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Interview

エンゲージメント・サーベイを軸に、やりがいある職場を。
創業150年・柿安本店のエンゲージメント戦略

ENGAGEMENT

Published on 2023/04/07

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Profile

根岸 日出夫Hideo Negishi

株式会社柿安本店
人事部 次長

大手食品会社等で海外赴任や人事労務を経験後、2022年1月に入社。人事労務全般を統率する。

荒田 直幸Naoyuki Arata

株式会社柿安本店
人事部 次長

複数の企業で営業、店舗運営、研修企画、人事管理、採用等を経験したのち、2001年に入社。採用と育成を統率する。

明治4年創業以来、150年以上にわたり「おいしいものをお値打ちに提供する」という理念に基づいて日本の食文化に貢献している柿安本店。現在は精肉事業、惣菜事業、和菓子事業、食品事業、レストラン事業という5つの事業を展開し、2019年には東証一部上場、2022年4月にはプライム上場も果たしています。そんな同社では今、社員のエンゲージメント向上に向けた取り組みをスタート。エンゲージメント・サーベイを導入して社員のエンゲージメントを可視化し、社員がよりやりがいを持って働ける組織づくりを目指しているのです。人事改革を主導する根岸様と荒田様に、「人」と「組織」への想いを語っていただきました。

150年続く老舗企業ならではのエンゲージメント

まずは改めて、貴社の事業についてご紹介いただけますか。

荒田:
当社は明治4年に三重県の桑名市で創業しました。最初は牛鍋屋としてスタートし、そこで培った精肉のノウハウを活かした精肉事業や惣菜事業も展開。現在ではいわゆる「外食」「中食」「内食」という3つの分野をすべてカバーしています。創業当初から「おいしいものをお値打ちに提供する」という経営理念を掲げており、おいしさ・安全・お値打ち感のすべてを妥協なく追求。特に150年にわたる歴史の中で培ってきた職人による精肉や素材の目利きは当社の強みであり、こだわりぬいた原材料の品質は高い評価を得ています。現在は東証プライム上場企業として、全国に店舗を展開しています。

老舗ならではの強みを活かしつつ、事業拡大を遂げられてきたわけですね。ここまでの成長を実現した要因として、本社や全国の店舗で活躍する従業員の存在が大きいと思います。人事として、従業員のエンゲージメントについてどのような考えをお持ちか、お聞かせください。

荒田:
従業員のエンゲージメントは、企業経営において非常に重要な要素です。特に私たちのメイン事業である食品販売や飲食では、常に従業員がお客様と直接接します。そうした仕事に対してやりがいを持ってのめり込み、高いエンゲージメントをもつ従業員が多くいれば、店舗の売上も自ずと上がるものです。

エンゲージメントの高い従業員は、たとえばどのようにご活躍されているのですか?

荒田:
お客様の喜びを素直に自分の喜びとして受け止められる人は、エンゲージメントが高い状態で仕事に取り組めているようです。そういう人は、お客様のお気持ちを考え、お客様がお気づきでないことまでさりげなく提案できるような、感動的な接客をします。たとえば当社の販売店舗には、なじみの店員に会うためにわざわざお店を訪れてくださるお客様がいらっしゃいます。そうしたお客様とのつながりの深さは、歴史の長い当社ならではの良さだと思いますし、それを楽しめる従業員にとっては本当にやりがいのある職場だと思います。

魅力的な仕事ができる職場であることがよく伝わります。貴社では従業員のエンゲージメント向上に向けて、どのような施策を実施されてきたのでしょうか。

荒田:
従業員向けの研修は必要に応じて企画し、その中には継続的に実施しているものもあります。しかし当社では全国に店舗展開している事情もあり、従来の人財育成は各現場でのOJTが中心でした。例えばレストランの厨房なら料理長が、ホールなら店長が育成を担う。創業以来受け継がれてきたこの伝統的な人材育成は、一定の成果を上げてきました。しかし、不確実の時代と言われる現代において、当社が上場企業としての責任を果たしつつ永続的に発展するためには、改めて時代に適した人財育成を考える必要があります。そこで今、当社では従業員のエンゲージメント向上に向けた新しい取り組みを始めました。

エンゲージメント・サーベイをベースとした施策をスタート

エンゲージメント向上に向けて、具体的にどのような取り組みを行われているのでしょうか。

根岸:
2022年にエンゲージメント・サーベイを導入し、従業員のエンゲージメントの可視化に着手しました。現在は実施した調査結果をもとにデータを分析し、事後施策に向けて取り組んでいるところです。

なぜエンゲージメント向上に向けた最初の施策として、エンゲージメント・サーベイを導入されたのですか。

根岸:
当社は、これから人財育成やキャリア支援の制度を体系的に整備していく段階にあります。これらの具体的な施策を実施する上で、まずはすべてのエンゲージ施策の土台となる「現状と課題」をしっかり把握しなければなりません。そのためには、エンゲージメントを項目ごとに細かく調査・可視化できるエンゲージメント・サーベイが不可欠であると考えました。従業員のエンゲージメントを定期的に計測し続ければ、今後実施する個別の施策も、課題抽出や改善がしやすくなります。

エンゲージメント・サーベイを実施し、どのような成果が得られましたか?

根岸:
当社が導入したエンゲージメント・サーベイでは、個人別のエンゲージメントだけでなく、職場別・階層別のエンゲージメントも確認することができます。エンゲージメントに課題がある職場や階層を把握することにより、職場別・階層別のアプローチなど、今後の具体的な対策もしやすくなるでしょう。

エンゲージメント・サーベイの示したデータをご覧になった、率直なご感想はいかがでしたか?

荒田:
全体的に、思った以上に高いエンゲージメントが示され、まずは少し安心しました。数値の低い店舗も中にはありましたが、それも納得できる結果です。各店舗の店長や料理長といった上司のコミュニケーション能力が高いほど、店舗全体のエンゲージメントも高まりやすいという傾向が、改めてデータとして明らかになったという印象です。

一般に、多くの従業員が店舗などの各拠点で働く企業では、エンゲージメントの管理や施策実施が特に難しいともいわれます。その点についてのご意見をお聞かせください。

根岸:
確かに各店舗とのコミュニケーションが難しい側面もありますが、必ずしも人事が店舗のエンゲージメントを直接管理する必要はないとも考えています。店舗の環境を直接改善するのは、店舗で働く従業員たち。私たち人事の役割は、店舗内のコミュニケーションが活発化し、誰もが楽しく仕事に取り組めるような環境づくりに向けた支援です。エンゲージメント向上に必要な知識を伝えたり、有効なツールを導入したりといった間接的な支援を通じて、従業員たちのジョブ・クラフティングの力を高めていく。それが私たちの目指す人事のあり方です。

2023年を柿安本店の「エンゲージメント元年」に

業務へのエンゲージメントと同時に、会社・組織へのエンゲージメントの向上もエンゲージメント施策においては重要です。貴社では従業員の組織に対するエンゲージメントを高める上で、どのような点に課題を感じ、どのような施策をお考えですか。

荒田:
組織に対するエンゲージメントについても、エンゲージメント・サーベイによる調査の結果、課題があることが明らかになりました。従業員の組織に対するエンゲージメントを高めるためには、今まで以上に従業員が組織に対して自由に意見を伝え、実現できるようなしくみや風土をつくっていくことが必要だと思います。

最後に、エンゲージメント向上を実現するために今後実施したい施策や、中長期的な展望についてお聞かせください。

根岸:
エンゲージメント・サーベイによる調査の結果、良い数値が出ている部分もたくさんありましたので、そういう要素は引き続き伸ばしていきたいと考えています。一方、課題が見えた要素については、定期的に数値の推移を分析しながらKPIを管理していく必要があるでしょう。私の考える最終的な目標は「入社して良かった」とすべての従業員に思っていただけるような会社にすること。そのための具体的な施策は、エンゲージメント調査を重ねながら徐々に立案していきます。2023年は、当社にとっての記念すべき「エンゲージメント元年」にしたいと思っています。

荒田:
私も根岸と同じ意見です。エンゲージメント数値の向上はもちろん、数値化できない明るく活発な空気が職場に生まれ、全従業員が笑顔で働ける会社づくりができれば、と願っています。

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