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個人のエンゲージメントは開発できる。行動特性「ジョブ・クラフティング」の重要性

シリーズ|エンゲージメントとジョブ・クラフティング

Published on 2022/11/04

近年、人事領域で注目を集める「ワーク・エンゲージメント」。仕事に熱中し、やりがい(働きがい)を感じながら、働くことにのめり込んでいる状態を指す言葉です。人的資本開示の潮流も後押しし、企業は社員のワーク・エンゲージメント向上が求められる中、会社や組織に対するのめり込みだけではなく、仕事や業務に対するのめり込みを高める「ジョブ・クラフティング」という行動特性がカギであることがわかってきました。

 

今回は、ワーク・エンゲージメントを構成する要素を紐解きながら、近年注目される「ジョブ・クラフティング」の重要性を解説します。

「エンプロイー・エンゲージメント」と「ジョブ・エンゲージメント」

そもそもエンゲージメントとは、“人のこころがポジティブで充実した状態”であることを指し、仕事においては、“仕事に熱中したり、やりがいを感じながら、働くことにのめり込んでいる状態”となります。これを「ワーク・エンゲージメント」と呼び、従業員のワーク・エンゲージメントを高めることは企業業績や生産性の向上につながることが示されています。

 

画像2

 

上の図は、ワーク・エンゲージメントの構造を表したものです。ワーク・エンゲージメントには大きく4つの要素が関わっています。

 

「組織風土」とは、職場の雰囲気、暗黙のルールなど、明文化されていないものを指します。その組織に所属している、あるいは所属していた人たちの考えや行動が積み重なって形成されたものであり、なかなか変えることは難しいと言われています。いわば、「会社・組織との相性」のようなものです。一方で、「組織資源」とは、仕事の中身や人間関係、組織制度といったチームを円滑にするための手法のことで、明文化されていることが特徴です。つまり、個人が活用できる「会社・組織の資源」を指しています。この2つは、どちらも会社・組織へののめり込み=エンプロイー・エンゲージメントに影響する要素です。エンプロイー・エンゲージメントの高い組織では、従業員が「ここで働くことが誇らしい」と感じています。

 

一方で個人の仕事・職務へののめり込み=ジョブ・エンゲージメントは、「ジョブ・エンゲージメントタイプ(=仕事との相性)」と「ジョブ・クラフティング(=仕事を手づくりする力)」が影響しています。

これからのエンゲージメントは「組織」と「個人」の2軸がカギ

これまで人事領域におけるエンゲージメントは、組織改善の方向からアプローチすることが主流で、個人のエンゲージメントは人の内面的な取り扱いであることなどを理由に、組織が施策を打つことは難しいと考えられてきました。そのため、エンゲージメント・サーベイ(社員のエンゲージメント状態を測定するアセスメントツール)で社員のエンゲージメント状態や「組織風土」「組織資源」について把握し、その結果に基づいて待遇や職場環境を改善したり、イベントや飲み会で士気を高めたりといった対応がなされてきました。

 

しかし上の図からわかるように、ワーク・エンゲージメントには、会社・組織の要素だけではなく、仕事・職務の要素も大きく影響します。一人ひとりがエンゲージメントを高めるためには、組織改善だけではなく、ジョブ・エンゲージメントへのアプローチが欠かせません。

 

そのカギを握るとされ、近年研究が進んでいるのが、仕事を手づくりする力である「ジョブ・クラフティング」です。これは、働いている人自身が仕事に変化を加えることを意味し、身近な例では、資料を取り出しやすいように整理の方法を工夫する、同僚に仕事内容をきちんと伝えるための言い方を考える、苦手な仕事を任されたときに自分の強みを活かす方法を考える、などが挙げられます。ジョブ・クラフティングが高い人ほどストレス状態が良好になり、エンゲージメントが高まることが判明しています。またジョブ・クラフティングは個人がもつ行動や思考の癖のようなものであり、開発が可能です。この点が特に、画期的だとして、エンゲージメント向上を目指す企業の間で注目されています。

エンゲージメントは「個」の状態を指す

エンゲージメントが人材マネジメント領域で注目されるにともない、「エンゲージメント=従業員と組織の結びつき・関係性」という説明も多く目にするようになりました。マーケティング用語の「エンゲージメント(=特定の企業や商品、ブランドに対して、高い好感を持ち、強い絆で結びついている状態」が転じたものと言われていますが、本来の語源とされる“仕事に従事する[engage in~]”の視点からみると、先に述べた通りエンゲージメントは“人のこころがポジティブで充実した状態”であることを指し、仕事においては、“仕事に熱中したり、やりがいを感じながら、働くことにのめり込んでいる状態”となります。

 

また、ワーク・エンゲージメントの概念を提唱したシャウフェリ教授は、ワーク・エンゲージメントを「熱意」「没頭」「活力」が揃った状態と定義しています。このように、エンゲージメントを“仕事にのめり込んでいる状態(個人の状態)”と捉えることで、個人のジョブ・エンゲージメントを高めるジョブ・クラフティングの視点も取り入れやすくなります。

まとめ

エンゲージメント向上により企業を活性化させるためには、「組織」と「個人」の両輪でアプローチを行っていくことが必要です。ワーク・エンゲージメントの構成や本来の意味をいま一度整理し、自社の人事施策への活用をご検討いただければと存じます。


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