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インターンシップが選考応募に与える影響――2024シーズン 応募者データ分析より
RECRUITMENT
採用活動におけるインターンシップの存在感は年々増し、産学協議会の報告書が示したインターンシップの区分について、いままさに検討を続けている企業も多数いらっしゃいます。今回は多くの採用ご担当者から関心が寄せられている「インターンシップの参加が本選考への応募にどのように影響するのか」についての調査をもとに、インターンシップを通した応募者との関係育成について考えていきます。
インターンシップ参加者は本選考に応募する割合が高い傾向に
夏季インターンシップ参加有無別選考応募率
[集計対象]
i-webをご利用いただいている企業のうち、24シーズンに夏季もしくは冬季インターンシップを実施した企業様
[算出方法]
夏季・冬季インターンシップについて、合格者(選考あり)/不合格者(選考あり)/参加者(選考なし)/未応募者のそれぞれが、本選考に応募した割合を集計し、その平均を算出
上の表は、夏季および冬季インターンシップに合格(選考あり)/不合格(選考あり)/参加(選考なし)未応募だった学生が、本選考に応募した割合を表したものです。インターンシップ応募状況を問わない本選考の応募率は全体で17.6%という結果を基準として、それぞれの応募率をみていきます。
まず夏季インターンシップについて、選考ありのインターンシップに合格した学生の5割近くが、本選考に応募していることがわかりました。対して不合格の学生の応募率は2割程度にとどまっています。選考なしのインターンシップの参加者については4割、未応募の学生は1割強という結果になりました。これは昨シーズンと比較しても同水準の結果であり、夏季インターンシップに参加した学生は、参加していない学生と比較し、応募につながるケースが多いことが窺えます。
次に冬季インターンシップについては、選考ありのインターンシップ合格者のうち、6割を超える学生が本選考に応募していました。不合格者においても3割以上と、夏季インターンシップの不合格者の応募率を上回っており、選考期に近い冬季インターンシップは、本選考応募への影響が高いと考えられます。選考なしのインターンシップの参加者についても5割以上と夏季インターンシップの参加者を上回る一方で、未応募者については、夏季インターンシップの未応募者の本エントリー率と同程度の結果となりました。
選考につながるインターンシップとは?応募者との関係育成を考える
近年は学生の就職活動量が減少傾向にあることも影響し、有効母集団の形成に苦戦している声も多く聞かれますが、インターンシップに参加、もしくは応募している層はある程度自社に興味を持っていると言えます。彼ら彼女らを「志望度の高い応募者」に醸成していくことは有効母集団形成におけるひとつのポイントだと考えられ、インターンシップ実施にともなう最適なコミュニケーションを図っていくことが不可欠と考えられます。そのためには、大きく2つの側面から、施策を講じていくことが必要と言えます。
①「参加者」との関係育成
一つ目は、選考に向けた「参加者」との関係育成です。複数の企業のインターンシップに参加することが当たり前となった昨今では、参加しただけではなく、その場で手に入れた情報や感情を持ち帰り、参加者自身が自分の中でその気持ちを整理し、納得し、育てていくことが選考応募に不可欠な条件だと言えます。プログラムの充実はもちろんですが、参加後のサンクスメールから次回イベントの案内、また自社への理解を深めていくようなコンテンツ施策による魅力づけを継続的に行い、その期間の意欲醸成をフォローしていくことが求められます。インターンシップの期間に感じてもらったワクワク感やもっとこの企業のことを知りたい、といった気持ちを、選考に向けさらに高めていく……という一連の流れが、本質的な意味で「選考につながるインターンシップ」と言えるのではないでしょうか。
②「不合格者」との接点づくり
そしてもうひとつが、「不合格者」といかに接点を持ち続けるかという点です。大手人気企業の中には、「参加できない学生の志望度低下を防ぐため、参加人数が限られるインターンシップは実施しない」選択をしている企業もあるほど、不参加者へのフォローは今後の採用成果につながる重要なポイントであると言えます。一般的に、「インターンシップを受けないと、本選考の応募ができない(内定が得られない)」と認識している学生は一定数いるとされています。その対策として、例えばキャパシティの関係で選考による不合格者を出さざるを得ない企業では、「インターンシップは定員がかなり限られていること」「その他のイベントでぜひ会いたいと考えていること」をインターンシップのプログラムメールで伝えているケースも聞かれました。さらに内容を追体験できるWebセミナーを実施する、オンラインの質問会を開催するといった施策を行うケースもあります。インターンシップをよくあるフローのひとつではなく、「選考につなげる」ことを意識して実施している事例です。
このほかにも、インターンシップよりも後の時期に自社を知った層に向けた情報発信や、自社のことを知ってもらうための採用広報も有効です。企業からは「2025シーズンの学生は動き出しが早いだけではなく、就職活動への“意識”が早い」という声も聞かれ、早期から積極的にアプローチしていくことが、応募者の期待に応えることにもつながります。候補者をセグメントし、それぞれに対する施策を中期的な目線で設計することが重要と言えそうです。
2024シーズンの本選考と並行して、2025シーズン夏季インターンシップも本格化するいま。インターンシップを起点とした応募者とのコミュニケーション設計をご検討いただけますと幸いです。
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ヒューマネージでは、毎月の採用動向をまとめた『Monthly HR AGE』を発行しています。2023年7月号は、2024シーズン本選考/2025シーズン秋季インターンシップ 採用動向、特集「“自社らしさ”はどこにある?」、企業インタビューなどより詳しいマーケット情報やお役立ち情報をお届けしています。レポートの詳細、ダウンロードは以下よりお願い申しあげます。
出典:『Monthly HR AGE 2023年7月号』
Profile
永野 史彰Fumiaki Nagano
株式会社ヒューマネージ コンサルタント
慶応義塾大学卒業後、保証会社で勤務したのち、桜美林大学大学院心理学研究科で臨床心理学を専攻。2019年にヒューマネージに入社し、企業の採用活動や適性アセスメント、タレントマネジメントにおける統計分析業務やサービス開発に携わる。臨床心理士・公認心理師(国家資格)・産業カウンセラーの資格を保有。