2023シーズンのプレエントリー推移からは、さらなる早期化が窺える結果となりました。現行の3月採用広報開始、6月選考開始の採用スケジュールになったのが2017シーズン。3月1日午前0時になった瞬間に大手就職情報サイト（ナビ媒体）や各社の本選考マイページがオープンし、学生は一斉にプレエントリーを行うのが当たり前の時代から、インターンシップの一般化や新たな採用手法の登場を受け、企業の採用活動、そして学生の就職活動も、その在り方を変えています。ここでは、続く早期化がどのような変遷を辿っていまに至るのかを数字で振り返りながら、その背景を探っていきます。

プレエントリー時期の内訳の推移

[集計対象]
i-webを17シーズンから23シーズンまで継続利用いただいている企業様
[算出方法]
シーズンごとに、対象企業各社の3月10日時点のプレエントリー数を「100」として、2月末までのプレエントリー数、3月1日～10日のプレエントリー数の割合を算出。

上記グラフは、各シーズンの3月10日時点のプレエントリー数を「100」としたときのプレエントリー時期（「2月以前」または「3月1日～10日」）の内訳を表したものです。年々、2月以前の割合が継続して増えていることがわかりますが、とりわけ、2020シーズンから2021シーズンにかけての+16.2pt、2021シーズンから2022シーズンにかけての+11.0ptの伸びが目立ちます。この大きな理由として考えられるのが、「経団連の指針の廃止」と「コロナ禍の影響」です。

経団連が策定していた「採用選考に関する企業の倫理憲章」、いわゆる“就活ルール”は2016シーズンから「採用選考に関する指針」に名称を変更し、その後2020シーズンをもってその形骸化により廃止となりました。この影響で、すでに広がりをみせていたインターンシップにより注力し、早期の接点を図る企業が増加したこと、さらにはインターンシップ期から本選考期まで同じ採用管理システムを続けて使うのが一般的になったことから、2021シーズンの2月以前のエントリーが昨シーズンと比較して大幅に伸びたと考えられます。また、2022シーズンのインターンシップは、初めてのコロナ禍での開催となりました（2020年6月）。この頃の大手就職情報サイトは、6月1日にインターンシップエントリーの受付を開始していたものの、企業によっては4月～5月から情報を開示しているという動きをみせていました。コロナ禍による社会情勢、またそれによる採用活動への影響を懸念して、（インターンシップ開催の可否や参加・不参加にかかわらず）早期から動き出した学生が増加していたことが推察できます。

その他にもさまざまな要因が複雑に絡み合っていることが推察されますが、いずれにしろ、3月1日を起点とする「スタートダッシュ傾向」は時間をかけてその山が徐々に前倒しとなり、現在の採用スケジュールに至っていることが窺えました。そのような中、企業は自社のタイミングで採用活動をスタートさせるにあたり、各種接点や選考中・内定後のフォローといったそれぞれのフェーズを「線」で捉え、継続的なアプロ―チを設計することが求められています。今後の早期化の流れは、ある一定を迎えた時点でゆるやかになる、という見方もありますが、マーケットがどのような流れをみせたとしても、その時々の学生の状況に合わせてできることをいかに実現していくか？　が今後の採用成否を左右していくのだと思われます。

ヒューマネージでは、毎月の採用動向をまとめた『Monthly HR AGE』を発行しています。2022年4月号は、2023シーズン学生の動き、特集『「未来視点」の内定者フォロー』など、より詳しいマーケット情報やお役立ち情報をお届けしています。レポートの詳細、ダウンロードは以下よりお願い申しあげます。

出典：『Monthly HR AGE 2022年4月号』