2002年、記者として入社。金沢総局、大阪本社校閲センター、奈良総局、東京本社文化くらし報道部、ジャーナリスト学校(記者育成のための部署)を経て、2022年8月より現職。記者部門の採用を担当する。
RECRUITMENT
Published on 2024/07/05
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栗田 優美Yumi Kurita
株式会社朝日新聞社
コーポレート本部 人事部 採用チーム
2002年、記者として入社。金沢総局、大阪本社校閲センター、奈良総局、東京本社文化くらし報道部、ジャーナリスト学校(記者育成のための部署)を経て、2022年8月より現職。記者部門の採用を担当する。
國頭 真理子Mariko Kunito
株式会社朝日新聞社
コーポレート本部 人事部 採用チーム
2020年入社。2か月間の研修後、AGS総務サポート部で人材評価の運営や、福利厚生制度の運用を担当。2022年6月より現職。ビジネス部門の採用を担当する。
1879年の創刊以来、145年間にわたり日本のジャーナリズムをリードしてきた朝日新聞社。報道を通じて社会の在り方を問い続けてきた同社では、採用においても時代を先取りする革新に取り組んできました。近年は就活生の負担を減らすため、「イベントは授業のないときに実施」「エントリー時の性別登録は任意」「エントリーシート提出時は顔写真不要」「服装は本当に自由」などの新しい採用ポリシーを次々と打ち出しています。丁寧なオープンカンパニーや職種別インターンシップも相まって、記者からエンジニアまで幅広い職種を志望する学生から支持を獲得。取材を通じて見えてきたのは、朝日新聞社人事部ならではの人材ビジョンでした。
朝日新聞社といえば非常に長い歴史を誇る新聞社として知られていますね。改めて、貴社の事業についてご紹介いただけますか。
栗田:
おっしゃる通り、当社は長年にわたり新聞を軸としたニュースの発信を主事業として取り組んできました。学生もそれ以外の方も、「朝日=新聞」というイメージが圧倒的に強いと思います。しかし実は、新聞以外の事業にも幅広く取り組んでいるんです。
國頭:
例えば当社は展覧会の企画・運営を積極的に展開しています。美術や博物のみならず、絵本やアニメ、マンガをテーマとした企画も少なくありません。さまざまな媒体を駆使した広告ビジネスも当社の強みの一つであり、社内には数々の広告賞を受賞したクリエイターが多数在籍しています。
栗田:
新聞のデジタル化にいち早く取り組んできたのも朝日新聞でした。近年はウェブならではのビジュアルを生かしたコンテンツにも注力しており、優秀なエンジニアやグラフィックデザイナーが日々制作にあたってくれています。また、15分間ほどの動画でニュースを解説するYouTubeコンテンツ「解説人語」、お店などの最後の日に密着したドキュメンタリー「LAST DAY」も好評ですね。最近では膨大な新聞原稿の校閲履歴を学習させた文章校正AI「Typoless」をリリースしましたが、これも社内のエンジニアが中心となって開発したものです。
新聞社でエンジニアが活躍しているのは少し意外でした。
國頭:
新聞社の仕事というと記者のイメージが強いと思いますが、実際にはたくさんの職種があります。当社では「記者」「ビジネス」「技術」という3部門に分けた職種別採用を行っており、採用担当も分かれています。中でも私が担当しているビジネス部門は記者とエンジニア以外の職種をすべて含むので、仕事はかなり多彩ですね。新聞の販売戦略、デジタルコンテンツのプロモーションやUIUX改善、展覧会を中心としたイベントの企画・運営、グループの資産を活用した新規ビジネスのグロース、広告を通じたクライアントの課題解決、さらに財務などのコーポレート業務も含まれます。
新卒採用において、求める人物像はどのようなものでしょうか。
栗田:
よく質問されるのですが、多角的な事業をしているだけに人物像を定めるのは難しいです。もちろん学歴フィルターも設けていません。いろいろな才能や経験や性格を持つ人材が集まり、それぞれの強みを発揮して活躍するのが理想ですね。社内にはさまざまな政治的な考え方を持つ人がいますし、ジャイアンツファンもたくさんいます(笑)。
貴社の採用活動におけるポリシーを教えてください。
栗田:
私たちが採用活動で大切にしているポリシーは、採用サイトで公開しています。最も重要なことは、就活生の皆さんの負担をなるべく軽くし、公平な採用活動を行うこと。そのための具体的な取り組みとして、(1)イベントは基本、授業のないときに行う (2)交通費・宿泊費の補助 (3)エントリーシート提出段階では顔写真を求めない(無意識の偏見による誤った判断をなくすため) (4)服装は本当に自由 (5)ハラスメント防止の徹底 (6)障がいのある方への配慮 という6つのルールを設けています。また、性別や学歴による先入観を避けるため、マイページ登録時の性別回答は任意ですし、面接委員には大学・大学院名を伏せたエントリーシートを渡しています。
朝日新聞らしい、進歩的な取り組みですね。どのような意図や想いから、このようなポリシーが生まれたのでしょうか。
國頭:
現在の採用ポリシーが確立したのは昨年のことで、私たち採用担当者自身が就活時代に経験した理不尽な苦労がベースになっています。私が就活していた頃はオンラインイベントもほとんどなかったので、説明会のほとんどは授業を休んで参加するしかありませんでした。明確な理由もなくリクルートスーツを着なければならないし、真冬でもなぜかパンプスを履かなければいけない。学歴など自分の知らないところでフィルターがかかっているかもしれないということもストレスでした。そういうさまざまな負荷が重なり、じっくり自分に向いている仕事を考える余裕がなくなってしまったのです。
栗田:
私も大学時代は大阪にいたので、就活のたびに上京するのは経済的にも時間的にも大変なストレスでした。朝日新聞社は当時から交通費を出していましたが、そうではない会社も多かった。だからこそ、地方の学生にもできるだけ参加しやすいかたちにしたいという思いは今も強いですね。採用イベントのために授業を休ませることも、企業の姿勢として正しくないと思いました。
文字通り、学生の目線に立った改革だったわけですね。学生からの反響はいかがですか。
國頭:
顔写真なしのエントリーシートについては、部内外から「あまり効果が期待できないのでは?」という意見もありました。しかし蓋を開けてみると、応募者からは「写真ではなく、自分の書いた文章だけを評価してもらえると思えて安心できました」「写真館に撮りに行くお金と体力を使わずに済みました」といったポジティブな意見が多く、結果として応募数も増えています。
また、当社はもともと障がい者採用に力を入れてきたのですが、以前はイベントも広報も一般採用と分けて行っていました。しかし数年前からは、一般向けの広報でも障がい者採用のイベントを紹介したり、すべての対面開催イベントで「だれでもトイレ」の利用案内をしたり、会社紹介資料をユニバーサルデザインフォントに統一するなど、より幅広い方向けに配慮を広げています。その結果、障害者手帳を持っていない学生の皆さんからも「ダイバーシティに取り組む会社」として評価いただくことができました。エントリー時の性別登録を任意にしたことも、同様の評価につながっているようです。
「服装自由」を改めてメッセージとして打ち出したことについてはいかがですか?
國頭:
当社では以前から「選考時の服装は自由」と各種イベントの予約時にお伝えしてきましたが、「自由とあるが、実際はスーツがいいのでは」とかえって迷わせてしまい、こちらの意図が伝わらないという課題がありました。そこで一昨年から「#きがえよう就活プロジェクト」へ賛同し、改めて「服装自由」の理由や、過去の参加者の服装データなどを開示しています。このような発信を始めてから、普段着でリラックスして来社いただく学生の方も増え、アンケートでは9割以上の応募者がカジュアルな服装での就活に肯定的な回答をしてくださいました。余計なストレスなくイベントや選考へご参加いただきたいという思いから、カジュアルな恰好で構いませんとお伝えしていますが、もちろん、スーツをネガティブに受け止めることもありません。服装は評価の対象でなく、社員にも求めていない服装の規範を学生のみなさんに強いる権利はない、という合理的な判断に基づいています。
オープンカンパニーやインターンシップにおいても、学生目線を重視した施策を行われていると伺いました。
栗田:
会社説明会にあたるオープンカンパニーは地方の学生にも気軽にご参加いただけるよう、主要都市の事業所で実施するほか、オンラインでもセミナーや質問会を実施しています。自画自賛になってしまい恐縮ながら、元記者の私たちが担当するエントリーシート講座は毎年好評です。エントリーシートの「型」を勉強する学生も多いのですが、それだけではなかなか良い文章は書けません。記者経験・記者養成経験を活かし、本当の自分らしさを表現する文章の書き方をお伝えしています。
文章のトッププロから指導を受けられるというのは、贅沢なプログラムです。
國頭:
インターンシップでは、ジャーナリストコース(3days)、ビジネスコース(5days)、エンジニアコース(1day)の3コースを用意しています。いずれのコースも実際の職務に近い経験ができる内容となっており、私が担当しているビジネスコースではコーポレート業務から営業まで8職域すべてのワークを体験していただきます。この5日間で幅広い経験を積み、就きたい職種が変わる方もかなりたくさんいらっしゃいますね。また、新聞社とエンジニアは結びつきにくいかもしれませんが、当社は朝日新聞デジタルをはじめ多くのWebサービスを有し、エンジニア主導でサービスやシステムを開発することも珍しくありません。エンジニアコースでは、そうした醍醐味を感じ取れるよう、アイデアソンなども取り入れた内容にしています。
栗田:
私が担当しているジャーナリストコースでは、取材や原稿執筆が体験できるワークを実施しています。文章の添削やフィードバックも現場の記者が行います。また、朝日新聞社は若いうちから記者が自分の興味を持ったことを取材し、記事にできるボトムアップの社風があります。そうしたジャーナリストとしての在り方についてもお伝えしています。
國頭:
すべてのコースに共通しているのは、現場社員と学生とが近い距離で話せる時間を設けていることです。やはり、私たち人事が話すよりも、現場社員が話した方が学生には信用してもらいやすいので。
インターンシップに参加された方からの反応はいかがですか?
栗田:
「新聞社は堅いというイメージがありましたが、温かい社員が多く、良いギャップがあった」「子育てと仕事を両立している記者と話し、働き方の多様性を感じられた」など、古い新聞社のイメージがポジティブに変化したという声はとても多いですね。当社はこれまで、インターンシップを会社や仕事を理解していただく場と位置づけ、選考や採用に直結させてきませんでした。しかし、仕事や社風への理解が深まったおかげか、インターン参加者が内定につながる確率は結果として高くなっています。
最後に、今後の採用活動に向けての目標について教えてください。
國頭:
夏のインターンシップでは事前に書類選考と面接を受けていただき、合格者にのみご参加いただいています。一昨年前までは、残念ながら枠を用意できなかった方に対するフォローは特に行っていなかったのですが、早い時期から朝日新聞社に興味を持って下さった貴重な人材と認識を改めるようになりました。そこで昨年からは、インターンに応募したが参加できなかった方のために座談会などのイベントを設け、コミュニケーションをとる機会をつくり始めました。今後はこうした機会を増やし、インターンシップ以外のさまざまなチャネルから本選考に進んでもらえるようにしたいと思っています。
栗田:
少し次元の大きな話になってしまうのですが、私はもう少し自由な新卒採用の在り方が実現できればと考えています。たとえば4年生になってから就活を始める学生がもっとたくさんいてもいいし、海外のように、若者が大学を卒業してから好きな時期に就職するという考え方があっても良いと思うんです。ずっと昔はおそらく日本でもそうだったように、タイミングを問わずに若者が本当に入りたい会社の門を叩き、ありのままの自分を見せられるような就職活動が理想ですね。もちろん当社だけですぐ実現することはできませんが、同じような思いを持つ企業と協力しながら、少しずつより良い就職活動の形を模索していきたいです。
Special Feature 01
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