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Interview

計測器大手・小野測器の新卒社員が辞めない理由。
相互コミュニケーションを重視した採用戦略

Published on 2021/11/19

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Profile

宮 理絵Rie Miya

株式会社小野測器
総務人事ブロック 人財開発グループ

2017年、株式会社小野測器に入社。入社1年目より人財開発グループに所属し、新卒採用の主力メンバーとして、採用計画・運営に幅広く携わる。

伊藤 佳穂Kaho Ito

株式会社小野測器
総務人事ブロック 人財開発グループ

2020年、株式会社小野測器に入社。入社1年目より人財開発グループに所属し、新卒採用の運営および新人研修の事務局運営業務に従事する。

「産業のマザーツール」と呼ばれ、あらゆる製品の開発に欠かせない計測器。株式会社小野測器は、自動車業界をメインユーザーとして多彩な計測技術や製品を生み出している、計測器業界のリーディングカンパニーです。近年はEV・HVなどの次世代自動車の試験にも注力すると同時に、音響・振動分野のエキスパートとして家電製品等の開発にも貢献しています。そんな同社の人財ポリシーは「正確性や信頼性を求められる計測器メーカーに相応しい、誠実で実直な人を採用したい」というもの。そしてそのために、採用チーム自身も実直を旨とした採用活動を実践していると言います。その結果、新卒入社者の3年以内離職率はわずか3.9パーセント(2021年11月時点)。驚異的なマッチング精度の秘けつを、人財開発グループの宮様・伊藤様にお伺いしました。

「RJP」を先取りした、情報開示の信念

貴社は「産業のマザーツール」というべき測定器の開発に長年打ち込まれ、自動車産業をはじめ日本のものづくりを支えてきました。こうした事業内容や企業理念は、貴社の採用ポリシーにどのように影響しているのでしょうか。

宮:
小野測器の経営理念に「先義後利」という言葉があります。当社はその言葉通り、利益よりも先に社会貢献を重んじて事業を営んできました。こうした考え方はマザーツールカンパニーである当社を特徴づけるものであると同時に、人材計画のベースにもなっていると思います。例えば当社は働く人材に「誠実で実直であること」を求めます。それは学生に対して期待する要件であると同時に、私たち採用チームも守るべき姿勢であると考えています。

誠実で実直な採用というのは、具体的にはどのようなものですか?

伊藤:
自社のことを過度に良く見せようとせず、誠実に自社の姿を開示することを大切にしています。そうして学生と真摯に向き合うことが、確かなマッチングにつながると考えるからです。一人ひとりの学生とのコミュニケーションを深めることを母集団形成以上に重視しています。

近年注目を集めているRJP(Realistic Job Preview=現実的な仕事情報の事前開示。マッチング精度向上の手法として知られる)の考え方に近いですね。

宮:
そうですね。ただしこの採用方針は当社の伝統的なもので、特にRJPという言葉を意識したものではありません。

採用ホームページにも「当社の選考には“会社を選ぶ”つもりで来てください!」というメッセージがありますね。誠実な情報開示への意志が感じられます。

宮:
企業側が一方的に学生を評価するのではなく、学生からも当社を評価し、判断してほしいと考えています。その結果、本当に当社の理念や仕事内容に賛同いただけた方に、自分の選択に自信を持って入社してほしいのです。

伊藤:
私が当社の選考を受けたのは数年前になりますが、当時も先輩社員との面談や座談会において、裏表のない正直なお話を聞くことができ、その誠実さが入社の決め手のひとつとなりました。私自身が採用担当となった今も、やはり学生には何事も正直に話すことを大切にしています。

「NG質問ナシ」の座談会で会社の姿を見せる

情報開示を徹底するためには、学生との接点づくりが重要になってくるかと思います。どのような取り組みをされているのでしょうか?

宮:
学生と社員が直接交流できる機会を増やすよう注力しています。特に、社員の「素」の姿を見てもらいやすいオンライン座談会は、同規模の企業と比べても多く実施しているのではないかと思います。

座談会はどのようなタイミングで行うのですか?

伊藤:
さまざまなタイミングで実施しています。インターンシップの実施期間中にも任意参加というかたちで座談会を開いていますし、会社説明会の一部としても座談会をプログラムしています。また、内定を出す前のタイミングでも複数回、さらに内定者懇親会としても座談会を開いています。

相当数の社員の協力を得なければ、実現できない回数ですね。

伊藤:
参加する社員の数は、延べ人数でいうと100人は下らないと思います。

なぜそこまでマンパワーをかけて座談会に注力されているのですか?

宮:
当社は測定器メーカーとしてはトップクラスのシェアを持つ企業ですが、B to B企業という特性上、特に文系学生からの知名度は高くありません。彼らに当社の理念や魅力を知っていただくには、一方的な情報発信ではなく、社員と直接交流してもらうのが一番だと考えています。

伊藤:
座談会は、回数だけではなく情報交換の「質」にもこだわっています。例えば当社の座談会には「NGの質問」はありません。どのような質問にも、真摯に答えるようにしています。

座談会では、どのような質問が挙がりますか?

伊藤:
技術職の場合、よくあるのは「自分の学んだ専門分野が仕事でどう活かせるか。配属希望はどのようなかたちで実現するか」といった、業務に関する質問ですね。あとは、福利厚生の満足度や待遇面など社内制度に関する質問も多いです。

確かに福利厚生や待遇面も、応募者にとっては重要な情報ですよね。ところで貴社では技術職採用の割合が高いと思いますが、理系の学生に特化した施策があれば、お聞かせください。

宮:
例年、当社では全体の7割程度を技術職として採用していますが、インターンシップのテーマ設定は文系よりも細分化し、各分野に特化した内容にしています。また、従来からつながりのある大学や研究室へのアプローチも重視しており、卒業生の若手社員によるリファラル採用を行っています。また、昨今は学会活動を通して、会員の学生から興味を持っていただけるケースも増えてきました。

相互コミュニケーションを重視した採用が生む、圧倒的定着率

貴社ではインターンシップを採用活動の中でどのように位置づけられていますか?

宮:
インターンシップは、あくまで企業研究中の学生に業界や当社の情報をお伝えするイベントであり、参加された方の選考ステップを短縮する優遇措置は現状行っていません。とはいえ、インターンシップに参加した方は総じて当社への理解が深く、内定につながるケースが多いのも事実です。そういう意味で、インターンシップは座談会同様、当社のことを深く理解していただくとともに、学生の皆さんの考えや思いを当社が知ることができる機会として重視しています。

そうした意図を実現するため、2023シーズンの夏季インターンシップではどのような工夫をされましたか?

伊藤:
昨年から大きく変更した点としては、開催日程を1dayから2daysに延ばしたことが挙げられます。日数を増やした分、1回の時間を短くすることで、オンライン開催であっても集中力を維持しやすい環境がご用意できたと感じています。プログラムの内容は、1日目に業界研究と会社紹介、2日目にテーマ別ワークショップと座談会という流れです。

宮:
特に理系コースでは、当社で作っている実機を画面越しに、可能な限りリアルに近いかたちで見ていただき、自社製品の魅力を伝えられるよう配慮しました。当社の販促チームがオンライン配信に使っている撮影スタジオを活用したおかげで、クオリティの高い生中継ができたと思います。また、講師には現場で活躍する中堅・ベテラン社員を起用し、学生とインタラクティブな交流をしてもらいました。学生からの質問も多く挙がり、盛り上がったと思います。アンケートでも「想像以上に多くの情報を得ることができた」という評価が多く見られました。

一方で、冬季インターンシップはどのようなプログラムになりますか?

宮:
冬春期間は学生も忙しくなるため、1dayのプログラムを計画しています。テーマとして設けるのは、大変革期を迎えた自動車業界における当社の課題と展望を伝えること。EVシフト、カーボンフリーといった時代の変化を受け、計測器メーカーに求められる役割や技術は大きく変わりつつあります。AIやIoTによる「第4次産業革命」の真っただ中にある今、計測器メーカーが持つチャンスがいかに大きいのか、しっかりお伝えしたいと考えています。

さまざまな施策を通じて学生とコミュニケーションをとる誠実な姿勢が、お話を通してよくわかりました。こうした採用戦略は十分な「成果」につながっているとお考えでしょうか。

宮:
先にお話しした通り、採用担当の他、多くの社員の支援があるおかげで、個別の学生に時間をかけて対応することができていますし、それが結果的に「納得して入社すること」につながっているのではないか、と思います。新卒入社社員の3年以内離職率が3.9%パーセントという水準であることが、その成果と言えるかもしれません。

素晴らしい数値ですね。慎重にマッチングを図った成果だと思います。最後に、今後の採用活動に向けての抱負をお聞かせいただけますか。

伊藤:
私の場合は採用チームに参加した当初から採用がオンライン化されていたので、学生とのコミュニケーションも主にオンラインでおこなってきました。今後は対面で学生と接する機会も徐々に増え、オンラインとは異なる対応力やコミュニケーション能力が求められると思います。そのことを意識しつつ、しっかり経験を積みたいです。また、現在は採用と同時に新入社員への教育にも携わっているので、そこで学んだことを活かして、入社後のことも見据えた採用をしていきたいと思います。

宮:
近年、採用環境は様々なニーズへの対応が求められています。例えば、地元で働きたいという学生が増えていることに対し、当社では地域別採用を行っています。多様化するニーズに応えられるよう、常に変化に対応できる採用を行っていきたいです。中長期的には、新卒採用だけでなく、中途採用なども含めて幅広い採用活動にチャレンジし、採用担当としてのキャリアを積んでいければと考えています。

 

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※所属・内容は取材当時のものです


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