、マッチする人材の入社につながりやすくなります。このように、タレントプールはマッチング向上の側面からも注目を集めています。
・採用管理システムの広がり
→採用管理システムをタレントプール用のデータベースとして利用可能
採用活動のプラットフォームとして、応募者と企業をつなぐ採用管理システム。案内メールを一斉に配信できたり、選考の予約や進捗を管理できたりと、採用活動に欠かせないツールとして多くの企業に利用されています。最近では業務効率化にとどまらず、コンテンツの制作・配信を行えるツールやデータ分析ツールが一体化している採用管理システムも登場しています。
タレントプールは、「候補者のデータを一元管理する」「候補者に対してアプローチを行う」という点で、採用管理システムが搭載する機能をそのまま使って実現することができます。採用ご担当者が使い慣れている採用管理システムの新しい活用方法としても、注目を集めているのです。
まとめ
採用活動におけるデータの活用は、これまでは「分析」が主でした。他方、タレントプールは、データそのものに価値があり、「データを蓄積すること」自体が採用成果に向けた取り組みの第一歩となる点で、これまでのデータ活用とはやや視点が異なるのがポイントです。
タレントプールにいち早く取り組んでいる企業では、「コストを抑えて人材を採用できた」「新卒のときにはご縁のなかった人が、うちの会社にマッチする人材に成長していた」など、メリットを感じている声が多くあがっています。実際の取り組みには、タレントプールに特化したツールやシステムはもちろん、新卒採用やキャリア採用のインターンシップや選考に用いられる採用管理システムで、よりシームレスな運用を行うことも可能です。
採用が難化する時代の新しい採用手法・タレントプールは、今後もさらに広がっていくと考えられます。