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Interview

事業も採用も、アパレル業界の枠を超えて――
TSIが挑む、パーパス&キャリア重視型採用

RECRUITMENT

Published on 2023/07/07

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Profile

金井 健悟Kengo Kanai

株式会社TSI
コーポレート本部 総合人事部
人事-HRBP 課長

2011年に入社。販売部門のマネジメント・人事、グループの事業会社の人事に従事したのち、2019年より現職。採用、人員配置を担当する。

TSIは、グループ全体で約50にのぼるファッションブランドを展開し、幅広い顧客から支持を集める大手アパレル企業。近年は「ファッションエンターテインメントの力で、世界の共感と社会的価値を生み出す。」というパーパスを掲げ、アパレルの枠にとどまらない事業展開も見せています。そんな同社の採用チームが目指すのは、パーパスへの共感と入社後のキャリア形成を見据えた採用。そのために販売職・総合職のコース別採用や、職種別インターンシップ、入社後のキャリアを語り合う面談など、アパレル業界の慣習にとらわれない施策を次々と打ち出しています。入社後の育成と一体化した採用の狙いについて、課長として幅広い人事業務を手がける金井様にお話を伺いました。

事業変革に伴い、パーパスと人事ポリシーを策定

まず、改めて貴社の事業内容とその特徴についてご紹介いただけますか?

TSIグループはおよそ50のファッションブランドを展開するアパレルメーカーです。他の多くのメーカーと違うところは、幅広いお客様を対象とした個性的なブランドを多数持っていること。レディスの通勤着から、カジュアル系、ストリート系、さらにはゴルフアパレルなどのスポーツ系アパレルまで、あらゆるニーズに対応できることはTSIの強みとなっています。

近年、貴社では「ファッションエンターテインメントの力で、世界の共感と社会的価値を生み出す。」というパーパスを掲げ、サイトには「脱アパレルonly企業」というキーワードも記載されています。これにはどのような意図が込められているのでしょうか?

現在、当社は、ファッションを主軸に起きながらも、その周辺のエンターテインメント体験にも事業領域を広げています。特にアパレルブランドを起点としたコミュニティづくりなどはすでに実績が多く、例えばゴルフアパレルと連動したゴルフコンペや、スケートボードブランドを通じたスケボーの世界大会とのコラボレーションなどを行っています。さらに、地方創生やSDGsなど、社会貢献に関わる活動にも積極的に取り組んでいます。

事業変革に取り組む貴社において、採用活動はどのような位置づけにあるのでしょうか。採用ポリシーや採用の特徴について教えてください。

先ほどお話ししたパーパスに共感いただける人材にご入社いただくことが、採用における第一の目標です。また、2023年3月にはTSIグループの「人事ポリシー」を策定し、パーパスを実現するために大切にしたい6つの価値観と約束(The 6 Values and Promises)を定めました。この人事ポリシーは社員の行動評価の基準であると同時に、採用においても重要な基準として活用しています。当社は2021年、複数社に分かれていた事業会社・機能会社の合併を行いました。合併後に企業と社員の目指す在り方を統一するため、こうしたパーパスやポリシーの策定は不可欠だったのです。

コース別採用やインターンシップにより、入社後のキャリアを明確化

貴社は販売職と総合職の2コースに分けて新卒採用を実施されています。ここにはどのような意図があるのでしょうか。

おっしゃるとおり、当社は店舗での販売を主業務とする「販売職」と、それ以外の「総合職」に分けて採用を行っています。総合職に含まれる職種は、事業部門やデジタル部門、人事総務やITなどのコーポレート部門や、生産部門など。販売職と総合職とでは求める人物像も採用基準も異なるため、選考フローも別に設けています。例えば販売職採用では人柄やブランドへの想いを見極めるため、応募書類にコーディネート写真を添付していただいたり、面接ではパーソナリティの深掘りをメインとした対話を重視したりしています。一方の総合職採用では、ビジネス的な視線の高さや業務への意識を見極めるため、書類選考では文面を重視し、面接での質問もビジネス的な要素が強くなります。

アパレル業界ではコース別採用を行う企業が比較的少なく、総合職のみで採用するケースが多いと聞きます。

新入社員はいったん全員が販売職に就き、その後適性に応じて別部署に異動するという企業が多いようですね。しかし、この手法では、全社員が店舗経験を積める反面、「早く販売職以外の職種にチャレンジしたい」という学生のニーズに応えることはできませんし、総合職に関心を持つ学生からの応募が減ることは、我々にとっても損失です。事実、販売職と総合職とでコースを分けると、販売職にはファッションに強い関心をもつ方が応募する一方、総合職コースには当社のビジネスに関心をもつ学生が応募してくださいます。学生の中には、「アパレルメーカーで働きたいが、販売スタッフを経験した後に本社の仕事に携われるかはわからない。最初から総合職で働けるアパレル企業を探してTSIを志望しました」という方が少なくありません。結果的に、販売職・総合職それぞれに適した優秀な人材を確保しやすくなっていると感じますし、学生にとっても、入社後のキャリアに不安を持たず入社できるメリットが生まれているのではないでしょうか。

金井様は人員配置にも携われています。貴社では新入社員のキャリア構築についてはどのような考えをお持ちなのでしょうか。

総合職で入社された方には、まずはお客接点の最前線である販売を半年程度経験したのちに、ジョブローテーションでさまざまな業務を経験しながらキャリアを積んでいただきます。メンバーシップ型のキャリアパスではありますが、旧来の日本企業のように人事部が人事権を掌握しているわけではなく、自己申告制度、社内公募制度などを利用して希望のキャリアを実現できることが当社の特長です。新卒3年目で別事業部に異動する人も珍しくありません。

2024卒からはインターンシップも本格的に始められたそうですね。ここにはどのような狙いがあるのでしょうか。

当社でも従来から1dayのイベントは実施していたのですが、実際には販売職を対象とした会社紹介に近いものでした。アパレル業界では伝統的に服飾系の専門学校などと連携した採用が強いこともあり、四大生向けのインターンシップを行う企業が比較的少ないようです。しかし、当社では総合職に特化した採用を行っていますので、販売職以外の情報をもっと伝えなければならないと考え、本格的なインターンシップを立ち上げました。直近では「事業戦略」や「人事」など、職種ごとの詳細情報を伝えるインターンシップを実施しています。参加者からは「アパレル業界のインターンシップの中で、これほどビジネス色の濃いものは初めてでした!」といった好意的な声が寄せられています。今後は実務体験型の長期インターンシップやジョブ型を取り入れた雇用の在り方なども視野に入れ、求める人材とのマッチングに注力したいと考えています。

人的資本経営の実現を目指して

入社後のキャリア形成に関心を持つ学生が増えている現状を踏まえた、効果的な施策だと感じます。他に、学生の入社後の不安を払拭するために工夫していることがあれば教えてください。

最終面接の前に、人事と応募者が一対一で面談を行っています。最終面接まで残った候補者は、私たち人事としてはぜひ入社してほしい人ばかり。面接時に魅力を出し切ることができるよう、人事からできる限りのアドバイスをしています。同時に、学生が抱いている疑問や不安についてもしっかり聞き取り、率直に回答します。その際、入社後のキャリアについて、必ずしも自分の希望の部署に行けるとは限らないということも、正直に伝えています。こうした面談の甲斐もあり、学生からは「面談の場を設けていただき、助かりました」という声もいただくなど、納得感をもって入社を決断いただけていると感じます。

今後の採用活動や、人事業務全般に向けての展望についてお話しいただけますか。

今、人的資本経営というキーワードが人事領域で注目されています。当社も東証プライム市場に上場している企業ですので、もちろんこの考え方に則った取り組みを推進しています。とはいえ、日本企業は先進国の中で「人」に対する投資が最低レベルといわれているのが現状。人事制度など、まだまだ改善すべき点は多くあります。さらに将来的には、データ分析などのHRテクノロジーを駆使し、「個」にフォーカスした新しい人事施策にも挑戦してみたいと考えています。つまり、社員各自のキャリアを支援し、「個」としての市場価値を高め、その結果を組織全体のパフォーマンスアップにつなげていくという戦略です。

アパレル業界だけでなく、日本企業全体を見渡しても、先進的な戦略といえそうです。

もちろん、このビジョンを実現できるのは技術的にももう少し先になりそうですが、今の日本企業にはそうした変化が必要だと私は考えています。応募者の皆さんには、TSIが社員一人ひとりのキャリアを支援する企業であること、そして改めて「ファッションの力を信じよう」という言葉を伝えたいですね。ファッションが好きな人は今もたくさんいますが、それを仕事にしようという人は減りつつあります。しかし、当社が提供しているファッションやそれにまつわるサービスには、多くの人々に喜びを与える力があります。採用活動では、そうしたファッションの価値もしっかり啓蒙していきたいと想います。


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