2010年、コクヨに入社。ファニチャー事業本部関西営業部にて6年間大手法人向け営業を担当した後、2016年に人事総務部採用育成グループへ異動。2018年新卒採用より採用業務に従事し、4つのコース別採用をすべて経験。2021年新卒採用からは全体統括を手掛ける。
Published on 2021/11/05
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山本 浩貴Hiroki Yamamoto
コクヨ株式会社
ヒューマン&カルチャー本部 HR部 採用ユニット
シニアアソシエイト
2010年、コクヨに入社。ファニチャー事業本部関西営業部にて6年間大手法人向け営業を担当した後、2016年に人事総務部採用育成グループへ異動。2018年新卒採用より採用業務に従事し、4つのコース別採用をすべて経験。2021年新卒採用からは全体統括を手掛ける。
年間1億冊販売されている「Campusノート」や、アクセサリーのように組み合わせを楽しめる文具ブランド「KOKUYO ME」などを世に送り出し、文具メーカーとして圧倒的な知名度を誇るコクヨ株式会社。しかし現在、ステーショナリー領域の売上は全体の20%程度であり、売上の50%を占めるのはオフィスデザインなどを行う「空間価値ドメイン」だといいます。新規事業のさらなる開拓に向け、2021年2月には115年ぶりに企業理念を「be Unique.」に刷新しました。新生・コクヨの発進に向けて、採用ユニットは人材戦略をどのように変化させ、どんな課題に挑んだのか。採用を統括する山本浩貴様に語っていただきました。
まずはコクヨ株式会社について、簡単にご紹介いただけますか。
学生を含め、多くの方からコクヨは文具メーカーと認知されていると思います。しかし文具にまつわるグローバルステーショナリードメインの売上は全体の20%にとどまり、売上の多くはオフィス空間などを手掛ける空間価値ドメインやB to B通販を含めるビジネスサプライドメインが占めているのが実情です。2021年2月に当社は2030年に向けた長期ビジョンを策定し、これに伴って1905年の創業以来から掲げてきた「商品を通じて世の中の役に立つ」という企業理念も刷新しました。
新しい理念とはどのようなものですか?
新しいコクヨの企業理念は「be Unique.」というものです。当社の商品・サービスを通じて得られる“体験”という価値を通じて、お客様の創造性を刺激し、お客様の個性を輝かせたい、という思いを込めています。そうしたお客様との関係こそが、私たちがこれからの未来に対して描いている姿であり、実現していくべき役割であると考えています。たとえば2021年2月には品川オフィスをリニューアルし、働き方の実験場「THE CAMPUS」をオープンしました。THE CAMPUSでは、「街に開かれた、“みんなのワーク&ライフ解放区”」として、アフターコロナを見据えた新しい働き方を提案しています。
企業として目指す方向が大きく変わったわけですね。人材戦略や、求める人物像といったものも変化したのでしょうか。
もちろんです。採用ユニットにおいても、長期ビジョンに合わせて採用方針や施策を全体的に見直し、求める人物像も再設計しました。これからのコクヨは、既存ビジネスの延長線上で何かをするだけでなく、それ以外の領域も含めて新しい事業戦略に取り組んでいきます。新卒採用においては、「文具メーカーとしてのコクヨ」ではなく、「新たな価値創造に挑むコクヨ」に魅力を感じ、活躍できるような学生を採用しなければなりません。そのために、採用キャッチコピーをはじめとした採用コンテンツはほとんどゼロから作り直しましたし、学生とのコミュニケーションの取り方も大きく変わりました。
採用方針を変えたことによって、貴社に応募する学生の質は変わったと感じますか?
どれぐらい当社にマッチした人材が採用できたかについては、入社後の活躍を確認していきたいと考えています。ただ、採用競合としてバッティングする企業が変わってきたことは実感していますね。これまではメーカーを志望する学生の応募が多い状況でしたが、今は業種の枠を超え、様々な企業を志望している学生が当社を志望してくれるようになりました。
2022年新卒採用は、昨年に引き続いてコロナ禍において行われました。2年目となったオンライン採用についてはいかがでしたか。
結論から言うと、オンライン化のメリットを活かした採用活動ができたと感じています。たとえば、従来は我々の「オフィス空間を作る」という事業を学生に具体的にイメージしてもらうのが難しかったのですが、オンラインで充実したグループワークを実施することで、学生に仕事内容をしっかり伝えることができました。今の学生の皆さんは、コロナ禍において企業がITをどのように活用しているのか、冷静に見ていると感じます。コクヨはもともとアナログな商材のイメージが強い会社だったわけですが、採用活動においてオンラインを積極的に活用することで、「イメージと比べてデジタル対応が柔軟かつ速く、良い印象を受けた」という感想を多くいただくことができました。
オンライン化がむしろプラスになったのですね。
今の学生は、社会に出てすぐに「コロナ禍」または「アフターコロナ」の状況下で働くことがスタンダードとなります。つまり、「新しい働き方」に対して最も強い当事者意識を持っているのは、実は学生なのではないかと感じています。コロナ禍の状況だからこそ、「新しい働き方を創造する」というコクヨのビジネスをポジティブに理解してもらうことができた、という面もあるでしょう。
一方で、学生を最後までつなぎ止めて内定承諾につなげることが、オンラインだけだと難しいという意見もあります。その点では何か工夫をされたのでしょうか。
最も注力したのは「学生との会話の量」です。何を決め手として最終的に会社を選ぶのか、ということを丁寧にヒアリングして、そのために必要な情報をしっかり提供する。オンラインではありますが、選考とは関係のない1on1の面談を通じてよく話し合い、質・量ともに高い対話を目指しました。
新卒採用は、どのような体制で行われているのですか?
学生の前に出て採用活動に従事する担当者は私を含めて4名、これに加えてマネージャーが1名という構成です。マネージャーは新人育成にも携わっているため、採用業務は実質的に4名で遂行しています。採用人数については年度によって変動しますが、例年40~50名程度を、4つのコースに分けて採用しています。各担当者が1コースずつ専任で担当し、全体の管理は私が行っています。
エントリーシートの内容もコースによって違うのですか?
はい、すべて別々です。エントリーシートの内容や人材像設計、面接手法、母集団形成方法まで、コースによって異なります。各コースの担当者一人ひとりが会社の代表として責任を持ち、採用業務にあたっています。
コースごとの独立性が高いのですね。企業全体として採用方針が大きく変わったということですが、それはどのようにユニット内で共有されたのでしょうか。
まずは、コクヨの新卒採用活動において大切にしたい想いをしっかり作り込み、それをメンバー全員で共有します。さらに会社として発信している新しい情報も適宜全員で共有し、それを各コースでどのような要件として落とし込むか、メンバーと話し合いながら決めていきます。こうすることで、企業の方向性と採用方針の一体化を図っています。
採用メンバーの成長に向けて、新しい役割やミッションが継続的に与えられる仕組みはあるのでしょうか?
私を除く弊社の採用メンバーの多くは初期配属から採用に従事しており、各コースの主担当者としての経験値もすでに高いため、役割が急に大きく変わることはありません。ただし、採用担当者として求めるレベルは、毎年どんどん上げていきたいと考えています。具体的に言うと、「施策を実行するのが得意」というだけではなく、計画を設計できるような人材の育成を目指し、そうした業務を積極的に任せるようにしています。また、採用業務は仕事のサイクルが長く、今のスキルを次にどう活かしていくのか、わかりにくいとも言われます。そこで私が重視しているのがメンバーとの対話です。あなたという個人は、今後どうなっていきたいのか。そのために採用業務のなかでどんなチャレンジをしたいのか。そういう対話を一対一で行い、一人ひとりのキャリアビジョンを見据えつつ、仕事を任せるようにしています。
今期は主にどのような採用課題に取り組まれましたか。
「文房具のコクヨ」という既存のイメージをいかに払拭し、これからのコクヨを知っていただくか。そしてそれに興味を持ってもらうかが、最大の課題でした。たとえたくさんの学生に応募していただいたとしても、「何かを自ら生み出す」という新しい仕事の進め方にマッチした人でなければ、採用できません。そこで今年は、オープンなマス媒体を使って広く募集することをやめて、逆求人やオファー、スカウトなどのクローズな募集を、相当な工数をかけて行いました。そしてこのクローズな求人で出会った方々に限定したインターンシップなどのイベントも実施したのです。
大胆な戦略ですね。マス媒体は使われなかったのですか?
情報の掲載自体はしましたが、そこから大規模な母集団を形成することは考えていませんでした。それよりも、当社のほうから会いに行き、口説く。そのことにすごく体力を使いましたね。
例えばどのようなイベントを実施されたのでしょうか。
昨年のプレ期には、こちらからオファーやスカウトを送った方限定の座談会をほぼ毎日、20日間ほど開催し続けました。大規模な就活イベントに参加する場合と比べると、出会う学生の数としてはかなり少ないですが、その分、企業と学生のお互いがしっかり納得できる関係を結べたと感じています。
座談会はどのような内容だったのですか?
会社説明の時間は最小限に抑えて、オンライングループワークや、ワーク後の座談会に重点を置きました。1回あたりの参加者も10人から20人程度に絞りました。そこに採用担当者を2~3人投下して、少人数でしっかりお話できる時間を作りました。かなり濃いコミュニケーションがとれたのでは、と思います。
ただオンラインで情報を発信するのではなく、相互的なコミュニケーションを充実させたわけですね。「コクヨファンを作る」上で有効な施策だと感じます。
そうなっていれば嬉しく思います。
逆求人などの手法は、「なかなか自発的にはコクヨにエントリーしてこない学生」を振り向かせる狙いがあると思います。そのためにはどのような工夫をされていますか?
大切にしているのは、「コクヨのことを知っている前提でコミュニケーションを取らないこと」です。「コクヨのこと、こんな会社だと思っているでしょう?でも、実はこんな魅力があるんですよ」と、丁寧に情報を伝えています。この点で役に立ったのがオンラインコンテンツでした。従来のようにテキストを読んでもらうより、動画コンテンツを見ていただいたほうが、コクヨの新しいビジネスの魅力は伝えやすいように思います。
最後に、採用活動における今後の展望についてお話しいただけますか。
採用活動において、「企業ブランド」はもちろん大事なものです。しかし今後はそれだけではなく、「コクヨに入社すれば、こんなことができそうだ。こんなことに挑戦してみたい」と思ってもらえるような、コクヨならではの「採用ブランド」を作り上げていきたいと考えています。そのために、私たちもますます「挑戦する採用ユニット」を目指していきたいです。
Special Feature 01
人材データを蓄積し、その後の採用可能性につなげていく「タレントプール」。
新たな採用手法の実現方法を紐解きます。
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