Webサービス企業にて人事のキャリアを積んだのち、2013年にauじぶん銀行株式会社に入行。以来、経営企画本部・総務人事部の部長として、経営戦略に基づいた人材採用の指揮を執る。
Published on 2021/02/25
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玉井 陽司Yoji Tamai
auじぶん銀行株式会社
経営企画本部
総務人事部 部長 兼 秘書室長
Webサービス企業にて人事のキャリアを積んだのち、2013年にauじぶん銀行株式会社に入行。以来、経営企画本部・総務人事部の部長として、経営戦略に基づいた人材採用の指揮を執る。
auじぶん銀行株式会社が設立されたのは2008年。ネット銀行といえばパソコンによる操作が主流だった当時、いちはやく携帯電話で利用できる銀行サービスを展開したパイオニアが同行でした。インターネット銀行業界で確固たる地位を築いた今も、「銀行を連れて、生きていこう。」というキャッチコピーを掲げて新規サービスを次々とリリース。たゆまぬチャレンジが顧客の心をつかんでいます。そんな同行だからこそ、人材採用にも新たな挑戦が必要だと語るのは、総務人事部長の玉井陽司様。前例にとらわれない独自の採用戦略、そしてそこに込められた想いについて語っていただきました。
はじめに、玉井様のご経歴を紹介いただけますか?
前職はWebサービス企業に勤めており、一貫して人事の仕事をしてきました。当行に入行したのは2013年です。auじぶん銀行は2008年に、KDDIと三菱UFJ銀行の出資により設立された会社であり、私が入行した当時、行員の多くはこの2社から出向した人が占めていました。当時の経営陣には「インターネット銀行として斬新なサービスを生み出すためには、大企業からの出向社員ではなく、自由な発想を持って活躍できる人を外部から採用し、プロパー行員として育成しなければならない」という人事上の課題がありました。そこでWeb業界で人事経験を持つ私が、経営戦略に基づき中長期的な人材戦略を立案、運営することになったわけです。
現在、貴社では、出向社員は何割ぐらいいらっしゃるのですか?
現在の行員数は400名程度ですが、その内8割程度は2013年以降に直接採用した方々です。出向社員は残りの2割程度ですね。
ということは、貴社の行員の大半を、玉井様が中心となって採用されたわけですか。
そのようにもいえるかもしれません。採用した社員の面接にはすべて私も加わっていますし、その後も接点がありますので、ほぼ全社員の顔と名前はもちろん、現在どのような仕事をしてどんな課題を抱えているかといったことも把握しています。
貴社の採用戦略を一から築いてこられたのですね。貴社の求める人物像とはどのようなものでしょうか。
先ほど申しあげた通り、新たなビジネスに挑戦できる人材を採用することが、入行当時から変わらない私のミッションです。なぜなら当行は銀行ではありますが、旧来の金融機関とは全く違うスタンスで事業を展開している企業だからです。私たちは2008年というスマートフォンの黎明期に、いち早く携帯電話で銀行サービスを提供しはじめました。そして今もこの市場は、新しいデバイスや技術の登場に従い急速に変化しています。お客さまに「感動」や「驚き」を提供するためには、固定観念にとらわれず、リスクをとって新企画に挑戦しつづけなければならないのです。
新卒入社した社員にとっても、実際にそのようなチャレンジングな働き方を実現できる環境なのですか?
チャレンジ精神とやり抜く力を持ち合わせた人にとっては、非常にチャンスの多い環境だと思います。当行は約400名という規模に比較して強力な資本力がありますし、ビジネスの規模感、成長性ともに大きいといえるでしょう。新しい価値を生み出し続ける仕事はハードですが、それを理解して入行してくれた行員にとっては相当やりがいのある職場です。実際、離職率は年間で5%程度しかありません。
定着率が非常に高いのですね。
当行の行員数は数値上あまり増えてはいませんが、これはプロパー社員が増えるにつれ出向社員が減っているからです。採用した行員の多くが長く定着してくれているのは、人事としてとても嬉しいことですね。
先進的なビジネスを生み出す人材を採用するために、採用活動においてどのような工夫をされていますか?
まずは当行に興味を持ち、面白い会社だと思ってもらうことが大切だと考えています。そのためには、我々採用チームも前例にとらわれず、イノベーティブな挑戦をすることが欠かせません。たとえば2021年新卒採用では「企画書採用」という採用コースを実施しました。
企画書採用とはどのようなものですか?
エントリー後に、「じぶん」を商品としてPRする「企画書」を提出していただきます。そしてこれを通過した方に最終面接を受けていただく、という採用コースです。通常の採用コースでは複数回面接を行いますが、こちらの面接は1回しかありません。
面接が1回しかないというのは、新卒採用としてはかなり斬新ですね。どのような意図で実施されたのですか?
コミュニケーションの基本はもちろんフェイス・トゥ・フェイスですし、学生には当行の雰囲気、行員の人柄を知ってほしいという思いもあります。ただ一方で、当行のビジネスは一般的な銀行と違い、お客さまと直接顔を合わせる機会はありません。それでも、顔が見えないお客さまのことを知り、またお客さまに当行のことを知ってもらわなければ、私たちのサービスは成り立たない。こういう会社だからこそ、企業と学生の間においても、あえて「直接会わずに魅力を伝え合う」試みに意味があると考えたのです。また、こうした試みを面白いと感じてくれる学生であれば、当行のビジネスとの親和性も高いでしょう。
企画書採用の成果はいかがでしたか?
沢山の方にご応募をいただき、一定数の内定を出すこともできました。通常採用による内定者と比べて大きな差異もなく、良い人を採れたと感じています。企画書採用のほうが良かった点は、貴重な時間を割いて企画書を作成してくれているだけあって、当行に対する意欲が高い学生が多かったこと。今年は急遽オンライン面接となりましたが、内容の濃いコミュニケーションがとれたと思います。
先ほど離職率が非常に低いというお話がありましたが、社員の定着には選考時のマッチング、相互理解が重要だといわれます。その点ではどのようなことを注力されていますか?
私たちは「当行にマッチする人しか採用しない」という方針を貫いています。人を採用するということは、その人の労働時間だけではなく、ある意味では「人生」を買うことだと私は考えています。行員には、人生のうち長い時間を占める仕事の時間を、苦しい時間ではなく、楽しい時間にしてほしい。だからこそ、当行の仕事、社風に適した人を厳選しているのです。当行では目標の採用人数を定めていません。適切な人材と出会えなければ、採用人数は「0」でもいい。これは私が入行したとき、経営層と約束したことです。
「採用人数0名でもいい」というのは、相当勇気のいる判断ですね。
さすがに0名採用だった年はないのですが、かなり人数を絞る場合があるのは事実です。
学生とのマッチングを図る上で、具体的にはどのような施策をとられていますか?
まず、面接は最低でも40分、長ければ1時間程度、ゆとりをもって話をしています。なるべく自然に会話できるよう、極力面接中にメモを取ったり、エントリーシートを見たりはしません。メモを取らなくても、合格する学生のことは不思議と鮮明に記憶に残るものですね。また、面接以外のフォロー面談や座談会などもたくさん行います。回数の制限は設けず、学生が「こういう行員に会いたい」と希望すれば、それに合った人物を選んで引き合わせています。
相当のマンパワーを割いて、学生とのコミュニケーションに注力されているのですね。
通常の金融機関と違い、インターネット銀行はいつでも訪ねていける窓口もないですし、どんな仕事をしているのかも外からは見えにくい。その分、応募者が納得いくまでしっかり当行のことを伝えたいのです。就職、とりわけ最初の就職というのは人生を左右する大きな決断です。もしかすると、入行後にうまくいかないこともあるかもしれない。でも、そのとき責任をとれるのは、会社を選んだ自分自身だけです。就職に限らず、ビジネスもプライベートも、自分で決め、自分で責任をとるべきものですし、少なくとも当行の行員はそういう姿勢で仕事に取り組んでいる。「じぶんの道はじぶんで切り拓く」という採用スローガンには、そうした思いが込められています。
貴社の定着率が高い理由がわかったような気がします。最後に、今後の採用活動に向けての展望をお聞かせいただけますか。
当行の行員は中途入行の人が多く、新卒行員の割合はまだまだ少ないのが現状です。積極的に行動できる新卒行員がたくさん加われば、会社のカルチャーが大きく変化し、ビジネスも次の面白いステージに入るのではないか、というのが経営陣と共有している人材戦略の展望です。auじぶん銀行は「携帯・スマホで銀行を利用する」という文化を切り拓いてきた歴史がありますが、技術の進化に伴い金融の世界はまだ変化し続けています。数年後にはインターネット銀行が主流になるかも知れないし、新しい時代の礎を築く力が当行にはあると信じています。そのために欠かせない仲間を増やしていくことが、私たち人事の役目。責任もやりがいも非常に大きいと感じます。
Special Feature 01
人材データを蓄積し、その後の採用可能性につなげていく「タレントプール」。
新たな採用手法の実現方法を紐解きます。
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