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Marketing Magazine

【17シーズン→24シーズン比較】「早期の接点が何よりも重要」は本当か?

Published on 2023/06/02

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採用活動/就職活動の早期化が進む昨今の新卒市場。今回は、2017から2024シーズンまでの8年間のデータをもとに、今後の採用活動について考えていきます。

 

3月より前のプレエントリー割合、8年連続増加

 

現行の3月採用広報開始、6月選考開始の採用スケジュールになったのは2017シーズン。当時は3月1日午前0時になった瞬間に大手就職情報サイト(ナビ媒体)や各社の本選考マイページがオープンし、学生は一斉にプレエントリーを行うことが一般的でした。しかし、経団連が策定していた「採用選考に関する企業の倫理憲章」(2016シーズンからは「採用選考に関する指針」に名称を変更)が2020シーズンをもって形骸化を理由に廃止されたことに象徴されるように、現在は採用活動の早期化がますます進んでいます。

 

プレエントリー時期の内訳の推移

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[集計対象・算出方法]
i-webを17シーズンから24シーズンまで継続利用いただいている企業様を対象とし、シーズンごとに、対象企業各社の3月10日時点のプレエントリー数を「100」として、2月末までのプレエントリー数、3月1日~3月10日までのプレエントリー数を集計し、その割合を算出

 

上記のグラフは各シーズンの3月10日時点のプレエントリーを「100」としたときのプレエントリー時期(「2月以前」か「3月1日~10日」か)の内訳を示したものです。2月以前の割合が継続して増えており、2024シーズンにおいては、3月10までのプレエントリーの75.0%が2月以前に行われていることがわかります。背景として、インターンシップ(オープンカンパニーも含む)が広く普及し、早期の接点や早期の選考に注力する企業が年々増加したことで、企業・学生双方の動き出しが前倒しされたことが窺えます。その他の理由として、2021シーズンより影響を受けたコロナ禍で、採用活動や社会情勢への懸念から早期に動き出す学生が増加したこと、この頃から、大手就職情報サイトにおける前年4月~5月からの情報開示がみられたこと等、複合的な要因が考えられます。また、2017シーズン~2024シーズンまでの結果をみると、前倒しの傾向は年々ゆるやかになっており、一定の数値を超えたという見方もあります。

 

このようなデータが説明されるとき、他社や学生の動きが早期化したことを受け、「早期の接点が何よりも重要」「早期の選考で採用できなければその後は厳しい」という意見が唱えられることがしばしばあります。しかし、下記のグラフをみると、応募者へのアプローチ時期について、新たな見方をすることもできそうです。

 

最終合格者のプレエントリー時期は6月、3月がメイン

 

最終面接合格者のプレエントリー時期(2023シーズン)

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[集計対象・算出方法]
i-webをご利用いただいている企業のうち、23シーズン(2022年8月末時点)において最終面接合格者が1名以上決定している企業様を対象とし、最終面接合格者がプレエントリーした時期について、各企業の該当者数を時期別に集計し、その割合を算出

 

上記のグラフは2023シーズン本選考の最終面接合格者のプレエントリー時期を表したものです。プレエントリーが最も多い時期はインターンシップを見据えた6月で22.3%となっています。しかし、次いで多いのは3月で17.5%。採用広報開始のタイミングとなっています。この背景には、選考辞退・内定辞退の増加により採用計画の変化で、選考を複数クール行う企業が増えていること、また学生側もこの頃に志望業界を見直し、応募企業を増やす傾向が一定数あることが推察できます。つまり、早期にプレエントリーを行っている学生だけにターゲットを絞るのではなく、歩留まりや内定受諾を鑑みながら、その後に接点をもった学生に対しても、本選考につなげるアプローチを行うことが、採用成否を左右すると言えるのではないでしょうか。

 

企業は、インターンシップ期から選考期を終えるまで、日々志望度合いや企業理解の度合いが異なるさまざまな候補者と出会い続けることになります。早期化によって出会う、インターンシップ期から長期にわたって接点をもち続ける学生はもちろん、その後の接点で流入する学生を見据えた接点設計の視点も、これからの採用活動のカギとなりそうです。

 

 

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ヒューマネージでは、毎月の採用動向をまとめた『Monthly HR AGE』を発行しています。2023年5月号は、2024シーズン本選考/2025シーズン夏季インターンシップ 採用動向、特集「2025シーズン向け 企業データでみるインターンシップの現在」、企業インタビューなどより詳しいマーケット情報やお役立ち情報をお届けしています。レポートの詳細、ダウンロードは以下よりお願い申しあげます。

 

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出典:『Monthly HR AGE 2023年5月号』

Profile

永野 史彰Fumiaki Nagano

株式会社ヒューマネージ コンサルタント

慶応義塾大学卒業後、保証会社で勤務したのち、桜美林大学大学院心理学研究科で臨床心理学を専攻。2019年にヒューマネージに入社し、企業の採用活動や適性アセスメント、タレントマネジメントにおける統計分析業務やサービス開発に携わる。臨床心理士・公認心理師(国家資格)・産業カウンセラーの資格を保有。


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