新卒で東急エージェンシーに入社。営業やスタッフ部門を経験したのち、2014年に人事企画部に異動。現在は、新卒採用、キャリア採用、障がい者採用担当として、採用戦略の立案から実施までを行っている。
梶 真貴子Makiko Kaji
株式会社東急エージェンシー
コーポレート本部 人事局 人事企画部
新卒で東急エージェンシーに入社。営業やスタッフ部門を経験したのち、2014年に人事企画部に異動。現在は、新卒採用、キャリア採用、障がい者採用担当として、採用戦略の立案から実施までを行っている。
1961年に東急グループの広告会社として設立された、株式会社東急エージェンシー。現在では総合広告会社として、さまざまなマーケティング・ソリューションや体験価値を社会に創出していくことで、お客さまの事業成長につなげています。採用活動においては「留年採用」や「東京以外採用」など、広告会社らしいユニークな施策で注目を集めてきましたが、その目的は「多様な個性や価値観を持った学生を採用すること」だといいます。同社ではいかにして、一貫した採用テーマを具体的な施策に落とし込み、魅力的な採用ブランドを形成してきたのでしょうか。数々の企画を成功に導いてきた、人事企画部の梶様にお伺いしました。
貴社では留年を経験した学生を採用する「留年採用」や、学生がTwitterのハッシュタグを使って自由にアピールできる「ハッシュタグ採用」など、ユニークな施策を打ち出すことで確固たる採用ブランドを築いてきました。このような他社にないアイデアは、どのように生み出されているのでしょうか。
アイデアが生まれ、形になるプロセスは毎回異なりますね。例えば留年採用は、当社のプランナーの発案で生まれた施策で、現在も継続しています。留年というと一般に採用市場ではマイナス要素とされがちなのですが、留年した人のなかには、回り道をしてでも何かに夢中に挑戦し、やり遂げた人もいるのではないか。そのような仮説を立て、開始した企画です。
明確な意図に基づき、ロジカルに作り出された施策なのですね。「ハッシュタグ採用」についてはいかがですか?
ハッシュタグ採用とは、学生が考えたオリジナルのハッシュタグを当社指定のハッシュタグと一緒にTwitterに投稿してもらい、自己アピールをしていただくという企画です。設問が決まっているエントリーシート以外にも、学生が自由に自分を表現できる機会を提供したい、という想いから生まれた企画です。
SNSを有効に活用した、タイムリーな企画です。さまざまな企画の中で、特に梶様が思い入れの深いものは何でしょうか?
2021シーズンの施策として行った「東京以外採用」は、思い入れが深い企画の一つです。当社は東京のみで活動している会社だと認識している学生が多いのですが、実際には東京本社以外に北海道、関西、名古屋、九州に支社を構え、全国的に事業を展開しています。関東圏以外の学生ともっと多く出会いたい、という想いから始まったのが「東京以外採用」です。就職を機に上京した先輩社員を紹介する「上京物語」というインタビュー記事を公開したり、各支社のプロジェクトを紹介したり、希望者がUIターンできる「支社勤務希望コース」を設けるなどしました。
いずれも他社に例を見ないユニークな施策ばかりで、貴社に注目が集まる理由がわかります。
ありがとうございます。ただし、私たちはただ注目を集めるためにさまざまな施策を実施しているわけではありません。これらの施策すべてに共通しているのは「多様な個性や価値観を持った学生に出会いたい」という当社の人材への想いです。東急エージェンシーでは採用活動を「一緒に戦う仲間を探す」ことと位置づけ、若手のうちから主体的に周りを巻き込み、創意工夫して活躍できる人材を探しています。画一的な「求める人物像」はあえて定めていません。応募者には、自分なりの個性を、自分の言葉でアピールしてほしいと考えていますし、そのための場を用意するのが人事の役割だと思います。
貴社では毎年のように新たな施策に挑戦されていますが、2023シーズンではどのような取り組みを行われましたか?
2023シーズンで初めて実施した施策に「リトライ採用」があります。当社では選考時期が3期に分かれており、従来、一度不合格となった学生の再応募は受け付けていませんでしたが、一度受験し不合格となった学生が、次の期に再度受験できるという仕組みです。
リトライ採用を始めた理由を教えていただけますか。
再受験をしてくださる学生を受け入れることで、強い熱意を持つ学生に出会うチャンスが生まれると考えたからです。また、一度不合格になった学生も、不合格の理由を考えて自己分析や自己アピールをブラッシュアップすることで、二度目は合格ラインに達する可能性があります。導入にあたっては、採用フローや応募者管理が複雑化するという課題もありましたが、採用管理システムを細かく設定することで業務を効率化し、無事に実施することができました。
「一度不合格になった」という属性をポジティブに捉え直し、評価するという考え方には、「留年採用」にも通じる個性の尊重を感じます。その他、2023シーズンで注力した施策があれば教えてください。
2023シーズンのインターンシップは、本選考への転換率を高めることを目標に注力しました。特に工夫したのは、学生が参加しやすい日数設定と、最後まで深く興味を持っていただけるようなプログラム設計です。具体的には、参加者に課題を出し、別の日にその課題を発表してもらうという構成にしました。集中力が途切れにくくなったためか、途中離脱がなくなり、全員にしっかり広告ビジネスを疑似体験いただけたと感じています。また、インターンシップ終了後には個別面談も実施し、エントリーシートやインターンシップの内容に関するフィードバックを行いました。
近年は新型コロナウイルスの影響で採用のオンライン化が進んでいます。ここ数年は大学入学当初からコロナ禍の影響を受けた応募者と接することが増えていると思いますが、コロナ禍による傾向の変化を感じることはありますか?
一つの傾向として、就活生の画一化が見られると感じます。今はインターネットで検索すると、面接対策やエントリーシート対策などのノウハウがあふれており、それを利用している学生も多いのではないでしょうか。例えば当社の選考には自己アピール動画を提出するというフェーズがあるのですが、リクルートスーツを着ている動画が非常に多かったのです。自分らしさを表現することよりも、ネットから得た情報をもとに人と違うことを避け、「就活っぽい姿」を優先しているのでは、と感じました。
そうした風潮の中で多様な人材を採用するためには、いっそうの努力が必要となりそうです。一般にコロナ禍以降は学生と企業・社員が直接会う機会が減り、コミュニケーションが難しくなったといわれます。こうした状況に対して、工夫されていることはありますか?
例えばTwitterを活用した施策として「目指せ!社員109名プロフィール」と題した企画を実施しています。新卒採用アカウント内で当社の社員の写真つきプロフィールを次々とアップし、就活生に紹介するものです。社員の中には面接官を務める人も多く、面接で会ったときに「Twitterで見たことがある人だ」と少しでも親近感を持っていただければ、と考えて始めました。
多様な社員が活躍していることを伝えるという意味でも、有効な施策ですね。応募者とのコミュニケーションという点では、内定から入社までのフォローも重要といわれます。貴社では内定者フォローについてはどのような点に注力されていますか?
内定者に対しては一人ひとりに対して個人面談を行い、入社後にどのようなことをしたいか、ヒアリングするなどしています。また、選考のフィードバックもお伝えしており、選考プロセスにおいてどのような点を評価して内定を出したのか、丁寧にお話します。
自分がなぜ東急エージェンシーに選ばれたのか納得できますし、入社後に働いていく自信にもつながりますね。コロナ禍においては入社前に同期の内定者や社員とのコミュニケーションをとりにくく、入社前に不安を感じる人が多いと聞きます。その点については何かフォローをされていますか?
内定者向けの勉強会や内定者交流会を通して、内定者同士の交流を図れるようにしています。さらに今後は、適性検査のフィードバック面談を行っていきます。これは選考時に受けていただいた適性検査の結果を踏まえ、入社後のキャリアについて話し合うもので、学生の視野を広げる狙いから部長クラスが担当します。
選考のフィードバックは、企業と内定者の関係育成にも効果があると言われていますね。
さらに、入社1~2年目の若手先輩社員との交流会も、例年実施している施策です。特に地方から一人で上京する内定者にとって、社会人生活のスタートは右も左もわからない不安なもの。入社後に、顔を知っている先輩が一人か二人いるだけでも、安心感が全然違いますよね。同期とのつながりも大事ですが、気軽に相談できる年の近い先輩の存在も大きな心の支えになるはずです。
採用活動を通じたインナーブランディングにもつながる施策です。最後に、梶様の今後の展望についてお聞かせください。
今後は当社も、主観的な面接だけではなく、適性検査の客観的なデータをより活用しようと考えています。「当社の広告ビジネスとマッチする多様な人材と出会う」という目的を忘れることなく、これからも柔軟な手法に挑戦し続けたいと思います。
Special Feature 01
人材データを蓄積し、その後の採用可能性につなげていく「タレントプール」。
新たな採用手法の実現方法を紐解きます。
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