HR INFORMATION
自らエンゲージメントを高める人材を採用したい。ジョブ・クラフティングを採用に取り入れる
シリーズ|エンゲージメントとジョブ・クラフティング
近年、人事領域で注目を集める「ワーク・エンゲージメント」。仕事に熱中し、やりがい(働きがい)を感じながら、働くことにのめり込んでいる状態を指す言葉です。これを構成する要素の中でも、個人のエンゲージメントを高めるには、その人が持つ、仕事を手づくりする力=「ジョブ・クラフティング」という行動特性がカギであることがわかってきました。
今回は、自律的・自発的に成果を創出する人材を見極めるための視点であるジョブ・クラフティングにフォーカスし、採用シーンでの取り入れ方をご紹介していきます。
エンゲージメントとジョブ・クラフティングの関係性
そもそもエンゲージメントとは、“人のこころがポジティブで充実した状態”であることを指し、仕事においては、“仕事に熱中したり、やりがいを感じながら、働くことにのめり込んでいる状態”となります。これを「ワーク・エンゲージメント」と呼び、従業員のワーク・エンゲージメントを高めることは企業業績や生産性の向上につながることが示されています。その一方で、これまで人事領域におけるエンゲージメントは、組織改善の方向からアプローチすることが主流で、採用時に注目すべき個人のエンゲージメントは、人の内面的な取り扱いであることから難しいと考えられてきました。しかし近年、社員一人ひとりが仕事や業務にエンゲージする「ジョブ・エンゲージメント」が注目され、それを高める行動特性として「ジョブ・クラフティング」の研究が進んでいます。
ジョブ・クラフティングを直訳すると、「仕事を手づくりすること」と表されます。わかりやすく言うと、「(働いている人自身が)仕事を自ら創意工夫し、変化させること」を指します。これは個人の行動や思考の「癖」のようなものであり、例えばアサインされた仕事の中で、資料を取り出しやすいように整理の方法を工夫する、同僚に仕事内容をきちんと伝えるための言い方を考える、苦手な仕事を任されたときに自分の強みを活かすやり方を考える、など、わたしたちが日頃から行っていることです。このように、自分で積極的に考え、何らかの工夫を加えてみることで仕事に対するエンゲージメントは高まり、その人が生み出す成果の高さにつながることがわかっています。採用においては、この「癖」が身についている人材かどうかを見極めることが求められています。
ジョブ・クラフティングを採用選考で測定する
ダイバーシティ、価値観の多様化、人材の流動化、コミュニケーションの変化といった近年の情勢をうけ、入社後の育成において、知識やスキルの習得以上に仕事や働くことに対する意識改革を課題と認識している企業が増えてきました。会社から与えられることを一方的に求めるのではなく、社員が自ら成果創出に取り組む組織を目指すために、エンゲージメントを高める行動特性であるジョブ・クラフティングの注目度はますます上がっていくと考えられます。
しかし、これらを採用プロセスに組み込む際、面接の限られた時間で応募者の特性を見極めるのは難しいことです。そこで定量的・科学的な指標が求められる中で、ぜひご活用いただきたいのが適性検査です。応募者の強みや弱みを全体感として捉えることができるため、その結果をもとに面接で質問することで、選考の解像度を高めることができます。適性検査と面接で得られる情報を総合的に判断し、見極めを行っていくことが重要です。
適性検査では経験を科学的に把握
ジョブ・クラフティングを測定する適性検査では、新しい仕事や課題への取り組み方・考え方を、これまで(学生時代など)の経験から確認する質問項目が用意されています。これらを多角的に判断し、ジョブ・クラフティングの力を持っているのか、またどのような種類のジョブ・クラフティングに強みがあるのか(反対に弱みがあるのか)などを確認することで、物事にのめり込むことができる人材なのかを見極める材料にします。また、同時にジョブ・エンゲージメントタイプと呼ばれる仕事との相性を測定できる適性検査では、本人の適性が「自社の仕事や採用職種にマッチするか?」を確認することができます。
面接では適性検査の結果をもとに質問する
面接では、「過去に、熱中したり、のめり込んだりした経験があるかどうか」「その経験は具体的にどのようなプロセスだったのか」を確認することが有効です。適性検査の結果をもとに、例えばプロセスのジョブ・クラフティングが高い結果が出た人に対しては、上記の質問に「やり方を工夫した点があるか」の視点を加えることで、より深堀することができます。反対に、いずれの種類もジョブ・クラフティングが低い結果が出た人に対しては、「主体的・積極的に取り組んだ経験があるか」に重点を置くと効果的です。このとき、成り行きや他人の考えへの便乗ではなく「自主的に考えているか、行動しているか」の視点を重視します。そのために、「その取り組みはまず何から始めましたか?」「その後、どのように考え、どのように工夫しましたか?」など、具体的なプロセスを順番に確認することを意識しましょう。
適性検査・面接の両方に共通するポイントは、ジョブ・クラフティングは「自分で考えること」を重視するという点です。過去の経験の中で、積極的に継続して取り組んだこと、自分で考えて工夫をしたことがあるかどうかを確認することで、新しい環境や課題に適切に対応できるクラフティングの力を見極めることができます。応募者の過去のクラフティングのプロセスを聞くことで、その人が入社後、自社の仕事にのめり込んでいる姿を想像できるかどうかは、採用選考における大きな判断材料になると言えるでしょう。
まとめ
ジョブ・クラフティングは、人材育成の視点から開発可能な要素と言われていますが、採用時にその人のジョブ・クラフティングの傾向を把握しておくことは、持続的にエンゲージメントの高い組織づくりにつながっていきます。仕事にエンゲージできる人材を獲得することは、今後の人材戦略にとって重要な側面を担っていくと言えそうです。
現有社員の育成や人材開発はもちろん、採用を含めた人事施策全体に、ジョブ・クラフティングの視点を導入することが重要と考えられます。
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