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夏季インターンシップが本選考応募・最終選考合格に与える影響――2025シーズン応募者分析より

RECRUITMENT

Published on 2024/08/29

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2026シーズンは、産学協議会の報告書がインターンシップについて定義を示してから2シーズン目を迎えています。まさにこれから始まる夏季インターンシップをどのように実施するか、検討中の採用ご担当者様も多いのではないでしょうか。そこで今回は「インターンシップの参加が、本選考への応募と最終選考の合格にどの程度影響するのか」についての調査をもとに、インターンシップ後の効果的なフォローについて考察していきます。

 

夏季インターンシップに合格(選考あり)/不合格(選考あり)/参加(選考なし)/未応募だった学生が、それぞれ本選考に応募・最終選考に合格した割合(2025シーズン)

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[集計対象・算出方法]
i-webをご利用いただいている企業のうち、25シーズン夏季インターンシップ(2023年6月~9月)を実施した企業様を対象とし、6月下旬時点での合格者(選考あり)/不合格者(選考あり)/参加者(選考なし)/未応募者のそれぞれが、本選考に応募した割合と最終選考に合格した割合を集計し、その平均を算出

 

上の表は、2025シーズンにおいて夏季インターンシップに合格(選考あり)/不合格(選考あり)/参加(選考なし)/未応募だった学生が、本選考に応募した割合、および最終選考に合格した割合を表したものです。

 

まず読み取れるのは、「選考ありインターンシップの合格者は、本選考応募率(47.0%)、最終選考合格率(15.4%)ともに最も高い」ということです。それと比較すると、選考ありインターンシップの不合格者および未応募者は、本選考応募、最終選考合格ともにかなり低い割合であることが窺えます。

 

ただし、この数値はあくまで調査企業の平均値です。例えば選考フローの中でインターンシップを重視している企業の中には「内定者の8割が参加者」というケースもありますし、逆に「内定にほとんど影響しなかった」という声も聞かれます。今後インターンシップを検討するにあたっては、上記の数値が自社にとって高いか低いか、労力・コストに見合っているかを判断し、自社に最適な方法を取捨選択する必要があると言えます。そのために、まずは振り返りの中で自社の数値を算出してみることがおすすめです。

 

このデータをもう少し深く紐解いてみると、さらに2点、読み取れることがありあります。ひとつめは、「選考ありインターンシップの合格者」と「選考なしインターンシップの参加者」の比較です。本選考に応募した割合はいずれも4割超と高い数値が出ている一方、最終選考合格率は15.4%と、「選考ありインターンシップの合格者」のほうが高くなっています(「選考なしインターンシップの参加者」が9.8%)。

 

考えられるのは、「選考なしインターンシップの参加者」は業界研究などを目的に参加した学生も多く、その層の企業・仕事理解や志望度を高められていないのではないか、という仮説です。もちろんまだ選考を行っておらず、企業側が求める学生であるかどうかをその後見極めるから、という側面もあります。しかし同時に、最終選考までつなげていくために、インターンシップ後のコミュニケーションを通じて自社へのロイヤリティを高めることは、不可欠であると言えるでしょう。例えば、他社との差別化を打ち出すために、自社の強みや独自の事業にフォーカスしたマイページコンテンツを発信したり、Webセミナーや動画など、視聴しやすいかたちで後続イベントを実施するなどの施策が有効と考えられます。

 

もうひとつ注目したいのが、「選考ありインターンシップの不合格者」と「未応募者」における、本選考応募率の比較です。両者の差はあまりなく、インターンシップに応募してくれた人を、その後の選考につなぎ留められていないことが窺えます。この離脱を防ぐためには、キャパシティの問題で参加してもらえなかった応募者には、フォローのメッセージや別イベントへの案内を行うなど、個別のコミュニケーションが必要と言えるでしょう。不合格者・未応募者のいずれにも、その後の業界研究や他社のインターンシップ後に、業界に興味を持ったり、その業界が第一志望になったりする可能性も十分あり、有効母集団形成に向けて、この層へのフォローは欠かせません。自社に意識が向いた際に「乗り遅れてしまった」と思わせないよう、マイページへのログインを促すなどして接点を維持すること、いつ見ても興味喚起につながるコンテンツを常に用意しておくことなどが重要です。対象者によって志望度や理解度、選考につながる可能性に違いがあることを理解しつつ、適切なフォローを考えるのが良いでしょう。

 

対象者別 フォロー施策

選考ありインターンシップの合格者
引き続き高めていく・つなぎ止めていくコミュニケーションを
例)業務や社内の雰囲気が伝わる定期的な情報発信(ブログ、採用オウンドメディアなど)

 

■対象者別 フォロー施策
「この企業にはもうチャンスがない」と思わせず、別の接点機会でつなぎとめる
例)「今回は限られた人数しか参加できなかったため、ぜひ次のこのイベントに参加してほしい」というメール・メッセージ

 

■選考なしインターンシップの参加者
自社への興味を高めていくために、より自社に惹きつけたコンテンツ、イベントへの誘導
例)選考ありの秋季・冬季イベントへの案内

 

■未応募者
接点機会の創出と、今後自社に興味を持ってくれた際の受け皿を用意
例)マイページログインを促すSMS配信、マイページ内はじめまして(まずはここをみて)ページの設置

 

※本記事では、昨シーズンと比較する分析の都合などから、タイプ3(汎用的能力・専門活用型インターンシップ)、タイプ4(高度専門型インターンシップ)だけでなく、産学協議会が示すタイプ1(オープン・カンパニー)、タイプ2(キャリア教育)等を含め「インターンシップ」と表記します。

参考:産学協働による自律的なキャリア形成の推進【概要】

 

◆◆◆

 

インターンシップは、今や採用活動における重要な位置を占めており、今後もその流れは続くでしょう。しかし、実施するだけでその後の適切なフォローをしなければ、十分な効果は期待できません。ベストなインターンシップを考える上で、今回の考察と提案が少しでもご参考になれば幸いです。

 

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ヒューマネージでは、毎月の採用動向をまとめた『Monthly HR AGE』を発行しています。2024年8月号は、2025シーズン本選考/2026シーズンインターンシップ動向、特集『手軽に実践!「軽やかに」行う採用振り返り分析』、企業インタビューなどより詳しいマーケット情報やお役立ち情報をお届けしています。レポートの詳細、ダウンロードは以下よりお願い申しあげます。

 

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出典:『Monthly HR AGE 2024年8月号』

Profile

池尻 亮介Ryosuke Ikejiri

株式会社ヒューマネージ コンサルタント

信州大学卒業後、東京学芸大学大学院にで心理学を専攻。その後、政府機関における学力調査等の分析に従事。ヒューマネージ入社後は、採用活動に関する企業動向を中心としたデータ分析・統計の業務を主担当とし、企業の支援を行っている。


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