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Marketing Magazine

キーワードは早期化とオンライン。データから考える、自社の魅力付けを強化する視点

Published on 2021/10/22

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今回は、2022シーズンの新卒採用のキーワード――「さらなる早期化」「オンラインの浸透」に注目し、データをもとに、今後求められる視点と施策について考察します。

 

キーワード① さらなる早期化

 

2022シーズンはインターンシップの本エントリー数(インターンシップの参加もしくはそのための選考に応募した人数)が大幅に増加しました。前シーズン(2021シーズン)と比較すると、6月上旬以降は一貫して伸びており、インターンシップへの応募がより活況となっていることが窺えます。これはオンライン化が進んだことにより、地方や海外の方を含めインターンシップ参加へのハードルが下がったことに加え、インターンシップが企業/学生にとって、採用活動/就職活動のスタートとして一般化している状況が窺えます。

 

文理別にみると、特に文系が活発化している傾向が見られました。コロナ禍によって理系学生向けの工場見学や実際に機器を触るプログラムが難しくなった一方で、文系学生は説明会とワークなど、オンライン開催が比較的容易なプログラムに切り替わったためだと予測できます。

 

インターンシップ本エントリー推移(全体)

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さて、一つ目のキーワード「さらなる早期化」について、本エントリー(選考における必須の説明会やエントリーシートの提出など、選考の初回アクション)の初回締切時期のグラフをみると、広報解禁より早い「2月以前」に増加し、前シーズンと比べ約15pt上がっています。数年前までは採用広報解禁日に合わせて本エントリーを開始する流れが一般的でしたが、インターンシップの早期化に合わせ、選考も早期化していることがわかります。

 

この傾向は企業群を問わず、大手・人気企業群、中堅・成長企業群とも、本エントリーの締め切りは2月以前にピークを迎えていました。

 

本エントリー初回締切時期(全体)

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キーワード② オンラインの浸透

 

次に、各採用フェーズにおける企業のオンライン活用についてみていきます。

 

まず、インターンシップの実施方法を開催時期別に見ると、いずれの時季においてもオンライン実施が大半を占めています。昨年4月の緊急事態宣言以降オンライン化を迫られた企業が、徐々にリアルとオンラインを使い分けるようになり、インターンシップのオンライン実施割合が増えていったと考えられます。

 

インターンシップ実施方法

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さらに、セミナーをWebで実施した企業は、9割近くに上っていました。必要に迫られてオンラインを導入した企業が多かった2022シーズンですが、「これまで出会えなかった地域の学生に出会えた」「交通費や移動時間なく説明会に参加できた」など、企業・学生双方のメリットも明らかになってきました。今後もWebセミナーは、採用活動のスタンダードになっていくと考えられます。

Webセミナー実施率

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面接に関しては一次面接のオンライン化が大きく増加し、8割近い企業が一次面接をオンラインで実施していました。一方、最終面接は半分近くの企業がリアルを重視した傾向がみられます。やはり一度はリアルで会いたいという企業・学生双方の意向があらわれており、今後もこの傾向は続いていくと考えられます。

面接実施方法

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最後に内定式に関しては、オンラインとリアルを「併用」する企業の割合が7割以上にまで増加していました。東京の本社近辺や関東の学生は感染対策をした上でリアルな内定式を行い、その様子を地方や海外の内定者に向けて配信するといった手法を実施する企業もみられます。選考同様、自社の状況に応じたリアルの使い分けが重要になっていくと言えそうです。

 

内定式実施方法

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マイページを活用した魅力付けで、継続的なフォローを

 

ここまで、2022シーズンのデータから、新卒採用の傾向をみてきました。早期化が進み、オンラインによる接点が一般化したいま、「早期から接点を持った学生をいかに取りこぼしなく選考~入社へつなげるか」そして「オンラインが中心となった接点の中で、いかに自社への関心や理解度を引き上げていくか」が重要と言えます。特に後者については、コロナ禍2年目を経て「見極めはオンラインでも問題ないが、インターンシップ期や選考期の魅力付けが十分行えていないのでは」といった企業側の懸念もしばしば聞かれるようになりました。リアルの接点が減少したことで、実際の会社の雰囲気を感じてもらったり、社員の魅力を伝え切れていない側面が考えられますが、これらは選考の歩留まりにはもちろん、入社後のギャップやミスマッチにもつながるものです。自社の“働く場”としての魅力を増幅させる働きかけを早期から行い、各フェーズに応じたフォローを通じて「この会社で働きたい」という気持ちを醸成してくことがカギを握ると考えられます。

 

そこで活用したいのが、早期からオープンしているマイページです。2023シーズンにおいても、インターンシップや採用サイト、就職情報サイトから流入する学生の受け皿として6月以前からマイページを公開している企業が増加しましたが(参考:2023シーズン、インターンシップ動向(企業と学生の動き))、ただ開けておくだけにとどまらず、継続的に情報発信を行うプラットフォームとして活用していくことをおすすめします。

 

例えば、インターンシップの申し込みがあった学生に対して当日に向けたスペシャルメッセージを配信する、企業理解を徐々に深められるコンテンツを週に一回更新するなど、定期的なログインを促す仕組みをつくる企業は増加しています。特に、就職活動のフェーズにあわせてヒントとなるような情報を発信しているケースは、学生のマイページログインが活発な傾向にあり、企業との接点価値を高める一因のようです。中には内定者からアンケートを集め、業界研究や企業研究、自己分析などのコツを取り纏めてコンテンツ化している企業もありました。学生に迎合するわけではなく、学生が知りたいことと企業が伝えたいことを適切なタイミングで届けることで、応募者とのコミュニケーションを深め、次のアクションにつながっていくと考えられます。

 

また、社風を伝えるという意味では、各部署の先輩社員や役員の協力を仰ぎ、トークセッションのやり取りを通じて会社の雰囲気を伝える、社員訪問を複数回設けるなど、オンラインにおいてもさまざまな社員との接点を持ってもらうことが重要です。他にも、リアルイベントの使いどきに焦点を当て、それに応じた接点づくりを設計するなど、自社が持ちうる要素を掛け合わせながら魅力付けを強化し、自社“らしい”採用を体現していくことが求められていると言えそうです。

Profile

中久保 佑樹Yuki Nakakubo

株式会社ヒューマネージ HR AGE 編集長

大手人材支援会社にて採用支援事業に携わった後、2012年ヒューマネージ入社。大手企業を中心とした制作ディレクターを経て、現在は制作とマーケティングチームを統合した事業戦略グループの責任者および人事・採用ご担当者様へ向けた情報プラットフォーム「HR AGE」編集長を務める。


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