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Marketing Magazine

選考スケジュールの戦略的検討――2024応募受付開始/初回面接実施時期のデータより

Published on 2022/12/26

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年の瀬が近づき、選考モードが強まる2024シーズン。今回は本選考の本エントリー受付開始時期、初回面接実施時期のデータから、選考スケジュールの検討について考えていきます。

 

本エントリー受付開始時期、昨年から前倒しの企業は微増

 

本エントリー受付開始時期|文系職種

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本エントリー受付開始時期|理系職種

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[集計対象]
i-webをご利用いただいている企業のうち、24・23シーズンの本エントリー受付開始時期が決定している企業様(予定含む)

[算出方法]
文理職種別に24・23シーズンの本エントリー受付開始時期を集計して、時期別の割合をそれぞれ算出

 

まず、企業の本エントリー(企業にプレエントリーした学生が、本選考に応募すること)受付開始時期をみると、3月上旬時点で文系職種が26.7%(昨シーズン比▲4.6pt)、理系職種が19.1%(昨シーズン比▲7.4pt)となりました。全体的にはスケジュールを前倒ししている企業が微増しており、年内~1月にかけて本エントリーの受付を開始する企業が多いことが窺えます。また、一方で「昨シーズンの内定辞退増加により、スケジュールを後ろ倒しした」という声も一定数あり、企業は応募者の惹きつけと同時に現在のスケジュールが最適かどうかを検討し、場合によっては調整していくことが求められていきそうです。

 

本エントリーの受付開始は学生にとっても本格的な就職活動のスタートであり、企業はその後いかに離脱を出さず、志望度を高めていくかがポイントになります。インターンシップで接点を持った学生が定期的にマイページに訪れたくなるしくみをつくるなど、本エントリー前からできる施策を実践していくことが必要と言えます。

 

初回面接実施時期、早期の実施は増加傾向

 

初回面接実施時期|文系職種

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初回面接実施時期|理系職種

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[集計対象]
i-webをご利用いただいている企業のうち、24・23シーズンの初回面接実施時期が決定している企業様(予定含む)
[算出方法]
文理職種別に24・23シーズンの初回面接実施時期を集計して、時期別の割合をそれぞれ算出

 

 

企業がいつから面接をスタートさせたかを調査した初回面接実施時期についても同様に、2月下旬時点の累計で、文系職種が54.9%(昨シーズン比+7.5pt)、理系職種が56.4%(昨シーズン比+9.6pt)となりました。こちらも昨シーズンと比較して早期の実施が増加していますが、特に文系においては各社それぞれのスケジュールで面接を実施していることが窺えます。「長期的な志望度向上を見据え、選考中に接点を増やし、面接開始を前倒しした」「初回の実施時期は昨シーズンより早まったが、ある程度の期間にわたって面接を実施している」などの声が聞かれ、企業ごとの戦略にあわせたスケジュール策定がカギになっていると言えそうです。

 

 

自社の戦略にあったスケジュールや手法の最適化を

 

今回のデータからは、年内~1月にかけて本エントリーの受付を開始する予定の企業が多いこと、初回面接実施時期は昨シーズンと比較して早期の実施が増加していることがみてとれました。昨年と比べると全体として早期の実施がやや増加しているものの、ここ2~3年でみられた選考スケジュールの早期化の加速は落ち着きをみせているとも捉えられます。他方、企業の声を聞いてみると、早期の選考や施策の進め方等、自社に最適なスケジュールを探っている様子も窺えました。

 

スケジュールや手法を検討するためには、定期的な振り返りやデータ分析をもとに、根拠のある戦略策定が不可欠です。今回取り上げた各種フェーズは、採用PDCAを回す上で振り返りのポイントとなるタイミングですが、都度自社のデータを振り返り、ターゲット層やマーケットの動きを鑑みたスケジュールや手法を最適化することが重要と言えそうです。

 

例えば、昨シーズン応募者の選考離脱が課題だったある企業では、今シーズンは例年よりも前倒して選考をスタートさせ、内定出しまでをスピーディーに行うことにしたと言います。内定期間が長くなる分、選考中から学生一人ひとりにメンターをつけて就職活動を並走する、内定後から入社までに社員や内定者同士の交流の機会を多く設定するなど、関係育成のための施策に力を入れているとのこと。スケジュールの改善を図りながら、入社までの関係づくりを重視している事例です。

 

一方、昨シーズンの内定辞退者増加を受け、選考スケジュールを後ろ倒ししたという企業の事例も聞かれます。ある企業では、多数企業から内定を獲得するような、いわゆる「優秀な人」よりも「自社にマッチする人」を精緻に採用することを目標に定め、改めて自社で活躍できる人の要素を分析したと言います。選考前の惹きつけを行った上で、適性検査やコンピテンシー面接などを活用して人材を見極めることに注力し、スケジュールをやや後ろ倒しするという判断に至ったとのことでした。

 

自社のマンパワーや状況を鑑み無理のない選考スケジュールを立てることが前提ではありますが、他社の動向を参考にしつつ、定期的に自社の採用を振り返り、適宜PDCAを回していくことが必要と言えそうです。

 

各社本選考に向けて走り出す2024シーズン。全体の動向を参考に、自社にあった戦略づくりにお役立ていただければ幸甚です。

 

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ヒューマネージでは、毎月の採用動向をまとめた『Monthly HR AGE』を発行しています。2022年12月号は、2024シーズンのデータ分析や、テキストマイニング分析でみる特集「応募者接点の現在2023 ――“らしさ”を体現する施策の具現化」、企業インタビューなど、より詳しいマーケット情報やお役立ち情報をお届けしています。レポートの詳細、ダウンロードは以下よりお願い申しあげます。

 

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出典:『Monthly HR AGE 2022年12月号』

Profile

永野 史彰Fumiaki Nagano

株式会社ヒューマネージ コンサルタント

慶応義塾大学卒業後、保証会社で勤務したのち、桜美林大学大学院心理学研究科で臨床心理学を専攻。2019年にヒューマネージに入社し、企業の採用活動や適性アセスメント、タレントマネジメントにおける統計分析業務やサービス開発に携わる。臨床心理士・公認心理師(国家資格)・産業カウンセラーの資格を保有。


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