2016年入社。初年度から人事部採用課に配属となり、新卒採用業務全般に従事。2021年からはマネージャーとして採用計画全体の設計・運用・管理まで一貫して行う。
Published on 2022/03/04
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神谷 優太朗Yutaro Jinya
株式会社ミキハウス
人事部 採用課 マネージャー
2016年入社。初年度から人事部採用課に配属となり、新卒採用業務全般に従事。2021年からはマネージャーとして採用計画全体の設計・運用・管理まで一貫して行う。
中川 夏実Natsumi Nakagawa
株式会社ミキハウス
人事部 採用課
2016年入社。入社後はSHOPにてファッションアドバイザーとして経験を積んだのち、2017年から人事部へ異動。神谷と共に採用活動全般に携わる。人事部を選んだ理由は「誰かを支える仕事を通じて、人の記憶に残る仕事を手掛けるため」。
2021年で創業50周年を迎えたミキハウス。「子どもと家族の毎日を笑顔でいっぱいに」という企業理念のもと、ベビー・子ども服の枠を超え、出版や教育・スポーツ支援など、子どもと家族に関わるすべての分野を事業フィールドとしています。また同社では「新卒採用100%」という独自の戦略を貫いているのも大きな特徴で、今回はそんな採用現場の最前線を担う人事部の神谷様と中川様にお話を伺いました。「年間200回を超えるオンラインインターンシップ」や「学生と必ず直接会って話す選考プロセス」など、人の温度が伝わる手間を惜しまない採用施策について紐解いていきます。
貴社はブランドプロミスとして「子どもと家族の毎日を笑顔でいっぱいに」という言葉を掲げられています。ここにはどのような意味が込められているのですか。
神谷:
ミキハウスというとベビー・子ども服に特化したアパレルブランドというイメージを持たれている方が多いと思いますが、実際には「子どもと家族の毎日を笑顔でいっぱいに」するため、多岐にわたる事業を展開しています。例えば出版、教育、スポーツ・子育て支援といったものですね。子どもと家族の豊かで明るい未来を総合的にプロデュースすることが、ミキハウスの社会的な使命であると考えています。
中川:
採用活動においても、数年前からは「子ども文化創造企業」として自社ブランドを再定義し、広報の切り口を変えています。
貴社の人材採用におけるポリシーについて教えていただけますか。
中川:
ミキハウスでは、「働く人こそが財産である」という人材観を大切にしています。その意向もあって、長きにわたり中途採用は一切行わず、新卒採用のみで人材を採用する方針をとってきました。私たち採用チームも、時間と労力を惜しまず、「人材採用を通じて会社の未来を創る」という意識で仕事に取り組んでいます。
神谷:
これに加えて、最近はダイバーシティ採用の強化に注力しています。ミキハウスでは10年ほど前からグローバル市場を本格的に拡大しており、これに伴って外国人留学生の採用数もかなり増えている状況です。
新卒採用のみで人材を構成しているというのは大胆な戦略です。そのことは採用活動にどのような影響があるとお考えですか。
中川:
人事部はもちろん、会社全体が採用活動に向けて最大限の資金と労力を投入していると感じます。当社では毎年多くの方にエントリーいただいているのですが、採用できるのはわずか十数名だけです。それでも、応募してくださった全員に対してできる限り「一対一」で向き合いたい。その気持ちを表すため、2万人近い応募者全員に手書きで宛名を書き、パンフレットを郵送しています。それ以外にも、イベントに参加された方にハンドタオルなどの自社製品をお贈りし、感謝の気持ちを伝えるなどしています。小さな取り組みですが、それを通じて「人間味」や「ぬくもり」を感じていただき、ひいては将来的なミキハウスのブランディングにも繋がっていけばいいな、と考えています。
労を惜しまない本気の姿勢が伝わります。ダイバーシティ採用にあたってはどのような点に留意されていますか。
中川:
まず採用段階で気を付けているのは、外国人留学生の方々は日本人学生以上に入社動機が多様であることです。当社は学生の文化的背景に関わらず「労働力」ではなく「仲間」として受け入れたいと考えており、入社した皆さんにはミキハウスの理念を共有した上でやりたいことを実現してほしいと願っているので、そうした意識の共有や見極めには注意していますね。入社後には日本の文化や当社の考え方をしっかり研修で学んでいただきますし、配属先の店舗やチームのほうでも、外国籍社員の文化的背景などに関する研修を受けていただき、スムーズな受け入れができる体制を整えています。
貴社ではインターンシップにも非常に力を入れているとお伺いしました。どのような点に工夫をされているか、教えていただけますか。
神谷:
インターンシップについては以前から重点的に取り組んでおり、他社に負けない企画を目指してきました。例えばコロナ禍以前には、選考を突破された学生をシンガポールや上海へ招待し、現地でグローバルビジネスを体験していただくという「海外インターンシップ」を実施していました。
確かに、他社には真似できない贅沢なインターンシップです。コロナ禍以降のインターンシップについてはいかがですか。
中川:
インターンシップは基本的にオンラインで行っています。6種類のプログラムを通じて当社の企業文化やさまざまな仕事、そして社員に触れていただく内容です。できるだけたくさんの学生にご参加いただくため、回数を増やすことにもこだわり、一年間に合計で200回以上実施しました。学生との接点を増やすという目的から、1回のプログラムは90分程度と、気軽に参加できる長さに設定しているのも特徴です。
神谷:
コロナ禍1年目のインターンシップを迎えた2022シーズンは、各社様子を窺うような雰囲気がありましたよね。当社としてもいくつか懸念はあったのですが、どちらかというと、他社がやってないことをやるチャンスだ!とポジティブに進められたように思います。中でも特にこだわったのは、プログラム内での「ストーリー性」や「落としどころ」を感じてもらえるような組み立てです。例として、ミキハウスの強みである「ものづくり」がテーマのインターンシップでは、実際にベビーシューズを題材にしながら、学生に複数のワークに取り組んでもらうという内容です。まずは「ストーリー性」について、①デザイン→②機能性→③値段、これらを順番に考えてもらうことで、商品が出来上がるまでのプロセスや考え方を学び、普段から自分たちが当たり前のように着用している服にも同じようなストーリーがあることを実感してもらいます。そしてプログラムの最後に、職人さんが実際にものづくりを行う様子をまとめた動画を流すことで、商品一つひとつに込められた想いや愛情を感じてもらいます。これがまさに目には見えない“付加価値”を伝えるという「落としどころ」です。
オンラインインターンシップに対する学生の反応はいかがですか?
中川:
コンテンツ内容の充実度もさることながら、画面越しでも「ミキハウスらしい社員の元気な人柄」が伝わってよかった、という意見が多いですね。ちなみに、2022シーズンの内定者のうちおよそ8割はインターンシップ参加者でした。
今年度はオンラインだけでなく新たなコンテンツにも挑戦されたのですよね。
神谷:
そうですね。少人数の学生を対象とした「選考型インターンシップ」にも挑戦しました。以前は、インターンシップ段階で合否をつけてしまうと、本選考への参加率低下に直結してしまうのではないかという懸念からなかなか踏み切れずにいましたが、より親和性の高い学生の絞り込みを行うためにも今年新たに取り組みました。この選考型インターンシップでは、事前にテストやグループディスカッションなどによる選考を行い、通過した10名程度のみ参加いただくプログラムで、その内容は、3日間かけて新商品のマーケティングから企画・デザイン、プロモーションまで、プロダクトマネジメント全般を疑似体験するというものです。画面越しではなく、実際に当社にお越しいただき、感染対策を万全にした上で実施しました。
オンラインだけではなく、オフラインのインターンシップも実施されているのですね。
神谷:
オンラインには幅広く情報を発信できるメリットがありますが、さらに一歩踏み込んで「仕事」や「人」の魅力を伝えるには、やはり対面でのコミュニケーションが重要だと考えています。本選考も同様の方針をとっており、二次面接まではオンラインですが、三次面接・最終面接は対面で行っています。
最終面接まですべてオンライン化している企業が多い中、対面の面接を維持することにはどのような思いが込められているのですか。
中川:
たとえ効率が悪くても、人と人とのアナログな繋がりを大事にするのが、ミキハウスの社風なのだと思います。オンラインでのコミュニケーションには、場所や時間を問わず気軽に話せるメリットがあります。しかし、実際に当社に入社すれば、人に会い、一緒に商品をつくったり、売ったりするという仕事をすることになります。そういうコミュニケーションに魅力を感じられる方が、当社には向いていると思います。
神谷:
実際、内定者の多くが「直接社員と会って話せたことが入社の決め手になった」と話してくれていますね。
中川:
ちなみに最終面接の前にも、人事と学生が対面で面談をする機会を設けています。目的は選考ではなく、学生の皆さんに、面接で悔いなく自分らしさを発揮し、納得して選考結果を受け止めてもらうこと。もちろん内定を出したあともフォローを続け、入社後についての不安を払拭したり、キャリアプランに関する相談に乗ったりします。今は採用の早期化に伴い、内定から入社までの期間が長くなっているので、内定者の心の変化や成長にしっかり寄り添いたいと考えています。
まさにアナログな強みが発揮された施策ですね。今後のテクノロジーの活用についてはどのようにお考えですか。
神谷:
新型コロナウイルスの流行が収束しても、引き続きオンライン・オフラインのハイブリッド採用を続けていくことになると思います。オンライン化によりできるようになったことはたくさんある一方で、オフラインで会えることのプレミア感や価値はこれまで以上に高まっていると感じます。だからこそ「オフラインの使いどころ」を見極めることが、非常に重要です。オンラインで効率化を図りながらも、大事なポイントではオフラインでプレミア感を演出し、ミキハウスの世界観に一気に惹き込む。これがミキハウスのスタイルですし、かなり「完成形」に近いのではないかと感じています。
最後に、今後の採用活動に対する目標や抱負について、お話しください。
中川:
ミキハウスの新卒採用に掛ける強い想いはこれからも変わりませんし、企業が付加価値を生み出す原動力は「人」でしかありません。さらに強い採用チームを作ることを通じて、会社の成長に貢献することが、私の使命であると考えています。嬉しいことに当社の多くの社員は「人」の魅力に惹かれて入社しているので、その強みは今後も維持していきたいです。一方、個々の「人」はあくまで流動的な要素であり、不安定な面もあります。今後は、それぞれの社員の魅力はもちろんのこと、その魅力的な社員たちが集まった「ミキハウス」という集まりそのものが持つ“らしさ”をもっと伝えていきたいと考えています。そして、そんな私たちと共に成長していきたいと思ってもらえるよう、工夫を重ねていきたいですね。
神谷:
新卒採用市場におけるアパレル業界は、学生からの人気が高いとは言えません。しかしミキハウスは、メイドインジャパンでよいものを作り続けている会社であり、繊維産業は長きにわたりこの国を支えてきた魅力ある産業です。私の願いは、ミキハウスの人気を高めることはもとより、採用を通じてアパレル業界全体を底上げしていくこと。多くの学生が「繊維業界って、面白いらしい。とりあえず受けてみよう」と思ってくれるような状況を醸成し、結果として当社の採用にもプラスに繋げていきたいです。そうした活動の一環として、昨年にはルイ・ヴィトン ジャパン社と合同でコラボセミナーを開催するなど、新たな取り組みも始めました。今後もさまざまな会社と協力しながら、アパレル業界の地位を高める活動に取り組んでいく予定です。
Special Feature 01
人材データを蓄積し、その後の採用可能性につなげていく「タレントプール」。
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