1993年に中外製薬株式会社に入社、人事部に配属。社員の健康管理・安全衛生等の労務管理業務を経て、採用業務に従事。その後、次世代リーダー育成に志願して成果を残し、再び採用チームにアサイン。現在は新卒採用の統括を担う。CPCC(米国CTI認定プロフェッショナルコーチ)、国家資格キャリアコンサルタントを取得しており、これらを活かして人財育成につながる独自の採用活動を展開している。
高橋 泰代Yasuyo Takahashi
中外製薬株式会社
人事部 タレントマネジメントグループ
課長
1993年に中外製薬株式会社に入社、人事部に配属。社員の健康管理・安全衛生等の労務管理業務を経て、採用業務に従事。その後、次世代リーダー育成に志願して成果を残し、再び採用チームにアサイン。現在は新卒採用の統括を担う。CPCC(米国CTI認定プロフェッショナルコーチ)、国家資格キャリアコンサルタントを取得しており、これらを活かして人財育成につながる独自の採用活動を展開している。
中外製薬株式会社は、がん領域の医薬品、および抗体医薬品の分野で国内シェアNo.1を誇る国内屈指の製薬会社です。2002年には世界有数の製薬企業であるスイス・ロシュ社と戦略的アライアンスをスタートしたことで、売上・営業利益共に飛躍的に拡大。この安定的な収益基盤のもと、より革新性の高い新薬の研究開発に集中投資できるようになりました。事業・採用の両面において製薬会社間で熾烈な競争が繰り広げられるなかでも、同社採用チームが掲げるポリシーは一貫して「製薬業界全体の認知向上、そして学生の成長機会につながる採用活動」だといいます。コロナ禍という異例の事態のなか、製薬業界の常識に挑む独自の採用戦略に取り組まれている、人事部の高橋泰代様にお話を伺いました。
まずは、高橋様の入社後の職歴について教えていただけますか。
1993年に入社以来、一貫して人事部に所属しています。社員の健康管理、安全衛生、保険関連業務といった労務管理に従事した後、採用チームに異動、新卒・キャリア採用に携わりました。その後、かねてより興味を持っていた次世代リーダー育成にアサインされ、数年前に再び採用チームに戻りました。現在は採用企画の立案・実施や採用チームのマネジメントを含めた新卒採用の統括をおこなっています。
人財に携わる業務を長年経験されてきたのですね。どのような点にやりがいを感じていらっしゃいますか?
特に人財採用の世界は変化が激しく、常に先を読みながら新たな企画を考え続ける必要があります。「変化」や「新しいもの」が好きな私にとってはそれがやりがいになっていると感じていますね。
ではあらためて、貴社について簡単にご紹介いただけますか。また、その事業内容に基づき、採用活動をどのように捉えていらっしゃいますか。
当社は医薬品の研究、開発、製造、販売、輸出入という一連の事業をおこなう製薬会社です。市販薬ではなく医療用医薬品を専門としており、がん領域の医薬品、および抗体医薬品の分野では国内シェア1位を維持しています。その事業経営の基点を成しているのが、「革新的な医薬品とサービスの提供を通じて新しい価値を創造し、世界の医療と人々の健康に貢献する」という存在意義(Mission)や、「患者中心」「フロンティア精神」「誠実」といった価値観(Core Values)。社会課題を見据えたこれらの理念に共感してもらうことが、人財採用において私たちが最も重視していることです。
高橋様が採用活動において大切にしているポリシーはどのようなものですか?
私に限らずグループ内で共有しているポリシーですが、「学生に成長できる機会を提供する」ことを大切にしています。当社に入社するかどうかに関係なく、「中外製薬に関わりを持って良かった・自分の成長につながった」と学生さんに思ってほしい。そのために説明会やインターンシップでは、当社のみならず製薬業界全般に通じる幅広い知識を学んでもらえるよう努力しています。
自社が良い人財を採用することだけを重視しているのではないのですね。
製薬業界は社会貢献性が高く、自己成長にもつながる魅力的な業界ですが、学生さんからの人気は必ずしも高くなく、特に当社のような医療用医薬品に特化したメーカーは認知度が低下しがちな現状があります。そうした状況を変えるため、業界の魅力を発信していきたいのです。たとえ当社とはご縁がなくとも、当社がきっかけで製薬業界に興味を持ち、別の製薬会社で活躍してくれたら嬉しく思いますね。
貴社では例年、業界でも例を見ないほど細分化された職種別採用に注力されていますね。
当社では大別すると「研究」「開発」「MR」という3部門で採用をおこなっていますが、各部門の中にも複数の職種があります。当社では全体の説明会、部門ごとの説明会に加え、それらの職種ごとの説明会も開催しています。そのため、説明会の数はかなりの数にのぼりますし、内容も多くの企業では踏み込まないような専門的なものとなっています。
なぜそこまで細分化、詳細化した説明会をおこなわれているのでしょうか?
製薬会社での仕事は多様かつ専門性が高いため、簡略化した説明では具体的な仕事内容を伝えられないからです。学生さんには、入社後に携わる仕事が具体的にどのようなもので、どのようなやりがいがあるのか、できるだけ理解した上で入社してほしいと考えています。
中外製薬の説明会を受ければ製薬業界のことが一通りわかる、という学生の声もあるそうですね。しかし、それだけたくさんの説明会を開くのはかなり大変そうに思えます。
採用チームだけではとても無理でしょうね。しかし当社は人事部と各部門の連携が非常に強く、採用企画も協働で作り上げる体制があり、そのおかげで毎年充実した活動が実現できていると思います。申しあげました通り製薬会社の仕事は専門性が高く、長年人事をしていてもわからないことはまだまだあります。各部門の協力なくして、採用活動はあり得ません。
2021採用の時期は新型コロナウイルスの流行と重なりました。貴社ではどのような対応をとられたのでしょうか。
まず、例年おこなっていた対面での説明会はすべて中止とし、オンラインライブ説明会に切り替えました。当社では例年よりも回数をかなり増やし、3月だけでも25回の説明会を開催しました。
なぜそれほど大幅に説明会を増やしたのでしょうか。
一般的にオンラインのコミュニケーションでは、学生さんとの距離を縮めにくいという課題があります。その分、頻度を上げてカバーし、中外製薬を近くに感じてほしいと考えました。
また、先ほどお話した、種別の説明会を開催することで、職種の理解促進に努めました。ライブで配信した説明会はオンデマンドでも閲覧できるようにし、それに加えて職種ごとの紹介動画も制作してマイページへアップしました。もちろんこれらのライブ説明会や動画コンテンツにも、各部門のたくさんの社員に出演してもらいました。とにかく中外製薬のことを知ってほしい、そして好きになってほしいという一心でしたね。
面接をオンライン化したことによる影響についてはどうお考えですか。
対面であれオンラインであれ、人の本質は変わらないと思います。実際にオンライン面接を実施して気づいたのは、全身が見えない代わりに表情は意外によく見えるということですね。また、オンラインだと距離を遠くに感じてしまうという傾向は確かにあるのですが、なぜか直感的に、距離が「近く」感じられる学生さんがいて、そういう学生さんは実際に当社に興味を持ってくれているとわかる。不思議な現象ですが、この点を研究すればオンライン上で効果的に「近づく」方法が見えてくるのかもしれないと感じています。とはいえ、やはり一度は直接会ってみたいという思いが、私にも内定者にもあるのは事実ですね。
また、オンライン形式は日時の自由度が高いので、面談がスピーディーに設定できるようになり、採用業務の効率も向上しています。学生さんの側でも移動の負担がなくなりますし、地方在住の方ともお話ししやすくなりました。双方にとってメリットが大きい点だと思います。
早い時期からスタートされてきた2022採用の取り組みについてお聞かせいただけますか。
まず、2020年8月にオンラインで夏期インターンシップを開催しました。オンラインではどうしても企業から一方的に学生に情報を伝えるかたちになりがちなので、そうならないよう工夫を凝らしたつもりです。具体的には、MR職インターンシップにおいて「自分が何を大事にしているのかという価値観を見出す」というミッションを設定したのです。そして、自分の大切にしたい価値観と、会社の価値観がどのように合致するのか、ディスカッションを通じて考えるというものです。
自社の“らしさ”を打ち出した素敵な企画ですね。どのような思いから取り入れられたのですか?
当社と学生さんとの価値観のマッチングを図るという目的はもちろんありますが、最初にお話しした「採用活動を通じて学生に成長の機会を提供したい」という意図もあります。グループワークを通じて自分の価値観を知るということは、これから就職活動を始める学生にとって役立つと思います。実際、参加者のアンケート回答でも予想以上に反響が多く、「今まで漠然と考えていたことがワークを通じて言語化でき、貴重な経験となった」といった声が多数見られ、とても嬉しく思いました。
しかし、インターンシップを8月に実施するというのは、製薬業界ではかなり早いように思えます。どのような意図があったのでしょうか。
今年については、製薬業界では秋以降にインターンシップをおこなう企業が多いようでしたので、学生の皆さんが製薬業界の情報を得る機会がないことで不安にならないように、できるだけ早期に開催したいという思いがありました。一方で、他の業界と同じスタートラインに立つことで、製薬業界全体の認知度を高めたいという気持ちもあります。
最後に、オンライン化が定着すると見込まれる今後の採用活動について、どのような展望をお持ちかお聞かせください。
やはりオンラインであっても「距離が近い」と感じられるコミュニケーションを模索しつつ、イベントを企画していきたいと考えています。当社はもともと学生の皆さんとのコミュニケーションを非常に重視しており、合否にかかわらず「中外製薬の面接を受けて良かった」と思ってもらえる選考を心がけてきました。これからも守り続けたいのは、学生の皆さんの成長につながる採用活動です。そして、一人ひとりの学生さんの成長にコミットするためには、愛が欠かせません。「中外製薬と出会えて新しい発見があった」と思ってもらえるよう、本気で向き合うことを忘れないようにしたいと思います。
Special Feature 01
人材データを蓄積し、その後の採用可能性につなげていく「タレントプール」。
新たな採用手法の実現方法を紐解きます。
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